ASSOCIATION OF SOPHIAN TEACHERS OF ENGLISH

 上 智 大 学 英 語 教 員 研 究 会
NEWSLETTER

第38号        1998年3月31日


目次

1) 会長挨拶  石川和弘
2) スピーキングをどう評価するのか - SSTの可能性を探る 相馬晶夫
3) テストを利用して中学生の「英語学習」を変容させる試み 関典明
4)「テストを利用して中学生の『英語教育』を変容させる試み」を聞いて
   
白井 彩
  
高木 彰子
5) シンポジウム:中高の英語教育はどのように変わる
 --今年のテーマ「試験が変わる・授業が変わるを振り返って」に参加して--
   鳥居秀敏
   木下宣子
6) お知らせ
7)1998年度ASTE 前期予定

顔が見える Written Communication

会長挨拶             石川和弘(清泉女学院中学高等学校)

 英語教育の中で「コミュニケーション」という捉え方がかなり定着してきたこの頃のように感じます。ASTE では以前から英語教育における「コミュニケーション」概念を意識しており、オーラル・コミュニケーションが導入された時も、「オーラル」ということが注目を浴びることになった背景にある「身近な意思伝達」の手段としての英語を教育するということが常に念頭にあったと感じております。「Oral」という部分が強調されたことを喜ばしいと思いながらも、「Oral」であれば communicative であるとは限らず「Written」であってもcommunicative なものもあると捉えていたわけです。
 そこで1998年度は英語の書き言葉としての側面に注目し、その中で communicative な要素がどのように扱えるかを考えてみることにいたしました。今までも 英作文やParagraph Writing を扱いましたが、今年度はそれをさらにすすめ、伝えたい相手をはっきりと意識した、書き言葉としての英語を授業でどのように扱ったらよいかを考えていきます。インターネットも普及してきており、e-mail や 世界の誰からもアクセス可能なホームページの作成など、本当に「伝えよう」という意志を持って英語を扱う機会が増えてくると思われる情勢の中、このテーマは時宜にかなったものではないかと思っています。ご興味をお持ちの方,ぜひ我々の活動にご参加ください。


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スピーキングをどう評価するのか - SSTの可能性を探る

ASTE第90回例会  1997年10月25日  相馬晶夫 (神奈川県立市ケ尾高校教諭、                                   SST公認インタビュアー・レイター)

はじめに
 スピーキング能力の評価に、インタビューはよく用いられます。しかし、多人数をこなすのは物理的に困難であったり、評価の基準がまちまちであったりと、問題点は多くあります。ACTFL-ALC が開発した SSTはこれらの問題の解決に多くのヒントを与えてくれます。

1. SSTとは
 日本人の英語学習者のスピーキング能力を9段階で評価します。ACTFL (American
Council on the Teaching of Foreign Languages)が実施するOPI (Oral Proficiency Interview) を原型にして、ACTFLとALC が共同開発しました。主な特色としては次のようなことがあげられます。
  ◎能率的なテストである(15分間)。
  ◎評価基準が明確であり、多面的である。
  ◎受験者に対して十分なフィードバックを与える。
  ◎インタビュアーは、英語のネイティブスピーカーである必要はない。

2.OPIとSST
 OPIのスケールはSuperiorから Novice Low までの9段階。SSTはこのうち OPI の Advanced以上を LEVEL9 とし、Intermediate High 以下を8段階に分ける(LEVEL9からLEVEL1まで)。特に日本人英語学習者のレベルを詳しく測るため、初級・中級レベルを細かく判定します。

3.SSTの試験内容
 1対1のインタビューです。次のようなステージに沿って進められます。

ステージ1: ウォームアップです。簡単な質問を通して緊張をほぐします。
ステージ2: イラストを見てその内容を英語で表現します。
ステージ3: ロールプレイです。試験官が渡すカードに書かれている役割を演じます。
ステージ4: 6コマの絵、または1枚のイラストを見て、指示に従って話します。
ステージ5: 最後に緊張をほぐすための易しい質問に答えて終わります

ステージ2,3,4では関連した質問(Follow-up Questions)にも答えます。試験官はインタビューをしながら、受験者のレベルに応じた質問をしていきます。時間は以上のステージをすべて含めて15分以内です。インタビューはテープに録音され、後で複数のレイターが定められた基準に従って判定します。

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 当日の例会会場では実際のSSTのデモンストレーションが行われました。試験官はSST公認インタビュアー・レイターの澤木泰代さん(昭和女子大学助手)、受験者は高校2年生の女子の生徒さんです。このように、公開の場でSSTが行われるのは例外的なことです。
 なお、澤木さんはアルク発行の雑誌ACTIVE ENGLISH誌上で連載「SST方式でレベルを診断−もっと! スピーキング クリニック」を担当されていました。
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5.SSTの特徴
1)SST is a descriptive test.
受験者が英語を用いて何が出来るのかを測定する。
2)SST is proficiency test.
achievement testではない
3)SST is a criterion-reference test.
定められた基準に従って評価する。他の受験者との比較はしない。
4)SST is an efficient test.
15分間で受験者のスピーキング能力を測定する

6.SSTでは何を測定しているのか
1)Global Tasks/Functions
  どのように英語を使えるか。説明は出来るか、比較は出来るかなど。
2)Contexts/Contents
どの範囲のことについて話が出来るのか。身の回りのことを話せるか、もっと広い範囲まで話せるかなど。
3)Text Type
  どういう英語を使えるのか。フレーズだけで話しているのか、センテンス中心で話せるのかなど。
4)Accuracy
  正確さや流暢さはどうかなど。

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 当日の例会会場では、先程行われたSSTのデモンストレーションの録音を使って、SSTの視点からステージを追ってインタビューを見直してみました。
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7.良いインタビューとは
 受験者がどのレベルにいるかをレイターが判定し易いようなインタビューが良いインタビューです。そのためには、
 1)受験者がある程度なら到達しうる最高のレベル(Ceiling)と常に支障なく維持できる最高のレベル (Floor) を明確に出来る質問をする。
 2)同じレベルや同じタイプの質問を繰り返さない。
 3)インタビュアーがしゃべり過ぎないようにする。
  そしてなによりも、
 4)受験者が力を出せるような雰囲気作りをする。
  など、受験者のことを考えたインタビューをする事が要求されます。

8.インタビュアー、レイターになるには
 ワークショップに参加し、認定審査を受けなければなりません。
 インタビュアー・ワークショップは 4日又は5日間、レイターワークショップは2日間です。なお、インタビアーとして認定されないとレイターにはなれません。
 ワークショップでは講義の後、実際のインタビューを録音し、そのテープを使って指導が行われます。
 インタビュアーの認定では、ワークショップ終了後一定の期間内にインタビューを行い、そのテープを提出します。
 レイターの認定では一定時間内に決められた本数のインタビューを聞いて評価します。
 どちらの認定も要求水準が高く、厳しいものです。
 また、インタビュアーはOPIでIntermediate High 以上の評価を受ける必要があります。OPIは上記のワークショップの期間中に受けることもできます。アルクでは、TOEIC 850点以上、TOEFL 580点以上、英検準1級以上という目安を出しています。

9.高校での応用について
 SSTに盛り込まれたいろいろな要素は、高校の英語教育に多くの示唆を与えてくれます。
 特に、どのような基準で評価をすればよいのか、どのようなフィードバックを生徒に与えればよいのかなど、多くの具体的なヒントを提供してくれます。
 また、今後の課題としては、SSTのレベル2からレベル4ぐらいをさらに細かく分けたインタビューテストの開発が望まれます。

おわりに
 SSTはまだ始まったばかりのテストですが、理論的背景、評価の構造がしっかりしており、将来性があると思います。特に、英語学習者の学習方法がその人の英語のパフォーマンスにどのようにあらわれるのかを、かいま見ることが出来る点から、中学・高校のレベルで何をどのようにやっていけばよいのかについて、具体的な情報を与えてくれます。
 また、SSTのインタビュアー・レイターのワークショップは教員の研修としても優れた内容です。ぜひ、挑戦されることをお薦めします。
なお、今回の例会に用いた資料の多くは、(株)アルク教育システム開発室より提供していただきました。ありがとうございました。

For further information:
 アルク地球人ムック「英語教育事典−オーラルコミュニケーションの 成果を問う」 1996年発行

 お問い合わせ、資料の請求は下記まで。
  (株)アルク 教育システム開発室
     TEL: 03-3323-3901
HOME PAGE: http://www.alc.co.jp/edusys/testhome.htm
E-MAIL: testsec@alc.co.jp

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テストを利用して中学生の「英語学習」を変容させる
試み

ASTE 第91回例会   1997年11月8日   関典明(成城学園中学校)

はじめに
 今回の例会の発表は、以下3つの内容から成るものでした。
1)新しい型・教材による授業計画立案からそれを実践していく過程で生じることが予測される事態とその対応策について参会者と共に考え合うワークショップ。
2)発表者の勤務校での中学2年生のプラス・ワン(リスニング力養成を目的とする)の授業の実践報告。
3)発表者の授業の教材、音声テープの紹介。

ワークショップ 
 発表者の勤務校での経験を基にして新年度からの授業の推移を図1に示しました。私立、公立;中学、高校などにより若干の相違はあるもののおよその典型として共通認識を得ることができました。石川先生(清泉女学院)からこの図の「中間テストの点数が悪かった生徒が多くでた。」の後に「授業が全く静かになる。」現象もありうるとの指摘がありました。
 図1の@〜Dは、それぞれ発生する事態に対し教授者としてとるべき方策を考えてもらうものでした。例会で参加者からだされたものと発表者が準備していたものを合わせてまとめました。

@新年度を迎える直前の時期
1)授業、教材、および評価(担当者ごとの独自のテストなのか、学年統一テストなのか等)について科内の同意、賛意を得ておく。
2)当該学年の前年度の担当者からこれまでの指導、生徒の状況、成績などについて情報を得ておく。
3)教材購入の予算措置を取っておく。

A4月から1、2回授業を行ってみる時期
1)授業の目標、内容、進め方などを記したプリントを配布、説明する。
2)授業を進めながら途中で止めて、そのねらいなどを解説、納得させる。

B授業内容の消化不良等が生じ、不満、苦情等が発生する時期
1)授業の進め方、内容についての疑問点等について話し合う機会を設けたり、アンケート調査を実施する。
2)保護者の授業参観の機会を設け、丁寧な資料を用意し、授業方針等について保護者の理解、支持が得られるにする。(場合によっては、@の段階で授業参観も計画に入れておく。)
3)科内の同僚、先輩に授業参観をしてもらい指導助言を受ける。
4)中間テスト前には、その出題範囲、内容、例題などをプリントして配布し、学習すべき事柄を周知徹底させるようにする。
5)小テストを頻繁に実施し、中間テストに備える。特に出題形式に不慣れなせいで成果が上がらないことが無いように特に留意する。

C中間テストの結果が出てそれに落胆する生徒が出る時期
1)悪かった結果を「能力不足」ではなく、本人の「学習不足、努力不足」に起因する方向にガイドし手当を行う。
2)再度、授業の各過程でのねらい等を簡単に解説する授業を行う。
3)テストの中で特に結果が悪かった問題を取り上げ、やり直しをさせたり、類題に取り組ませ自信を付けさせる。

Dそれまでの授業運営などがうまく行かず、不評、苦情が大きくなってしまう時期
1)本来あって欲しくない事態である。これ以前に適切な対応が取れなかった点については反省し、Bの中から今からできる最善の方策を見つけ、期末テストに備えるのがよい。


                図1:授業とその周辺の現象

   


実践報告
 発表者より、以下3点の資料(省略)が例会では配布され、それに基づき説明、提案がなされた。
 [1]4月の第1時間目に配布した生徒対象の授業の目的、内容、約束事などについてお説明プリント。
 [2]公立高校の入試問題のうち、「新学力観」(コミュニケーション能力を問う)を反映した出題例と解説。
 [3]保護者の授業参観時に配布した資料(当日の指導案、教材を含む)。

発表者が授業実践で第一に利用しているテストとは、英語検定のリスニング問題です。それは、標準化されており、各自がレベルを確認する際に大変便利だからです。しかし、授業自体がその検定試験合格を目的とするものではないことを生徒には宣言し、あくまで各学期ごとの到達目標であることを狭長しています。
 実際には、各学期の最初の授業で目標の級のリスニングテストを授業内で全員受けさせて、その結果を知らせ、中間、期末テストではその級のリスニングテスト問題を含んで出題し、各自の進歩状況を点検、把握させています。また、そのようなテスト内容になることは事前に連絡済みです。
 授業実践で次に利用しているテストとは、課題の中にあるテスト的要素です。リスニングの力を養成するには、授業時間だけでは時間不足は明らかです。そこでNHKラジオの
『基礎英語2』を毎月聞くことを義務付けて、さらにその取り組みを報告するように用紙を作成し、毎月月末に提出させて「学習状況調査」として点検を行っています。
 また、放送内容の一部は、授業で必ず取り上げ、T/F、QAなどのテスト要素を加えて、ラジオでの継続学習を支援するようにしてきました。また、その放送内容は、中間、期末テストで出題することも年度初めに予告してあります。
 教材は、50分授業内で提示から処理までの全てを完了できる分量です。それは、1週間に1回だけの授業だからです。教材の前半は『基礎英語2』、後半は『基礎英語2』のトピックに関連がある課題を他のリスニング教材、テープから利用する場合が多いです。今年度は、J.C. Richards "Basic Tactics for Listening" 1996 (OUP) をよく利用しています。
 これまで、重点的に指導してきたのは、次のような事です。
[1]わずかな手がかりや文脈の流れ、持ち前の知識などから文章全体の主旨を推理し、到達する聞き取りの方法。
[2]一つの単語から一つの文を、一つの文から全体の文を理解する積み上げ方式の聞き取りの方法。
[3]その他:要点を聞き取る。細かく聞き取る。文脈から意味を類推する。特定の情報を聞き取る。話し手の気分を判断する。発言が肯定か否定かなどを判断する。
 授業の進め方としては、単なる「リスニングテスト」とならないように一番留意しています。換言すれば、テープを聞かせた後で生徒の解答をチェックし正答を提示するだけの授業にはしないということです。それでは、教師は単にテープレコーダーの操作係にすぎず、教室にいる意味がないと思うのです。テスト、もしくはテスト的要素がある課題を効果的に教室内で活用するのは教師次第だと思います。
 例えば、その選択肢を選んだ理由、解答をチェックしたあと正しい答えが確認できるようにもう1回(必要なら2回)テープを聞く機会を作る。また、課題に取り組むにあたりどのような予測をしたか等、役に立ったリスニングのストラテジーについて生徒に発表させたりしています。提示した課題の中で生徒が間違ったり、わからなくなったりした時にどのようなヒントを与え指導していうくかで教師の指導の真価が問われると思うのです。
 従って、ある程度生徒が間違ったり、わからなくなったりすることがあるレベルの教材の利用も必要だと考える訳ですが、一般には、「難しい事をやっている。」と誤解も受けやすいので注意が必要です。そこで、保護者の授業参観の時には、授業の背景を丁寧に説明するとともに、その授業終了2〜3分前を利用して配布した課題の裏面にその授業、課題等について自由記述で感想等を書かせています。それらに対しては、全て目を通し必ず一言以上返事を書き、次時に返却しています。授業で扱っている教材のレベルが決して易しくはないと思っているので、誤りが多く落胆している場合などできるだけ丁寧に励ましの言葉を書くように心がけています。一方、安易に教材のれべるを落とすことをしないようにしています。

むずび
 生徒から授業、教材について批判を書かれることも時々あります。しかし、それがあったからといって授業の刊本を変更することはしないし、またそれで変更するようでは教師としての信念がないと別の生徒からは逆に非難されるはずです。大切なのは、そうした批判にも耳を傾ける姿勢、相互に信頼感があることと、授業、教材についての点検、反省を怠らず、常に改善への意欲を教師自身が持ち続けることだ思います。

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「テストを利用して中学生の『英語教育』を変容させる試み」を聞いて

白井 彩
 (上智大学外国語学部英語学科1年)

 今回の「テストを利用して中学生の『英語教育』を変容させる試み」というテーマに関するワークショップ及び関先生の授業実践報告は、現在学生として授業を受けているという立場においても、また将来、英語科の教員を目指しているという立場においても、私にとって大変有意義なものであった。特に関先生の授業実践報告を聞いて、私は関先生のよりよい授業をしようという深い情熱と不断の努力に畏敬の念を覚えた。
 先生のお話の中で最も印象に残ったのは、コミュニケーションの大切さである。これには、生徒とのコミュニケーションだけでなく、保護者とのコミュニケーション、さらには教員同士のコミュニケーションも含まれている。関先生はこの3者とも、実に緻密なコミュニケーションをとろうと努力されている。例えば、生徒に対しては、授業の目標や内容、進め方、授業中のルール等をはっきりわからせるために、それらをプリントに記して、初回の授業で配っている。また、生徒の意見を出来るだけ吸収するために、毎回授業の最後に自由に感想を書かせている。関先生はそのフィードバックの一つ一つに目を通し、コメントを書いているのだ。生徒の声に熱心に耳を傾けようとする関先生の姿勢には本当に頭の下がる思いがする。関先生のさらに素晴らしいところは、保護者に対しても信頼感を築こうと努力されている点である。授業参観を保護者に授業のねらいを理解してもらう機会として大いに利用しているのだ。
 生徒や保護者から授業について不満がでるということは頻繁に起こることで、私も何度か経験がある。生徒も保護者も教師も感情的になってしまい、解決するどころか、かえって混乱を極めたこともあった。関先生の話を聞いてから、なぜそのような状況になってしまうのかを考えてみると、教師が生徒や保護者の批判に対して冷静に耳を傾けようとしないからではないかと思う。改善できるところがあればすればいいし、変えられないのであれば、生徒や保護者にそれをわかりやすく説明すればよいのだ。それをせずに生徒や保護者からの批判を一方的に無視し、コミュニケーションを断絶してしまうことは、無駄な誤解を生み、問題の解決を妨げてしまうのではなかろうか。
 関先生のようによりよい授業をしよう、生徒や保護者との信頼関係を築こうと努力し続ければ、生徒や保護者から不満が出ることも少なくなるだろうし、出たとしても、その批判に対してきちんと耳を傾ける姿勢を持っていれば、混乱につながることはまずないし、かえって授業の向上につながると思う。私は関先生に教師が常に努力し続けることの大切さを教えていただいた。私も関先生のような教師になれるよう努力していきたいと思う。 


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高木 彰子
(上智大学外国語学部英語学科一年)

 関先生の「英語学習を変容させる試み」という講演を伺って、関先生は単に既成のカリキュラムをこなし、生徒に学習事項を教え込む、いわゆる「教師」ではなく、「魅力的な授業の運営者」でいらっしゃると感じた。 私がここで「運営者」という単語を用いたのは、先生が、文字通り、ご自 身が工夫を凝らして作り上げた教材を利用して、生徒の興味を引き、自主 的、自発的な学習を促すような授業を実践していらっしゃったからだ。今 回の講演は、昨年まで高校で授業を受けていた生徒として、また教壇に立 つことを将来の選択肢の一つに考えている学生として、自分の中の教師像 を変える有意義な機会であったと思う。
今回の講演の中で、私は特に、先生が生徒とだけではなく、保護者の方々とまでも信頼関係を築き上げようと不断の努力をしていらっしゃることを、大変新鮮に感じた。多くの先生方は、生徒にまじめに授業に取り組 ませようとするために、十人十色の努力をしていらっしゃると思う。例え ば、恐い教師を演じる、授業に遊びの要素を取り入れる、宿題を数多く出すなどである。関先生は、生徒や保護者の方々と密な連絡を取り合うこと でそれを達成していらっしゃるのだと思った。つまり、生徒の授業の内容とその目的を説明し、納得させることで、生徒の興味を引き付け、そこからやる気を引き出していらっしゃるのだ。また、親の支持を取り付けるということは、親の側から勉強する姿勢を持つことを促してもらえるという 効果を作り出すだろう。授業を円滑に行うという意味においても、授業の効果を最大限のに引き出すという意味においても、先生の工夫と熱意と話 術は不可欠であると思った。先生の講演を通して、「生徒が興味を持って 授業に望める状態」をどのように作り出すかということが、教師に求めら れる大きな課題の一つであると強く感じた。
  講演を通して、私が興味を持ったもう一つのことが、「基礎英語」を用いた授業である。一週間出来るだけ基礎英語を聞くことを生徒に求め、その延長に授業を行うということは、生徒に持続性のある学習を提供することになると思う。英語学習に最も求められることに持続性が挙げられると思うが、生徒にそれを促すことは大変難しいことだろう。関先生はそれを、基礎英語を利用した授業を行うこと、そして、前述のように保護者からの 協力を仰ぐことで可能にしているのである。英語の好きな生徒は積極的に 聞くであろうし、苦手に思ってる生徒も、会話的な英語に少しずつでも触 れることによって、英語に親しみを持つようになるかもしれない。その意 味で、先生の授業は、英語を学ばせるための授業ではなく、生徒が英語を好きになるきっかけを与える場であると言えると思う。
今回の講演は、私にとって、授業を運営している側、つまり教師の側の工夫や努力を知る初めての機会であった。今までは、生徒の立場から先生方のことを遠慮なしに批判していたが、魅力的な授業を行うことが、いかに時間と工夫を要することか、ということに初めて気が付いた。そして、 特に中学、高校を通して、私に、授業が楽しい、その授業があるから学校を休まないようにしようと感じさせてくれた先生方に畏敬の念を覚えた。 最後に、教師の立場からの意見を聞かせて下さることで、私の視野を広げて下さったASTEの先生方に心からの感謝の気持ちを表したいと思う。


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シンポジウム:中高の英語教育はどのように変わる

今年のテーマ「試験が変わる・授業が変わるを振り返って」に参加して

第92回 ASTE 例会  1998年1月24日

鳥居秀敏
(神奈川県立横須賀高等学校)

 私は教職に就いて10年になりますが、これまでも勉強に飽きたり、教えることに疲れたりしたときは、ぷらっと ASTE の例会に参加してきました(だいたい年1回のペース)。なぜならそこには英語教育に真剣に取り組んでいる仲間がいて、 その “ 気 ”に触れるだけでも、「よし、俺もやらなければ」という気持ちにさせられるからです。今回もパネルディスカッションで活発な議論が展開され、自分の中でも英語教育について考える機会を得ました。以下にパネリストの方々の発言の要旨と、私の考えたことをのべてみたいと思います。

渡部先生(国際基督教大学専任講師)
 日本の大学入学試験の波及効果に関する調査を行っている。調査の結果高校の通常の授業と、受験用の授業及び予備校の授業に於いてその教授方法、内容には大差が見られず、それよりも先生方の個人差が大きいことが判明した。このことから入学試験の内容を変えてもそれだけで教育のあらゆる側面が変わるわけではないとの予測が成り立つ。学校現場はとかく入試英語をネガティヴに捉えがちであるが、受験準備教育は実際に使える英語に結びつくというポジティヴな捉え方が必要なのではないか。入試英語のために本来の英語運用能力が身につかないというのではなく、入試問題の使用を工夫することで、多方面でのトレーニングが可能のはずである。又、大学側も採点方法を公開したり、入試で身に付けた生徒の英語力を入学後、使える英語に結びつけるような授業の工夫が求められる。(詳しくは Newsletter No.37 をご覧下さい。) 

柳瀬先生(都立九段高校教諭)
 実用英語検定試験がリニューアルされて1年が経過した。「よりコミュニカティヴなものへ」というメインテーマのもと、イラストに関する Q & A が2級、準2級などに加わり、受験者のアティテュードも評価に加えられた。個々の試験官による評価のばらつきや、試験官の能力の信頼性などに問題点は残るものの、Display と Referentialの観点からは Referential の要素が強まった分、実際のコミュニケーション能力を重く見たものにかわっている。
 試験には大きくわけて、一定の能力の域に達していることを認定していく資格試験と、大学入試等の他者との比較で選んでいく競争試験とがある。競争試験は他者との関係が優先し、たとえ実力があっても合格するとは限らない。一方、資格試験は合格基準が明確に示され、受験者も達成感を持ち易く取り組み易い。後者の1つである英検は、今回のリニューアルをきっかけに、学校現場における日常の授業の中でその方向性を示唆しているように思われる。

相馬先生(神奈川県立市ヶ尾高校教諭)
 (株)アルクが S.S.T.( ALC Standard Speaking Test )という、1対1のインタヴュー形式でスピーキング能力をはかるテストを開発した。これは例えば受験者にイラストに描かれていることを述べさせたり、理由の説明、フルセンテンスでの受け答えを要求し、また発音の正確さ、文法力なども細かく見ていくテストである。これはスピーキング能力をはかるうえでとても良く考えられたものである。しかし受験者層を広い範囲に設定してあるので、高校生が受験しても、彼らの評価は下の方へはりついてしまう。したがって基礎的な部分の評価を細分化した高校生版 S.S.T. の開発が望まれる。それができれば O.C. の授業の成果を測る有効な手段となり得るし、 O.C. の授業の目標ともなり得るであろう。

私個人の意見
 4年前のオーラル・コミュニケーションの高校への導入、今回の英検のリニューアルS.S.T. の開発など、「話せる英語力」の育成が最重要課題となってきた観があります。日本の置かれている立場を考えれば、その方向性は必然的なものと言えるでしょう。ただ公立高校の現場にいる私としては、この傾向に全面的に賛成できるわけではありません。最も疑問に思える点は、高校(少なくとも公立の高校)の生徒に話すことを目的にした授業をすることが妥当かどうかということです。
 英語の少ない時間数、生徒が他にも多くの教科を学ばなければならない現実を考えると、英語の運用力の基礎を身につけるためにも、英文の構造、型を習得させることを優先させるべきではないでしょうか。(それで手一杯だと思います。)リスニングの力は若いときの方が伸びるので O.C.B. は大切だと思いますが。
 それではどこでスピーキングの訓練をするかといえば、私には大学の語学教育の場がそれにふさわしいと思います。高校で身につけた知識を試す機会を大学には設けてもらいたいと思います。けれども多くの大学では、入試であれ程高度な英語を受験生に課しておきながら、入学後にはその学生の知識を活性化させる努力を怠っているように思えてなりません。
 こういったからといって、高校の現場には改めるべき点がまったくないというつもりはありません。たとえ高校生に話すことを目的として授業を行わないとしても、教師自身は高校の英語教育の成果として英語が話せるということを生徒に示さなければいけないと思います。しかし、自分のことを棚に上げていうのは後ろめたい気もしますが、多くの学校で英語を話せない教員がけっこう存在するというのも事実です。私は以前、民間企業の輸出部に勤務していたことがありますが、そこでは法学部や経済学部出身者が英語を使ってバリバリ仕事をこなしていました。彼らは英語を使わなければ仕事になりません。だから話すのが苦手なんて言ってられないという必死さが感じられました。それと比べ我々教員の多くにそういう意識が乏しいように感じてしまうのです。昔から「学校の英語は役立たない」という話が一人歩きしています。そして多くの生徒がそれを信じているようです。ですから、そうでないことを示すためにも、教員が彼らの前で自信をもって話せる英語力を身につけることが急務だと思うのです。

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木下宣子
(名古屋短期大学付属高等学校)

 今回は、シンポジウムということで、入学試験、実用英語検定試験、ACTFL − ALC Standard Speaking Test がどのように授業に波及していくかについて、また授業内容のテーマ設定について、それぞれ4人の先生方による講演、提案が行なわれました。以下それらの要旨と参加者から出た関連の意見、私自身の感想などまとめてみました。

『入学試験の内容を変えるだけでは授業は変わらない』
(国際基督教大学・渡部先生)
渡部先生のこのお考えに、初め疑問を抱きながら伺っていました。今の入試と文部省が掲げている理想の教育とには大きなギャップがあり、先ず入試が変わってくれないと授業が変わらないと私は考えていたのです。
 ところが、先生ご自身による高校・予備校の授業の観察や使用教材などのデータ分析の結果によると、授業内容は教師による個人差が大きく、目的による差は非常に小さいということでした。そして以下の問いかけに私は「ハッ」とせざるをえませんでした。
○入試にgrammarはそれほど出題されていないのに、未だなおgrammarが重要視されているのはなぜか。
○テスト出題者の期待通りに学習者が学習し、身につけているかどうか。
 @授業の現状:参加者の発言ですが、「転任校での初めての授業で、すべて英語で授業をしたら、同僚からも生徒からも猛反対を受け、しぶしぶながら昔ながらの訳読方式に戻らざるをえなかった。」という言葉にも、マンネリ打破の難しさを痛感させられました。先生ご指摘の状況がなかなか改善できないのは、昔ながらの文法 訳読方式による指導が一番効果が上がるという固定観念を持っている教員が少なくないからだと思います。
 A会話対策:参加者の中には、「センター試験で、オーラル問題が出題されているが、紙面上の試験では学習者に良い波及効果は期待できない。」という強いご意見もありました。受験生は、situationも考えないで、ただ過去に出題された会話表現を丸暗記しているだけだと言うのです。コミュニケーションという営みが、人間対人間の言語による共同作業であることを考えると、状況を考えない決められた表現だけの暗記は問題があると思います。 
 今後教員は、受験対策として単に過去の問題を解き、入試を批判ばかりしているのではなく、生きた英語の力をつけながらいかにして入試問題にも対応できるか、色々と創意工夫をこらしていく必要があると感じました。
 B大学側の試み:高校教師側の工夫も勿論ですが、現状をみるとやはり授業に及ぼす入試の波及効果はないとは言えないと思います。先生がおっしゃる通り、例えば採点方法等を公表することによっても、学習者は学習しやすくなるなどのよい効果が期待できます。
 確かに問題を変えただけでは、授業は変わらないでしょうが、高校側の努力だけでは限界があると思いますので、大学側でも色々な工夫・試みを取り入れて欲しいと思います。

『英検の新しい形式とオーラルコミュニケーション A』
(都立九段高校・柳瀬先生)
 @リニューアルで何が変わったのか:柳瀬先生は、このリニューアルで「質問者の要求している答えにどれだけ近い答えを受験者ができるか」という Display Question ばかりの質問から、「質問者の知らない情報を受験者から引き出す」という Referential Question が組み込まれたことで、実際のコミュニケーションにより近づいたのではないかというご報告でした。
A O.C.A の授業における関わりについて:英検の面接試験で求められる要素は、O.C.A の授業の中で様々な形で取り入れられ、授業に及ぼす波及効果は大だとのこと、また英検の面接官経験者から、「面接官をやっていると、実際に O.C.A の授業に役立つことがよくある」というご感想もあり、今回のリニューアルでよい波及効果を授業にもたらしているのではないでしょうか。入試の合格判定にも、英検を加味している短大・大学が増えてきていることは喜ばしいことだと思います。

『 SST ( ACTEL − ALC Standard Speaking Test )及びオーラルコミュニケーションの現場の実態について』 (神奈川県立市ヶ尾高校・相馬先生)
 @ SST の特徴: SST は合格・不合格を決めるテストではなく、現在の自分のスピーキング能力を測定するもので、評価は訓練を受けた高度なスピーキング能力を持つ試験官が当たっていて、その評価には信頼がおけ適切なコメントを頂けるとのことでした。また入試のように落ちて自信を無くすこともないので、学習者が自分のレベルを測定するにはかなり良いテストだと思います。また教員にとっても、 SST 試験官養成のセミナーを受けることによって、インタビューのテクニックやスピーチの基準など、オーラルの授業やテストを行う際、非常に参考になるのではないかと思います。
 A緊張は訓練で克服できる:スピーキングテストとなれば、「あがる」という経験が誰にでもあるのではないでしょうか。後になって「ああ言えば良かった。」などと考えるものですが、その思いが大切なのだそうです。「緊張感」がないと向上心は得られないし、このような体験を繰り返すうちに、「あがる」という現象を克服していけるとのことでした。
 Bオーラルコミュニケーションの現場の実態:朝日新聞の抜粋により、「もっと話す事を学びたい。」という高校生や、「大学入試に向けて難しい文法をやるべき」とか「O. C. の苦手な教員の再教育から始めるべき」など教員の意見が提示されました。
 コミュニケーション能力養成の必要性が叫ばれていますが、現場で抱えている問題点がかなり多く、 O.C. の授業が定着しているとは言えないようです。しかし、進学校ながら生徒達がディベートを堂々とこなすまで導いていった福井県立武生東高校(96年度全英連の公開授業)の例もあるのですから、オーラルの導入も不可能はないと思います。

『授業内容のテーマの統一』(上智大学・吉田先生)
現在の英語の授業は、テーマがバラバラであるので、共通したテーマ設定の必要性を説かれ、英語科目は勿論のこと他教科との連携も必要であるとのご指摘がありました。私自身、昨秋公開授業をする機会があったのですが、その準備段階において、時代背景、思想等掘り下げていこうと思うと、授業時間が不足してしまい、教科を越えたプロジェクトの必要性を痛感しました。先生のご提案のように、生徒の理解を深めるには、同一テーマで色々な角度から授業を進めていくことが必要だと思います。

最後に
 先生方のご提案、質疑応答、そして活発な意見交換ととても有意義な時間を過ごさせていただきました。吉田先生をはじめ、渡部先生、 ASTE 運営委員の先生方どうもありがとうございました。 ASTE の例会は私にとってよい刺激であり、明日の授業への活力が湧いてくる場ですので、これからもできる限り参加したいと考えています。

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         お知らせ

1) 本年も、上智大学英語学科主催の中高英語教員を対象とした Sophia Seminarを開催いたします。今年は、軽井沢に新しくできた上智大学軽井沢ハイムで開催することになりました。セミナーは、1週間、全て英語で行われます。参加ご希望の方は、下記までお知らせください。

The 25th Sophia Seminar for High School Teachers of English
テーマ:The Communicative Approach--the Rest of the Story

講師:Louis Arena (Professor, University of Delaware/Visiting Professor, Sophia University)
Strategic Interaction

     Adelaide Heyde Parsons (Professor, Southeast Missouri State University)
Cooperative Learning

     Neal Anderson (Professor, Brigham Young University)
Communicative Reading

Kensaku Yoshida (Professor, Sophia University)
Listening/Speaking



日時:1998年8月1日(土)〜8月7日(金)
場所:〒389ー0111 長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉字道南8ー30
             上智大学軽井沢ハイム
参加資格:原則として中学・高等学校の英語教員
定員:30名
参加費用:¥55、000
申し込み締め切り:1998年5月22日(金)
申し込み資料請求/お問い合わせ先:
     〒102ー8554 東京都千代田区紀尾井町7ー1
         上智大学外国語学部英語学科気付
Sophia Seminar 係
      tel:03-3238-3719/fax:3238-3910
e-mail:yasuko-w@hoffman.cc.sophia.ac.jp


2)ASTE の Newsletter は、ASTE のホームページ

     http://www.bun-eido.co.jp/ASTE.html

にも掲載されています。インターネットをお使いの会員で、このニュースレターの送付を必要としない方は、下記 ASTE 事務局までお知らせください。その他、ASTE に対するご意見、ご希望などございましたらお知らせください。

   

               

3)上智大学大学院応用言語学研究会 HOME PAGE
 これは、上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGE です。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。


CALPS HOME PAGE: http://www.asahi-net.or.jp/~jg8t-fjt


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