Association of Sophian Teachers of English
上智大学英語教員研究会
Newsletter
第54号    2006年3月31日


 目 次

ASTE 設立25周年を迎えて
会長 石川 和弘(清泉女学院中学高等学校)

Learner autonomyを主眼とした英語プレゼンテーションスキルの育成:
Learners' retrospective evaluationの視点から

ASTE第137回例会 2005年10月22日 鈴木利彦(上智大学)

A Study on Japanese Secondary School Students' Beliefs about English Learning
(日本人の高校生の英語学習に関する学習観)

ASTE第138回例会 2005年11月12日
鈴木 栄(神奈川総合高等学校)& 熊澤 孝昭(関東学院大学)

お知らせ
(ASTE 2006年度前期予定)



ASTE 設立25周年を迎えて
会長 石川 和弘
(清泉女学院中学高等学校)

 上智大学英語教員研究会(ASTE)が皆さまに支えられ、25周年を迎えます。ありがとうございました。
 この25年を振り返ってみますと、英語教育界には激しい変化があったように思われます。また同時に吉田研作先生を始めASTEにたずさわり、その運営に協力してくださった方々も、それぞれの場で活躍されキャリアを積まれてきています。このような流れの中にあって、ASTEに集まり、そこから発信される英語教育関係の情報の質も変化してきました。
 発会当初は、例会あるいはその準備会で、吉田先生がEFLやESL関係の情報を提供し、現場の教師が現場の情報を提供し、これらの理論・現実を止揚して英語教育について何らかの貢献をするべく努めていましたが、最近ではこの過程にたずさわる方々の立場や身分が変化し、話題がより広い範囲をカバーするものになってきているように感じます。言ってみれば、ASTE で扱われる情報が戦術レベルのものから戦略レベルのものに変化しているようです。そのような情報を求めて例会に参加される方もいらっしゃるようです。
 立場に応じて必要となる情報が変わるのは当然ですが、25周年を迎えた今、新任の英語教員から超経験者まで含む ASTE としては、発会当初の理念である「日本の英語教育のあるべき姿を考え、かつ現場の英語教師にとって役に立つ情報を出す」ということを再確認し、初心に還り、かつ心を新たにして現実をふまえて進んで行きたいとたいと思います。
 発会当初には想像もつかなかったインターネットという便利なものが自在に使えるようになりました。インターネットは空間的広がりを増すことに多大な貢献をしましたが、一方でコミュニケーションの質をも変え、物理的に同じ空間を共有して話し合う機会が減っても事足りると感じる状況を作り出しています。当然今後のASTEの活動にインターネットを利用することが増えて行くと思います。しかし、会としての「活動」という点から言うと、やはり会員が顔と顔を合わせてコミュニケーションを持つ方が、英語教育に携わる者の共同体として、同じ目標を持って共に活動しているという安心感を与え、使命感を支えるものであるように思います。
 インターネットが存在する環境になった以上、それを利用することがASTEの活動の可能性を広げるものであることは間違いありません。そこで、以前の活動形態のよかった点でインターネットを利用できない部分はしっかり維持し、転換できる部分はおおいにインターネットを利用して会の活動をしていくのが現実的であると考えます。その意味において例会への参加の価値はいささかも減じてはいないと思います。ネット関係の充実もやっていかなければならない事項ですが、皆様とお会いし直接話ができる例会へ参加を強くお誘いいたします。我々が扱っているのは、本当の意味のコミュニケーションの手段である英語の教育であることを忘れてはならないと考えます。
 次の30周年に向けて、さらに皆様のお役に立つ会として活動していきたいと思いますので、どのような形でも結構ですので、ご参加、ご支援くださいますよう、お願いいたします。


Learner autonomyを主眼とした英語プレゼンテーションスキルの育成:
Learners' retrospective evaluationの視点から

ASTE第137回例会 2005年10月22日  鈴木利彦(上智大学)

はじめに
 本発表は、2005年度前期に上智大学で実施したlearner autonomyを主眼とした英語プレゼンテーションプロジェクトについての実践報告である。プロジェクト終了後に実施した各アクティビティに於ける学習者自身の自己評価(self-assessment)についてのアンケート(retrospective evaluation)によって、このプロジェクトで学習者がどのようにautonomous learningの機会を生かして学習したかを調査した。
 吉田国子(2003: 67)は、語学教育に於けるlearner autonomyについて次のように述べている。

近年語学教育のなかで重要視されるようになっている考え方に,Learner Autonomy がある。これは,学習者が自己の学習に責任を持ち,主体的に学習に取り組んでいくことを意味し,語学教育は究極的にはその目標に向かって行われるべきだという主張である。Learner Autonomy にはLearning Strategies(学習方略,各人の学習の進め方)とLearner Attitudes and Motivation(学習に対する動機付けや態度)の二点が深くかかわっている。

 この記述は吉田研作(2002) の提示する"Open Seas Model"、その中でも特に"Reliance on Self - Learner-centered, active learning"の項目に一致するものである。自発的、自主的に英語学習を行っていくことがコミュニカティヴ・スキルの育成には大切なことであり、実際の学習の場でlearner autonomyを目標とした活動を取り入れることは"Open Seas Model"の実践の一つの方法である。
 このようなプロジェクトでは学習者が活動の中でどれだけ"responsible learner"となれるかが成否の鍵となる。Scharle & Szabo (2000: 3)によれば、"responsible learner"の定義は、"learners who accept the idea that their own efforts are crucial to progress in learning, and behave accordingly"となっており、セルフコントロールのできる自主的学習者を意味している。プロジェクトワークでは「個人的な努力」と共に、「学習者グループ」内でどのような役割を担いグループ活動を活性化させるかも大きな要素であり、今回の試みではその点にも焦点を当てている。

1.Learner autonomy in ELT, group dynamics and self-assessment
 語学教育におけるlearner autonomyの重要性について、Benson (2001:1)は以下のように述べている。

As the theory and practice of language teaching enters a new century, the importance of helping students become more autonomous in their learning has become one of its more prominent themes.

 基礎レベルで学習者が教師からしっかりと教科指導を受け、実力を養成することの重要性は疑いのないところである。しかし中・上級レベルでは、教師が与える以上の事柄に目を向け自ら学び取る姿勢を身に付ける必要が出てくる。Autonomous learningはこの点で学習者の自主的な学習姿勢の養成に適している。Autonomous learningを通じて、学習者は以下の学習態度を習得することが期待される。

  1. Identify what is being taught. That is, they are aware of the objectives in the materials, or stated by the teacher;
  2. State and follow-up their own purposes in addition to the objectives in the materials, or stated by the teacher;
  3. Select and implement appropriate learning strategies;
  4. Monitor their own learning and
  5. Monitor and evaluate their own use of learning strategies.
    (suggested by Dickinson - cited in Victori, 2000: 175)

 Learner autonomyの追求において、グループワークは一つの大きなテーマである。Scharle & Szabo (2000: 8)は"cooperation and group cohesion"という項目で次のように述べている。

Promoting cooperation in the classroom affects learner attitudes in several ways. It encourages the learners to rely on each other (and consequently themselves as well) and not only on the teacher. Group work also creates opportunities for feedback from peers: learners will do things to please the group rather than to please the teacher. ノ These then are the building blocks of responsible attitudes on the part of the learner.

 このプロジェクトでは活動中のself-assessmentを行うことはできなかったが、プロジェクト終了後すぐに実施したアンケート調査で、学習者に自らのパフォーマンスを評価させた。

2.プロジェクト、retrospective evaluationの概要
このプロジェクトは、2005年前期に上智大学の「英語中級I(話し言葉のコミュニケーション)」(週2回)の28人の学生(1年生17名、2年生11名、男女共に14名ずつ)を対象に行われ、4人一組の各グループが"For a better environment: what we should/shouldn't do in the fight against global warming"というタイトルでプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションの準備を含むプロジェクト全体の手順は次の通りである。

(1) Group making; (2) Brainstorming [a. Topic choice, b. Idea generation];
(3) Draft making; (4) Draft revision; (5) Practice; (6) Presentation; (7) Evaluation

 補遺1はプレゼンテーションに使用された原稿(教師による必要最低限の修正入り)である。上記のプロセスを通じて作成された最終productの一つとして参照されたい。(尚、今回のASTEの発表ではプレゼンテーションの様子を撮影したビデオも上映した。)
プロジェクト終了直後に行った"retrospective evaluation"のアンケートは補遺2を参照。各アクティビティでの自己評価を、5 = excellent; 4 = very good; 3 = satisfactory; 2 = not very good; 1 = poorという数値評価で、また記述によって、a) = "How did your group organise this process?"b) = "Your assessment of this process"の2つの項目についてレポートを行わせた。

3.アンケート調査結果
 ここでは(a)数値による評価、(b)記述による評価、の2項目についてアンケート調査結果をまとめた。(b)の記述による評価では、「肯定的な意見(positive)」、「中立的な意見(neutral)」、「否定的な意見(negative)」のそれぞれにつき割合の数値と、代表的、もしくは注目に値する記述を紹介する(カッコ内の数字は、その学習者がその活動につけた自己評価の数値である)。

(1) Group making
a. 数値による評価
5 51.9%
4 37.0%
3 11.1%
2 0%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 22/25 (88%)
「くじ引きだったので、今まで話をしたことのない人とも一緒になれて良かった。」(5)
「良いメンバーに恵まれたのでくじ引きでよかった。」(5)
「くじで決めた方が他学部の人と知り合えたし、プレゼンの幅が広がったと思う。」(3)
Neutral: 2/25 (8%)
「偶然にも友達がいた。」(5)
Negative: 1/25 (4%)
「メンバーに忙しい人が多く、最初のうちに全員揃うことがあまりなかったのがキツかった。」(3)

(2) Brainstorming (on the whole)
a. 数値による評価
5 25.9%
4 25.9%
3 40.7%
2 7.4%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 15/25 (60%)
「多くの意見が出て良かったと思います。」(5)
「メンバー全員が積極的にアイディアを出せてよかったと思う。」(4)
「結構多くの意見が出たので、うまく自分の提案を出せたと思う。」(5)
Neutral: 2/25 (8%)
「二酸化炭素とgreenhouse gasのどちらをメインにするかで悩んだ。」(3)
Negative: 8/25 (32%)
「テーマは良く出ましたが、そこから話を発展させていくにはもっと知識が必要だと感じました。」(3)
「あまり多くの意見が出ずに終わった感じがする。」(2)

(3) Brainstorming (topic choice)
a. 数値による評価
5 22.2%
4 44.4%
3 33.3%
2 0%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 13/25 (52%)
「もちろん自分も興味があったので非常に面白かった」(5)
「もっと他のグループとかぶるかと思ったけど、個性的にやれたと思う。」(3)
「みんなで沢山考えることができたから良かったと思う。」(4)
Neutral: 5/25 (20%)
「テーマを学科を結びつけて、ということだったので、改めて哲学が何かを考えていた。」(4)
「一番わかりやすいtopicだったけれど、説明するのは意外と大変なtopicでした。」(4)
Negative: 7/25 (28%)
「具体的な対策をあまり出せなかった。話が大きすぎてまとめるのに苦労した。」(3)
「時間があまりなく、ありきたりなトピックを選ばざるを得なかった。もう少し深い内容も触れたかった。」(3)

(4) Brainstorming (Idea generation)
a. 数値による評価
5 26.9%
4 46.2%
3 26.9%
2 0%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 15/24 (63%)
「分かりやすい、ビジュアル的な表ができて、とてもよかった。」(5)
「本を図書館から借りた人もいたりと、それぞれがアイディアを出し合うことができた。」(4)
「自分の専門を受け持つことで、なかなかはかどった。」(4)
Neutral: 1/24 (4%)
「抽象的な話も出しつつ、具体例も出し、分かりやすくなるべく心がけました。」(3)
Negative: 8/24 (33%)
「もっと深く突っ込んだ意見を出しても良かった。」(4)
「少し2人に頼ってしまった。」(3)

(5) Draft making
a. 数値による評価
5 40.7%
4 37.0%
3 14.8%
2 7.4%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 13/26 (50%)
「全員〆切に間に合い、なかなかの完成度だったように思う。」(5)
「スラスラとみんな書けていたし、スムーズに集めることができた。」(5)
「なかなか進まなかったけれど、最終的にはみんなしっかり作ることができました。」(4)
Neutral: 5/26 (19%)
「Draftとhandout,レジュメノ違いがわからない。」(2)
「英語にするのに苦労した。」(3)
Negative: 8/26 (31%)
「日本語を作った人と英語にした人が違うのがやりにくくなってしまった。」(4)
「なかなかみんなの文章が集まらなくて大変だった。」(5)
「「ロシアについて」というのが漠然としていて困った。」(4)

(6) Draft revision
a. 数値による評価
5 34.6%
4 30.8%
3 23.1%
2 11.5%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 7/24 (29%)
「私的には、この作業が一番内容の濃いものとなって勉強になった。」(5)
「これのおかげで相手にわかりやすく伝えなくては、と思った!」(4)
Neutral: 1/24 (4%)
「まあ普通だと思う。」(5)
Negative: 16/24 (67%)
「他の皆の分をちゃんと読んでいないノ。」(3)
「全員でもっと相談できればよかったです。」(4)
「しっかりやっておくべきだった。」(2)

(7) Practice
a. 数値による評価
5 14.8%
4 18.5%
3 37.0%
2 29.6%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 3/27 (11%)
「本番への緊張感が和らいだ。」(4)
Neutral: 4/27 (15%)
「個人的にはがんばった。」(4)
Negative: 20/27 (74%)
「一回みんなで読み合わせをした方がよかった。」(4)
「リハーサルしてませんノ。」(2)
「みんなで練習できなかったのと、時間が無くて暗記できなかったのが残念。」(3)

(8) Presentation
a. 数値による評価
5 11.1%
4 66.7%
3 22.2%
2 0%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 14/27 (52%)
「クイズなどを織り交ぜてできたところが良かったと思う。」(4)
「楽しくやれた。」(4)
「集まれなかった分、直前に「前に立つ人は発表する人だけの方がわかりやすい!」など、アイディアを出せて良かった。」(4)
Neutral: 4/27 (15%)
「緊張しすぎて自分はダメだったけれども他のメンバーはきちんと暗記をしていて素晴らしかった。」(3)
Negative: 9/27 (33%)
「写真などを使ったのは良かったが、しっかりと暗記できていなかった。」(3)
「声がもっと出たらよかった。焦ってしまった所もあった。」(4)

(9) Evaluation
a. 数値による評価
5 19.2%
4 53.8%
3 23.1%
2 3.8%
1 0%

b. 記述による評価
Positive: 9/21 (43%)
「メンバーそれぞれの評価が一致することが多く、良かったです。」(4)
「チーム全員の意見が反映できたと思う。」(4)
Neutral: 5/21 (24%)
「他のグループが踏み込んだ内容だったので驚いた。」(4)
「他の班の意見を注意深く聞いた。自分の班には無かった意見を聞くのは参考になる。」(3)
Negative: 7/21 (33%)
「基準が不明確で評価がばらけてしまった感もある。」(3)
「どの班も一生懸命取り組んでいるのがわかるから点をつけずらかった。」(4)

(10) Total performance evaluation
a. 数値による評価
5 28.0%
4 68.0%
3 4.0%
2 0%
1 0%

b. 記述による評価
(i) 英語力の向上について - positive
「自分で文章を英語にしたりしなければいけないので英語の力はつくと思います。このように主体的にやった方が授業を聞いてるだけより力がつくと思います。」(4)
「グループワークは、インターネットで調べたり、文章を書いたり、とても英語の向上になると思った。先生の授業を聞くのも、とても勉強になるけれども、自らインターネットで英文を読んだり、essayを書いたり、presentationで英語を人前で話したり、とても学べた。」(4)
「細かい文法が身に付いた。人前で堂々と英語を話せたので自信がついた。」(4)
「普通の授業よりも得られるものは多かった。英作文、スピーキング能力等、総合的な英語能力を必要とした。」(4)
「こういったプレゼンはしっかりと英作文をし、音読を繰り返さないと成り立たない。その点で英語力の向上に役立つと思う。」(4)

(ii) 英語力の向上について - negative
「受身でいられないので自分の頭を使うことが多く有意義な授業だと思うが、原稿についての修正がないので英語力が向上したのか疑問な部分もある。」(3)
「自分自身ではあまり向上はしないかな、と思ってしまいました。良い刺激にはなりましたけれど。しかし、自主的に考える、ということはとても良いことだと思います。主体的ばかりもどうかと思いますがノ。」(4)

(iii) グループワークのメリットについて
「色々調べることによって新しい知識を得られること、自身に責任がかかるため積極的に学習に参加するということがあります。」(4)
「グループでやることにより、様々な人の意見が聞け、自分の仕事に責任を持てました。」(5)
「グループワークをすることによって、コミュニケーションが磨かれることはもとより、責任感などいろいろなものが活性化される。」(5)
「グループワークはみんなで協力できるし、友好な関係も作れるから非常に良いと思う。またやりたいです。」(4)
「互いにコミュニケーションをとって、意見を言ったりすることで、自分では気付かない所に気がつきました。」(4)

(iv) グループワークのデメリットについて
「グループワークは、やるのはグループだったが、細かい作業は個人になってしまうのでそこが問題だと思う。」(4)
「意見をまとめるのが少し大変な時もある。なかなかグループで集まることができないこと。」(4)
「面倒くさいところ。テーマに沿って話すべきスピーチがやりにくい。一貫性が無い。」(4)
「グループのメンバーの中で、どうしても積極性に差が出てしまうため、一部のメンバーに頼りがちになってしまうこと。」(4)
「グループでは、文を作る時にmain topicを一貫して書くのが難しいので大変でした。」(4)

4.考察
(1) Group making
グループ作りをする際に要望を聞いたところ、「くじ引きで」という声が圧倒的多数であった。自分の気の合う仲間で固まるのではなく、話をしたこともないクラスメートとの交流を望んでいたようであった。要望に応えた結果、非常に肯定的な評価が多かった。

(2) Brainstorming (on the whole)
数値と記述による評価の両方で不満足を表す意見が少なからずあったことに注目したい。一つの原因としては、学生達がこのようなディスカッション形式で物事を進めていく方法に慣れておらず、role-taking (e.g. ヤfacilitator', ヤelaborator', ヤrecorder', ヤevaluator')が上手く機能していなかった可能性が挙げられる。今後の指導では事前にrole-takingについてのexplicit instructionも視野に入れて行きたい。

(3) Brainstorming (Topic choice)
テーマについて、自分の所属する学科の観点を入れて論じることを求めたので、その点で興味深いと感じる学生と難しいと感じる学生に分かれたようである。「もう少し深い内容も触れたかった」という意見からは、大学レベルの専門性でテーマを追求したかったが、それが上手く行かなかったフラストレーションが読み取れる。

(4) Brainstorming (Idea generation)
肯定的な評価・意見の多さは、様々なアイディアを出し合えた事や「分業」がうまく機能したことを表している。その一方で、議論が不十分だったり、「全員参加」が不十分で、特定の学生の活躍に頼ってしまったグループもあったことが窺われる。

(5) Draft making
実際に原稿作りは個人に任されたものの、それを一つにまとめて一貫性のある作品にまとめるためにはbrainstormingと同じように「共同作業」が重要な要素であった。それが上手く行ったかどうかが評価の分かれ目になっているようである。個人的に学科の専門分野の視点を絡めてテーマを論ずることに難しさを覚えた学生も見受けられた。

(6) Draft revision
数値による評価も少し低めであったが、記述による評価ではかなり「もっとうまくやるべきであった」という意見が多かった。良いプレゼンテーションのためには原稿の推敲が必須であるが、教師の視点からもこの作業を少し疎かにしている様子が見られたので、この結果は妥当と思われる。ここをしっかりやった学習者は「この作業が一番内容の濃いものとなって勉強になった」と述べており、この活動こそ学習効果が高く、またプレゼンテーションを成功に導く大きな鍵の一つであったことが理解できる。
次回同じようなプロジェクトがあれば、おそらくこの学習者達はここにより力を入れると思われる。推敲の重要性が学べたのであれば何よりと思う。

(7) Practice
この活動は数値でも記述でも否定的な評価がかなりの割合を占めた。プレゼンテーションでは上記draft revisionとリハーサルが成否を決めるといっても過言ではない。学部学科が違う学生達の集まりなので、授業時間以外に集まったり時間を取ったりすることは難しいことであった。それゆえ授業時間内での練習が重要であったのだが、限られた時間を有効に使ってプレゼンテーションに必要なスキルを磨くかという点では多くのグループで甘さが見られ、実際のプレゼンテーションの状況をきちっと頭に描き、暗記やジェスチャーなどの練習をするまで至ったグループは少数であった。しかし、後から振り返ってここがうまくできなかったと反省できたのは今後の糧になる。高校卒業までは大学受験のための文法学習などに追われ、このようなプロジェクトやプレゼンテーションのための技術を身につける機会もあまりなかったと思われるので、今後はぜひディスカッションやプレゼンテーションなどの英語コミュニケーションのスキルを磨いていって欲しいと思う。

(8) Presentation
肯定的な評価として、プレゼンテーションに工夫を凝らし、またグループでの発表そのものを楽しんだという意見が出た。しかしリハーサル不足で、本番で思うようにできなかった学生は準備不足を痛感したようである。

(9) Evaluation
数値的には肯定的な評価が多かったが、記述による評価では苦労の跡も見受けられた。特に、「基準が不明確で評価がばらけてしまった感もある」という意見から、プレゼンテーション評価にもリハーサルを行うなどして、ある程度共通の基準を作って臨ませる必要があると感じた。(どのような出来ならどの点数を付けるか等)
しかし、「メンバーそれぞれの評価が一致することが多かった」という意見もあり、プレゼンテーションの評価について一定の共通認識を持っていることも窺える。

(10) Total performance evaluation
数値的評価では、学習者の大多数が良い点数を付け、このプロジェクトでの自分の出来に対する満足度が高いことが分かった。
記述による評価では主に、(i)英語力の向上について、(ii)グループワークのメリット/デメリットについて、の2つを書いてもらった。(i)については、"autonomous learner"の姿勢を身に付け、自主的な学習姿勢を持った学習者にとっては良い学習機会となったことが分かる。「原稿についての修正がないので英語力が向上したのか疑問な部分もある」という意見に対しては、プロジェクト終了後しばらく経ってから教師が手直しした原稿を渡し、それぞれグループで確認させることによってケアをした。(ii)に関しては、グループワークによって活性化されるコミュニケーションや役割分担などの利点や、逆に役割分担が面倒だったり、一つのテーマを追求するのに一貫性が失われるなどの欠点が指摘され、今後指導の際の参考としたい。

5.まとめ
数値評価から見ると、全体として非常に満足度の高いプロジェクトであったことがわかる。しかし記述による評価を見ると、作業によっては苦労したり反省点が多かったことが分かる。プロジェクトに参加した学習者達がそれぞれ課題を見つけ色々と考えたことは、autonomous learnerとなるのに正しい方向を辿ったことに他ならないと考える。また、これだけ色々な考察が出てきたことは、この学習者達がautonomous learnerとなるための高いポテンシャルを有していることの証明でもある。
英語学力向上と、このグループワークプロジェクトに関しては、主体的学習が効果的であるとする意見が多かった反面、もう少し教師からの指導が必要だったという意見もあった。この2つのバランスを取ることが肝要であり、今後さらに指導方法を改善していきたい。
Learner autonomyを主眼としたgroup workは、他者と交流する姿勢、グループの中での責任感、また英語学習における自発的なlearning strategyの育成という点などにおいて有意義である。自分達がプロジェクトに主体的に関わった立場として今後の自分達の活動に生かすと共に、後輩たちへのアドバイスを書いてもらえば同じ立場として非常に参考になることであろう。

参考文献
Benson, Phil (2001). Teaching and Researching Autonomy in Language Learning. London: Longman.
Dickenson, Leslie (1993). "Talking Shop: Aspects of Autonomous Learning". ELT Journal 47 (4): 330-336.
Dornyei, Zoltan & Tim Murphey (2004). Group Dynamics in the Language Classroom. Cambridge: CUP.
Ekbatani, Glayol and Herbert Pierson (eds.) (2000). Learner-Directed Assessment in ESL. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum.
Murphy, Tim (1994). "Tests: learning through negotiated interaction". TESOL Journal 3: 12-16.
Scharle, Agota & Anita Szabo (2000). Learner Autonomy: A Guide to Developing Learner Responsibility. Cambridge: CUP.
Victori, Mia (2000). "Views on self-access language learning: a talk with Leslie Dickinson, Lindsay Miller, Gill Sturtridge and Radha Ravindran". Links & Letters 7: 165-180.
吉田研作 (2002). 「英語が使える日本人」の育成と展望 於シンポジウム「『英語が使える日本人』を考える」 2002年12月8日
吉田国子 (2003). 「インターネットを含むマルチメディアを利用した独自教材の作成」 武蔵工業大学環境情報学部情報メディアセンタージャーナル2003.4 第4号: pp. 67-70.


補遺1

For a better environment: what we should / shouldn't do in the fight against global warming
(How To Control The Greenhouse Effect)

Team : Umino Penpengusa

 Good morning,everyone. This is "Umino Penpengusa". We talk about what we should do to stop global warming.
 The cause of global warming is greenhouse gases that contain a massive dose of carbon dioxide. This gas causes greenhouse effect. The greenhouse effect is the rise in temperature that the Earth experiences because greenhouse gas in the atmosphere traps energy from the sun as the sunlight. It reaches the atmosphere and the Earth's surface absorbs the sunlight's energy. Some of the energy passes back into space, but much of it remains trapped in the atmosphere by the greenhouse gases, causing our world to heat up. The greenhouse effect is important. Without the greenhouse effect, the Earth would not be warm enough for humans to live. But if the greenhouse effect becomes stronger, it could make the Earth warmer than usual. Even a little extra warming may cause problems for humans, plants, and animals. Global warming also might bring droughts to places where we grow crops. In the world, people may not have enough to eat because they cannot grow the food that they need. Besides temperature rises, ice of a pole comes loose, and, for the height above the sea level rising, the place where a penguin and a white bear live in disappears and small islands may disappear too. Then, what we should have done to stop global warming? We regarded the carbon dioxide which held most of greenhouse effect gas as a main warm cause and start to show the measures to stop global warming.
 It is effective to control the amount of carbon dioxide by reducing electricity consumption. Various attempts to cut down electricity consumption are made globally. For example, wind power generation is carried out in Europe, especially in Spain. In this country, researches on the generation of electricity have been conducted, and now, Spain has become the second country in the world that has facilitated wind power generation. And recently, the photovoltaic power generation --- that is the way to generate electricity with solar energy --- has been noticed all over the world. Besides, many measures for power generation are discussed among civilians.
 At the first, Russia refused to ratify the Kyoto Protocol. The reason for this was a fear that the influence of the Kyoto Protocol would chiefly exert on Russian economy. Russia is a treasure house of natural resources, and the nation has been managed by the profit. If the Kyoto Protocol is ratified, every country begins to suppress the amount of the exhaust of carbon dioxide. Reduction of the vehicle exhaust emission can be thought first of all. Reducing the vehicle exhaust emission has a large influence on the export of oil. Oil supports the nation of Russia today.
 Moreover, Russia is famous as a very cold country. When it is the coldest in a Russian northern part, the temperature gets under -30 degrees. Therefore, the consumption of the heating energy of Russia is a serious issue. However, when the normal temperature of the earth rises by one degree, the period people need heating decreases by two months in the northern part of Russia. And it is likely that it will decrease in the center part by around the 20days.
 Therefore it was thought that the Kyoto Protocol would influence Russian economy harmfully from such a viewpoint. The EU said if Russia ratifies it, the joining of Russia to WTO is supported. As Russia hoped for economic development, it signed the ratification document on 2004.11.05.
 Today, there are actions occurring at every level, to reduce, to avoid, and to better understand the risks associated with global warming. For example, in Japan the so-called "Cool Biz" campaign kicked off with the government's initiative from June 1.
 Global warming may be a big problem, but there are many small things we can do to make a difference. If we all try, we can expect a big reduction effect surely. Now, I'll introduce five things that we can do.
 Save electricity. Whenever we use electricity, we help greenhouse gases put into the air. By turning off lights, the television, and the computer when you are through with them, you can stop this a lot. Reduce using owner-driven car. You can save energy by taking a bus sometimes, riding a bike, or walking. Plant trees. Planting trees is fun and is a great way to reduce greenhouse gases. Trees absorb carbon dioxide, a kind of greenhouse gases, from the air. Recycle resources. Recycle cans, bottles, plastic bags, and newspaper. When you recycle, you send less trash to the landfill and you help save natural resources, like trees, oil, and elements such as aluminum. Select environmental products. There are lots of ways we can improve the environment. One of the ways to reduce the amount of greenhouse gases that we put into the air is to buy products that don't use as much energy. By conserving energy, we help reduce global warming and make the Earth a better place. Some products - like certain cars and stereos - are made especially to save energy.
 Driving a car or using electricity is not wrong. We just have to be smart about them. Some people use less energy by carpooling. For example, four people can ride together in one car instead of driving four cars to work. Here are some additional ways you can help make the planet a better place. Please put what we can do into an action.
 Thank you for listening.

補遺2
Retrospective evaluation of the presentation procedure
Team name:
5 = excellent; 4 = very good; 3 = satisfactory; 2 = not very good; 1 = poor
a) = How did your group organise this process?
b) = Your assessment of this process.
1. Group making [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 b)
1. Brainstorming (on the whole) [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)

 (1) Topic choice [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]

 a)
 b)
 (2) Idea generation [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)
4. Draft revision [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)
5. Practice [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)
6. Presentation [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)
7. Evaluation [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 a)
 b)

Total evaluation of the performance [ 5 _ 4 _ 3 _ 2 _ 1 ]
 
 


A Study on Japanese Secondary School Students' Beliefs about English Learning(日本人の高校生の英語学習に関する学習観)

鈴木 栄
(神奈川総合高等学校)
sakae-s@kanagawasohgoh-h.ed.jp
& 熊澤 孝昭
(関東学院大学)
takakuma@mwa.biglobe.ne.jp
ASTE第138回例会 2005年11月12日

文献研究
Beliefとは何か
 人の行動は、その裏に行動者の意志あるいは考えがある。無意識にその意志・考えに従って行動している場合が多い。学習者のbeliefは、教室における生徒の学習へのstrategy、motivationなどに、教師の場合は教え方に影響を与えるということで注目をされてきている。学習者のbeliefを測るinventoryを開発したHorwitzはbeliefsを特に定義していないが、渡辺(1990)は、「言語学習の様々な側面・次元について知っていること・信じていること」であると定義している。岡崎(1996)は「確信」と訳した。片桐(2005)は、日本語論文では、言語学習観、信念、信条、確信、ビリーフなどと訳されているが、ビリーフを用いるとし、学習者のビリーフとは、「言語学習を管理する学習のメタ認知的な支えであり、学習ストラテジーにも影響を与える」としている。学習者のビリーフとは、「学習者が、どのように言語を学習するかという想定である」(Chawhan & Oliver, 2000)、あるいは、Bernat and Gvozdenko(2005)が指摘したように、学習に関する"個人の神話(personal myths)"かもしれない。Wenden(1999)はmetacognitive knowledgeは、"a system of related ideas, some accepted without questions and other validated by their experience"(p. 436)としているが、beliefについては、 metacognitive knowledgeとは違うと述べている。その理由として、beliefはvalue-related の傾向があり、knowledgeよりも定着度が強いとしている。その他のbeliefの定義では、「隠れた理論(implicit theories)」(Clark, 1988), 「小さな理論(mini-theories)」(Hosenfeld, 1978),「学習の概念(conceptions of learning)」(Benson & Lor, 1999)など様々である。本稿では、beliefs about learning を「学習観」、beliefを「ビリーフ」と表記することにする。

ビリーフ研究の必要性
 Wenden(2001)は、外国語学習者のビリーフについてはneglected variableと述べている。Pajares(1992)は、"the earlier a beliefs is incorporated into the belief structure, the more difficult it is to alter, for these beliefs subsequently affect perception and strongly influence the processing of information. It is for this reason that newly acquired beliefs are most vulnerable" (p.317)と主張している。学習観は小学校や中学校(Chin & Brewer, 1993; Paris & Byrnes, 1989), や 青年期の初期(Cantwell, 1988; Schommer, 1993), あるいは大学に入る前までに(Weinstein, 1989)構築されるとある。高校までにはある程度のビリーフが固まっていると考えられる。ビリーフが存在する時間が長いほど変えることが難しいことを考えると、高校生レベルでのビリーフの確認と再編成が必要であろう。小学校に英語教育が完全に導入されると、中学校レベルでのビリーフの調査とその修正が必要になってくると考えられる。学習者のビリーフの研究が必要であるのにはいくつかの理由があげられる。ビリーフとは、メタ認知に属し、考えの中に「信じているもの」「こだわっているもの」として持っているものである。質問をされて自覚しているものとしてビリーフが出てくる場合もあるが、多くの場合は、表面には出てこない(加藤・山岡、2000)。しかしながら、学習者は、自らの内部に存在するこのビリーフに従って行動をし、学習のストラテジーを組み立てていく。例えば、「外国語の学習には文法を知ることが重要である」と信じている学習者は、自分の学習を、文法学習を中心に組み立てていくであろうし、逆に、文法を含まない授業に対してはネガティブな評価をすることになると想定される。従って、学習者のビリーフを知ることは、教える側にとってシラバスを作りあげる上でも重要である。Wenden(1987)の研究では、インタビュー調査の分析から、学習者が言語学習についてビリーフを持っていること、そのビリーフに従った行動をしていることを指摘している。
 ビリーフが学習者のメタ認知的な支えであると考えると、それを変えることによって、学習者のストラテジーが変化すると想定される。学習者がどのようなビリーフを持っているかを知ることにより、学習者のストラテジーが想定できる。つまり、間違ったストラテジーを実践している学習者は、誤ったビリーフを信じていることになる。学習者が、より効果的な学習をすすめ、よい結果を出すためには、ビリーフを変えるような働きかけが必要となってくる。教師の側から見ると、そうした学習者のビリーフを知ることが授業運営の役に立ってくる。橋本(1993)は、学習に悪影響を及ぼすビリーフを修正できる可能性があり、それが学習ストラテジーに影響を与えうると述べている。Nishioka(2002)は、高校生対象のビリーフの研究の結果を見て"Awareness of the beliefs that my students bring to the classroom can help me to become not only more realistic setting goals but also to provide more thoughtful guidance for my students"(p. 22)と述べている。ビリーフ研究の結果を教師にフィードバックすることによって、その教師が自覚していなかった自身の特徴・傾向に対する意識が高められる点で、教師教育に寄与する(加藤・山岡、2000)ことへの指摘もある。これと同様のことが、学習者のビリーフ研究にも言える。つまり、学習者は、フィードバックをもらうことで、自らの学習への意識を確認し、学習ストラテジーを立て直すことに役立つと思われる。学習者のビリーフの修正をおこなっても、それが直接的にいい結果に繋がるのではなく、修正したことでポジティブ思考が高まり、motivationが高まることにより、結果的にはいい結果を生むと考えられる。ビリーフの研究の重要性が言われているものの、ビリーフの研究が十分にされていない理由の一つに、「それをどう対処していいのかわからない」ことがあげられる。ビリーフを変えるという事に対しても、倫理的にいいのかという問いかけもあり、どのようにビリーフを変えていけるのかがわからないということであろう。学習者のビリーフを修正するというよりも、教師は、様々な学習の形を示すことで、学習者が多様な学習経験から自らに合った学習方法を選べればいいのではないだろうか。

ビリーフ研究の手段(BALLIなど)とその改訂
 ビリーフを探る方法としては、インタビュー調査、質問紙による調査などがある。質問紙は、生徒にとっても自己の学習観を確認できる手段であり、質問紙に答えることで学習観を考えることになり、結果的には早く、効率のいい学習者になる手助けをすることを期待できる。質問紙の有効性については、Fox (1993)のteaching assistantsに対する研究の結果として、「TA自身がもっている言語に対する認識を気づかせるためにトレーニングの初め質問紙に答えさせることにより、TAは自分自身の言語学習歴を振り返り、生徒達の質問をどのように扱うかを考える機会となる」と述べている。インンタビューでは、面と向かい話をするため、本当のことを話すかどうか、つまり、相手に好印象をもたれたいために、相手が望むような回答をしてしまうことも考えられる。ビリーフ研究で、もっとも頻繁に使用されている質問紙は、Horwitz(1988)が作ったBALLI(The Beliefs About Language Learning Inventory)である。Horwitzは、外国語およびESLを担当している教師に外国語学習のプロトコルを取り、それを基に、5つのカテゴリーで34項目の質問を作成した。5つのカテゴリーは、_difficulty of language learning,_foreign language aptitude, _the nature of language learning,_learning and communication strategies,_motivations and expectations である。BALLIは、日本語を外国人に学習させる場で多く使われている。Horwitz が、これを作った動機は、アメリカの大学にいる外国人の英語学習への意識を知ることにあったことを考えれば、日本語を外国語として学習する学生に対するBALLI使用はcontextが似ていることから納得がいく。しかしながら、学習者のcontextは多様化しており、まして日本の中でアンケートを実施するのには、内容が合わない場合も出てくる。そこで、Horwitzも示唆しているように項目を再考し、改訂する必要性がある。小玉・古川(2000)は、質問紙をつかった調査は、実施が容易であり、多くの被験者に同時に調査が可能であるという利点を指摘しながらも、問題点として2点あげている。第1は、回答者が調査項目を読みとる際に作成者の意図と違う解釈をする可能性があることである。これに関しては、第1回目の研究(Suzuki & Wada, 2004)では、BALLIの改訂版を作成する過程で、misfit項目について被験者から無作為に抽出してインタビューをおこない、質問項目を理解しているか確認し、質問の削除、改訂をおこなった。第2の懸念として、質問紙による調査に対して被験者が正直に回答するとは限らない点を指摘している。これは、インタビューによる調査についても同様のことが言える。読み手・聞き手がいる限りはこうしたバイアスは完全になくすことは不可能である。岩井・岩澤(2004)は、BALLIについては、回答の不安定さや不確実性が指摘されているものの、「先行調査の結果を見る限りでは、ある集団のビリーフの傾向を調べる装置としては十分に機能していると思われる」と述べている。

BALLIを使った英語学習者の研究
 Horwitzの作成したBALLIによる研究の結果は前に記した。Sakui & Gaies(1999)は、日本人の大学生を対象に、Horwitzの作成したBALLIを日本人学習者向けに質問内容などを改訂し、調査をおこなった。因子分析の結果、でてきた因子は、_Contemporary Orientation,_Traditional Orientation,_Quality and Sufficiency of Classroom Instruction,_FL Aptitude and Difficultyであった。
 日本の高校生を対象とした研究では、次の3研究について述べたい。Nishioka(2002)は、教育困難校と言われる高校の生徒184人の英語学習への意識と、4人の教師の意識をBALLIを使い調査した。教育困難校の生徒の学習へのビリーフは何か、それらは進学校の生徒のものとどう違うか、生徒のビリーフと教師のビリーフはどう違うか、1学期で生徒のビリーフは変化するのか、に焦点をあてた。その結果、2つのことが顕著であった。1つは、「生徒は英語学習について絶望的であった」ことであり、もう1つは、「生徒は教師の影響を強く受けている」ということであった。しかしながら、進学校の生徒のビリーフと比較して、西岡は自分が考えていた生徒への考えと違った結果が出たと書いている。英語学習には失望しつつも、生徒の3分の_の生徒が、英語ができれば将来、仕事に就く際に有利になると考えており、4割の生徒は英語が話せればそれを使うチャンスが増えると考えていた。これはNishiokaが考えていたことと逆の結果であり、"My misconceptions are reinforced through everyday experience in classroom"(p. 21)と述べている。そして、"my beliefs about the students may have been skewed."(p. 21)と結んでいる。進学校との比較では、進学校の生徒は、英語を受験手段であると考えており、かれらの英語学習への動機づけは、instrumental motivation(受験・能力試験などを目指した学習動機)であり、Nishiokaの生徒の動機づけはintegrative motivation(学習している言語での交流を目指した学習)であり、Dornyei(1994)は、初級の学習者には、integrative motivationの方が有効であると主張しているが、Nishiokaのlow proficiencyの生徒には逆のことが言えると述べている。Oda(2004)は、中・高一貫高の生徒約1700人にBALLIを使って調査をおこなった。結果として、生徒の英語学習への動機は実用的なことに限られており、外国文化・人に興味はそれほど示さなかった。しかしながら、コミュニカティブな教え方に関してはポジティブな考えを持っていることがわかった。Odaは、「生徒は、学習に対するビリーフを持って授業に来ることを心に留め、ビリーフは変えることが難しいが、教師が生徒のビリーフを"adjust or correct"(p.86)ことはできるだろう」と結んでいる。鈴木(2006)は、日本人の高校生向けに改訂版BALLI(56項目)を作成し、その信頼性と妥当性を検証することと、日本人の高校生の英語学習に関する学習観を探ることを目的とし、1251名の高校生を対象に調査をおこなった。結果、探索的因子分析により、5つの因子を抽出した。第一因子は、自己の英語力への満足度(Satisfaction for Own Proficiency)、第二因子は、教師の授業内使用言語(Teachers' Use of Language in Class)、第三因子は、教育に対する満足度(Satisfaction for the Education)、第四因子は、現代的志向(Contemporary Orientation)、第五因子は、従来型学習法への志向(Traditional Orientation)であった。記述統計では、高校生が、自己の英語力に満足していないこと、英語学習を学校以外でも学習したいという結果が出た。

本研究の目的
 本研究の目的は以下の2点である。
(1)日本人の高校生向けの改訂版BALLIの信頼性・妥当性を検証すること。
(2)日本人の高校生の英語学習に関する学習観の傾向を探ること。

方法
 参加者は、関東の高校生1251名(私立1校、公立5校)である。質問紙は、56項目を含む改訂版BALLI(Suzuki & Wada, 2004)である。データ分析の手順として、まず、EXCELを使い、欠乏値と4件法のスケール上にない1~4以外の箇所に記入したケースは削除した。次に、SPSSを使い、平均、標準偏差、歪度、尖度を含む記述統計の結果から標準分布をなしていない項目をデータ変換した。また、Z得点などを使い、ある値を超えたケースははずれ値とみなし、データから削除した。よって分析に用いられたサンプル数は1143名となった。次に構造方程式モデル(以降SEM)のモデル作成過程について述べる。本研究の目的は日本人高校生にとって信頼性と妥当性が高い質問紙を開発するということで、鈴木(2006)が行った探索的因子分析の結果をもとに確認的因子分析モデルを作成する。探索的と確認的因子分析の違いだが、探索的因子分析は端的に従来型の因子分析と考えてもいい。この手法は質問紙の項目から因子を抽出するのが目的で、因子数や構想概念が定かではなく、質問紙に潜在する因子数と因子負荷などを探索するために用いられる。確認的因子分析はSEMのモデルの一つで、主に探索的因子分析で得た結果と同じ結果になるかを確認するために用いられる。本研究では3つの先行研究(Horwitz, 1987; Sakui & Gaies, 2001; 鈴木、2006)にある結果がEFL高校生のデータに合っているかを検証するため確認的因子分析を用いることとする。まず、Horwitz(1987)がESL学習者対象に開発したBALLIのオリジナル版にあるセクションを下位尺度とみなし、Horwitzが仮定した確認的因子モデルを作成した。同様に、Sakui and Gaies(2001)が改訂し、日本人大学生に実施した探索的因子分析の結果をもとに確認的因子分析モデルを作成した。そして、どのモデルが最も日本人高校生から収集したデータに合っているかを比較検証した。なお、SEMの分析にはAMOSを用い、母数を推定するため、最小2乗法を用いた。母数を推定するというのは、モデルから求めた分散と共分散と、データから得られる分散と共分散にできるだけフィットするように、母数を合わせることを指す(涌井、2003)。

結果
 表1は全56項目の記述統計を記す。この結果から参加者がもっているおよその学習観の傾向を理解することができる。平均値が顕著に低い項目は4、20、23、44、45、46、47で、自己の英語力に満足していないことと、さらに英語を学校以外の環境でも学習したいという結果がでた。逆に平均値が3を上回る項目は1、2、8、12、14、18、24、27、31、39、55で、特定の英語学習法や英語が話せる利点などを問う項目内容である。標準分布から意見が分かれた項目をみると、36と43の値が大きい。英語をすればするほど好きになると思う学生と嫌いになる学生とではっきりと分かれるようだ。英語学習の目的は様々で英語を受験のため学んでいる学生もいれば、そうでない学生もいるらしいことが推測される。

表1 記述統計

 
N  
M  
SD

1 子どもの方が、大人より英語を習得するのが容易である。 1143 3.05 0.64
2 英会話の授業は楽しくあるべきだと思う。 1143 3.52 0.55
3 英語を上手に読み書きできるようになるには、学校の英語の授業だけで充分である。
 
1143 2.03 0.54
4 将来、私は英語をとても上手に話せるようになると思う。 1143 2.01 0.70
5 英語を話すために、英語圏の国々について知ることは必要だと思う。 1143 3.02 0.60
6 もし英語でわからない単語があったら、意味を自分で考えてみる。 1143 2.81 0.67
7 もし自分で英語を毎日1時間ずつ勉強するとしたら、5年で英語が流暢になると思う。
 
1143 2.45 0.73
8 英語を習得する上で、繰り返したり、練習をたくさんすることは重要なことである。
1143 3.51 0.54
9 他の日本人の学生のまえで英語を話すのは恥ずかしい。 1143 2.83 0.76
10 もしはじめの段階で、間違いが許されたら、その間違いを後で直すことは、難しいと思う。
1143 2.65 0.70
11 英語を習得するということは、文法をたくさん学ぶことである。 1143 2.49 0.68
12 テープを聴いたり、英語のテレビを見ることは、英語を学習する上でとても大事なことである。
 
1143 3.32 0.58
13 女子の方が男子より英語を習得するのが上手である。 1143 2.05 0.67
14 英語がとても上手に話せるようになったら、英語を使う機会が数多くあると思う。
 
1143 3.08 0.74
15 英語を話す方が、聞いて理解するより易しいと思う。 1143 2.49 0.77
16 英語の学習は、学校のほかの科目を勉強することと異なると思う。 1143 2.49 0.66
17 英語を習得するということは、日本語から英語に翻訳するということである。 1143 2.23 0.62
18 英語を上手に話せるようになったら、将来いい仕事をみつけることに結びつくと思う。
 
1143 3.06 0.74
19 英語を読み書きすることの方が、話したり聞いて理解することより、易しいと思う。
 
1143 2.56 0.73
20 数学や科学が得意な人は、英語を習得するのが上手である。 1143 1.91 0.53
21 日本人は、英語を話すことが大事なことであると思っている。 1143 2.73 0.76
22 外国語を話せる人は、頭がよいと思う。 1143 2.71 0.78
23 英語を上手に話せたり聞けたりするようになるには、学校の英語だけで充分である。
 
1143 1.85 0.58
24 習得するのに簡単な言語と難しい言語があると思う。 1143 3.13 0.55
25 外国人の先生から英語を習ってのみ英語が上手に話せるようになる。 1143 2.11 0.58
26 英語を習得する才能をもっている人がいると思う。 1143 2.66 0.75
27 英語を話したり聞いたりすることのほうが、読み書きより役に立つと思う。 1143 3.08 0.67
28 クラスメートと英語を話すことで英語が上達すると思う。 1143 2.62 0.65
29 英語を充分勉強しないから、間違えるのだと思う。 1143 2.80
0.70
30 英語で話すとき、まず日本語でどういうかを考えてから英語に訳す。 1143 2.93 0.65
31 教えられたことを忘れてしまうことがあることは普通だと思う。 1143 3.24 0.56
32 自分の間違いを、全部先生になおしてほしいと思う。 1143 2.46 0.71
33 英語を話す人たちコミュニケーションをするのに役立つから、英語を勉強している。 1143 2.76 0.68
34 英語を理解するにはまず、日本語に訳さなくてはならない。 1143 2.72 0.65
35 すでに外国語を話せる人にとっては、別の言語を習得するのは易しいと思う。 1143 2.25 0.70
36 英語を勉強すればするほど、楽しくなってきている。 1143 2.57 0.84
37 同じ年頃の外国人が英語を話しているのが聞こえたら、英会話の練習をするために、その人のところに行って話しかけたい。
 
1143 2.23 0.79
38 私は今の英語教育に満足している。 1143 2.22 0.69
39 正しく話せるようになったら、英語で話してもいいと思う。 1143 3.04 0.73
40 外国人の先生は日本語を使える方がいいと思う。 1143 2.90 0.74
41 英語の授業で、日本人の先生は日本語で説明してくれる方がいい。 1143 2.91 0.69
42 英語の授業で、外国人の先生も日本語で説明してくれる方がいい。 1143 2.47 0.75
43 私は受験のために英語の勉強をしている。 1143 2.48 0.80
44 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のスピーキングの上達度に満足している。
 
1143 1.80 0.58
45 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のリスニングの上達度に満足している。
 
1143 1.97 0.67
46 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のライティングの上達度に満足している。
 
1143 1.94 0.64
47 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のリーディングの上達度に満足している。
 
1143 2.01 0.66
48 英語の意味を理解するためには、和訳を通じてというよりも、直接実物や映像を見たり、状況や文の前後関係から学んだ方がいい。 1143 2.92 0.58
49 英語の題材は日常生活に関連している方がいい。 1143 3.11 0.55
50 新しい言葉や表現は、最初目からではなく耳から学ぶべきである。 1143 2.87 0.66
51 生徒同士の英語のやり取りよりも、先生と生徒とのやり取りの方が効果的である。
 
1143 2.59 0.65
52 文法の授業は、先生の詳しい説明よりも、生徒に考えさせて規則を見つけさせるほう効果的である。
 
1143 2.34 0.64
53 英語で話す時、先生は特にゆっくり話すより、普通のスピードの方が生徒の勉強になる。
 
1143 2.54 0.67
54 先生は、指導計画にそって授業を進めるべきである。 1143 2.29 0.63
55 英語の言葉や文法を習いながら自分の考えを表現することは、英語を習得するのにとてもいい方法である。
 
1143 3.03 0.53
56 Eメールやインターネットを使った授業は、英語の勉強や異文化交流に役立つ。 1143 2.98 0.65

注 N=参加者数 M=平均値 SD=標準偏差

 図1はHorwitzが開発したBALLIの下位尺度をもとに構成した確認的因子モデルである。まず、モデルの説明だが、モデル中の楕円は潜在変数を表し、四角は観測変数を表す。2方向に矢印がある線は潜在変数間の相関関係を表し、潜在変数から観測変数に引かれている矢印がある線は単方向の因果関係を表すパス線である。サイズが小さい_は観測変数に内在する誤差変数である。Horwitzが開発したBALLIはDifficulty of Learning Language, Foreign Language Aptitude, Nature of Learning Language, Learning and Communication Strategies, Motivation and Expectationsの5セクションから成り、それぞれを潜在変数とした。Difficulty of Learning Languageの潜在変数を構成するのは項目4,7,15,19,24で、パス係数はそれぞれ.35, .31, .21, .18, .24となった。パス係数は因子パターンであり、通常.30以上の項目をよしとし解釈するが、項目4, 7以外は全部.30以下で因子パターンが低く、その潜在変数との因果関係の度合いが低い。同様に他の潜在変数をみていくと、Motivation and Expectationsの潜在変数以外のものにはパス係数が低い項目がありその潜在変数にそぐわないことから、異なった構想概念を測定している項目があると思われる。このモデルで潜在変数間の相関係数が高いのは、Learning and Communication StrategiesとMotivation and Expectation間の.88で、2つの潜在変数はほぼ同様な構想概念を測定していることとなる。Difficulty of Learning LanguageとLearning and Communication Strategies間も相関係数が.87で高い。

図1 Horwitz確認的因子分析モデル
Sakui and Gaies(2001)が探索的因子分析を行った結果、Contemporary Orientation, Traditional Orientation, Quality and Sufficiency of Classroom Instruction, Foreign Language Aptitude and Difficultyの4因子抽出された。図2にあるモデルではそれら4因子を潜在変数とし、それぞれの因子に負荷した項目を観測変数とした。Horwitzモデル中にあるパス係数と比較して、パス係数が高い項目がより多くある。また、Contemporary OrientationとTraditional Orientationの相関係数は-.46となっており、負の関係を示し、訳読や文法学習を含む古典的学習法を重要視していない学習者はコミュニカティブで近代的な学習方法を重要視する傾向にあることがわかる。

図2 Sakui & Gaies確認的因子分析モデル
図3は鈴木(2006)が行った探索的因子分析の結果をもとに作成したモデルである。Contemporary Orientation, Instructor and Instructional Language Preference, Satisfaction for English Education, Success of Students' Own Learning, Traditional Orientationの4つの潜在変数からそれぞれの観測変数に引かれた単方向の矢印すべてのパス係数は.30を越えていて、統計的に有意である。次に潜在変数間の相関関係だが、Instructor and Instructional Language PreferenceとContemporary Orientation、Instructor and Instructional Language PreferenceとTraditional Orientationの相関係数がそれぞれ-.50, .52となり比較的高い数値となった。日本人と外国人の先生は日本語を授業で使うほうがよいと考える学習者は、コミュニカティブで現代的な学習方法には比較的に否定的で、古典的な学習方法に肯定的なのかもしれない。

図3 EFL高校生Beliefs確認的因子分析モデル
表2は3つのモデルの適合度を表す。モデルの適合度とは、モデルとデータの適合の度合いを示す。カイ二乗はサンプルサイズによって結果が左右されるため解釈には注意が必要である。GFI(goodness of fit index)は最もよく報告される指標で、回帰分析でいうR_のようなもので、モデルのデータの説明力の目安となり、1に近くなるほど適合度がよいモデルと判断する。3つのモデルのGFIはそれぞれ.924, .882, .953で、EFL高校生Beliefsモデルが最もよい適合度指標を示した。CFI(comparative fit index)はGFI同様1に近くなるほどよしとされる。CFIはそれぞれ.634, .743, .911となり、唯一.90を超えたのはEFL高校生Beliefsモデルである。RMSEA(root square error of approximation)もGFIとCFI同様モデルの説明力を表すが、メリットとしてはサンプルサイズに影響されないことで、.05以下がよいとされる。3つのモデルのRMSEAはそれぞれ.055, .068, .046となり、唯一.05以下の値を示したのはEFL高校生Beliefsモデルであった。AIC(Akaike information criterion)はモデルの情報量を示し、GFIとCFIと異なり他のモデルの情報量と相対的に比較できる指標で、最も低い指標を示すモデルが最もデータを説明でき情報量があると解釈する。それぞれのモデルのAICは、1103.037, 1785.781, 648.429でEFL高校生Beliefsモデルが最も情報量があるモデルであることがいえる。上記の結果、EFL高校生Beliefsモデルが最もよい適合度指標を示し、情報量をもったモデルであることがわかった。

表2 モデル適合度

 
df  
__  
GFI  
CFI  
RMSEA  
AIC
Horwitzモデル 220 .00 .924 .634 .055 1103.037
Sakui & Gaiesモデル 269 .00 .882 .743 .068 1785.781
EFL高校生Beliefsモデル 160 .00 .953 .911 .046 648.429

注 df=自由度 __=カイ二乗確率 GFI=goodness of fit index CFI=comparative fit index RMSEA=root square error of approximation AIC=Akaike information criterion

表3は3つのモデル中にあるそれぞれの下位尺度の信頼性係数である。クロンバック_係数はよく用いられる内部一貫性信頼性の一種である。信頼性係数は下位尺度が測定していると思われる構想概念と測定する際に生じる誤差との比率を表す。例えばHorwitzモデルのセクション1の係数は.28で、28%は真の値で、残りの72%は誤差となる。3つのモデルで比較的に係数が高い下位尺度は、Sakui & Gaiesモデルではセクション1, 2, 3で、EFL高校生Beliefsモデルでは全セクションともに.50を超え比較的に高い。_係数は下位尺度中にある項目数やその分散などによって左右されるので解釈には注意が必要であるが、EFL高校生Beliefsモデルでは各セクションの項目数は少ないが係数は比較的高い結果となった。

表3 信頼性係数

 
Horwitzモデル  
Sakui & Gaiesモデル  
EFL高校生Beliefsモデル
セクション1 _=.28
項目=4,19,24,7,15
_=.73
項目=4,12,8,37,14,33,18,36,2,5
_=.67
項目=5,12,14,28,33,36,55
セクション2 _=.42
項目=20,26,13,1,22,35,16
_=.61
項目=34,42,41,17,11
_=.57
項目=40,41
セクション3 _=.10
項目=5,11,17
_=.76
項目=38,46,44,47,45,23,3
_=.61
項目=3,23,38
セクション4 _=.24
項目=8,37,39,10
_=.32
項目=20,26,13
_=.84
項目=44,45,46,47
セクション5 _=.56
項目=14,33,18,21
_=.57
項目=11,17,30,34
全体 _=.65
k=23
_=.65
k=25
_=.63
k=20

注 _=クロンバック_係数 k=項目数

結論
今回の調査で、日本人高校生の学習観を測定するための改訂版BALLI(EFL高校生Beliefsモデル)の信頼性と妥当性が検証され、このモデルが日本人高校生の学習観をもっともよく捉えているモデルであることが確認された。生徒の学習観を調査し、教師が生徒の考えていることを結果と比較することにより気づき、日頃生徒と接していて考えていたことの再確認になる。さらに、それと関連して、自らの教え方を振り返り自己評価することにもなる。教え方を変えたり、教材を変えたりすることが考えられる。そうしたことが生徒への刺激となり、生徒が学習ストラテジーを作り上げたり、学習に対するモティベーションがあがったりすることで、語学学習への障害となっているものを取り除くことができるだろう。ただし、質問紙による調査の限界もあることも今後の学習観の研究への課題である。インタビューを組み合わせるなどして、質問紙で拾えなかった生徒の声を集めることで、学習観の複雑な部分(学習観がどのように構築されたか、それがどのような行動に繋がるのかなど)を知ることができるであろう。

参考文献
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後記
 今回提示した改訂版BALLIを用いた結果、EFL高校生Beliefsモデルは、統計的に妥当性・信頼性が示されたモデルである。1200人以上の高校生のデータをもとに作成されたもので、Horwitz等の研究対象とは違う日本の高校生対象モデルとしては現在の高校生の学習観を測るのには適したモデルである。結果的には、高校生はコミュニケーション志向が強いとなったが、それに対し、「読むことだけに興味のある生徒もいる」、あるいは、「本校の生徒は、このモデルに当てはまらない生徒もいる」という質問には次のように答えたい。このモデルを作成した目的は、ある特定の教育機関(学校)の生徒の傾向、あるいは個人の生徒の学習観を探るのではなく、現在の高校生の一般的傾向を探ることである。個人の資質、意向、等を考えるとこのモデルから離れる場合もある。そのギャップに入って来るのが教育であり、教師のビリーフである。例えば、前出の「私は英語を読むことだけで十分である」と考えている生徒に対して、教師がそれを英語教育の視点からよしとするか、あるいは、語学学習とは4技能をバランスよく学習することである、話すことで他の文化圏の人の考え方がわかり視野が広がる、と考えて、別の学習方法(alternative strategies)を提示するか、である。語学学習の目的をinstrumental(手段とした)にするか integrative(交流を目指した)にするかは、教師自身が持っている学習観へのビリーフと関わってくる。21世紀を迎え、世界がグローバル化する中での英語の役割はさらに大きくなっている。日本国内だけでなく広く世界を目指した英語教育を目標にもつならば、1点のみを見つめる学習者ではなく、holisticな視野をもった学習者になるように様々な学習の機会、学習方法を提示するのが教師の役割ではないであろうか。
今回の研究の目的は、日本人の高校生の学習観を測るための指標である妥当性・信頼性のある改訂版BALLIを提示することであり、それは達成された。この改訂版BALLIを使って、各学校、授業などでの実践的な取り組みができることを願っている。
 学習者の意識調査の統計結果に関するアンケートデータを提供してくれた学校の教師に、データをまとめた結果を送り、アンケートをおこなった。

1 学校の特色
「項目5(英語を話すためには、英語圏の国々について知ることが必要である)にほとんどの生徒が賛成していたことは、国際理解教育の成果であり、アンケートを実施した2学年では、2単位必修の「国際」で、カナダへの修学旅行に向けてカナダの地理や文化背景について勉強している。」
「項目8(繰り返したり練習することは重要)、項目12(テープ、英語のテレビを見ることは重要)の数値は高いは、実際、家で触れている時間が少ない。気持ちはあるが勉強できないということが再認識された。何らかの学習方策が必要であろう」「本校は定時制であり、いろいろな問題を抱えたり、十分な学習経験が無い生徒が多く、学校の授業でも精一杯で、それだけで十分という回答が多い(項目3,23)」

2 意外であった結果
「項目55(英語の言葉や文法を習いながら自分の考えを表現することは、英語を習得するいい方法である」が高数値なのは、自分の考えを表現したいと思っていることを再確認した。アウトプットを目指した授業づくりが必要なのであろう」
「項目8(繰り返したり練習することは重要)は反復練習の重要性を生徒は理解しているという結果が出たが、実際に行動にうつしている生徒は少ない。特に音読家庭学習に対する動機づけは難しく、生徒は一度英文を理解してしまえば安心する傾向がある」
「項目40(外国人の先生も日本語を使える方がいい)、41(日本人の先生の日本語での説明)、42(外国人の先生も日本語で説明)は意外であった」

3 詳しく知りたい項目
「項目40(外国人の先生も日本語を使える方がいい),42(外国人の先生も日本語で説明)はほとんど同じ内容の質問であるのに結果が著しく違う理由が知りたい」
「項目36(英語を勉強すればするほど、楽しくなってきている」が、どう楽しくなったのかわかると面白い。本校の課題であるが、どうすればどのようにやる気になるのかがわかると面白い。」

4 参考になった項目
「項目8(繰り返したり練習することは重要)の大切さを生徒も知っていて、これからもそれに沿っていきたい」
「項目51(生徒同志の英語のやりとりよりも、先生と生徒とのやりとりの方が効果的)は、生徒同志の活動に慣れていないのか、慣れても好きではないかがわからないが、なるほどと感じた」
「項目40,41,41に関して、日本語を効果的に使って教えた方が心理的な余裕を生徒が持てると思った」
「項目25(外国人の先生から英語を習ってのみ英語が上手に話せるようになる)。明らかに生徒は日本語によるサポートを必要としており、授業のスタイルを決める際に役立つ。必ずしもイマージョンは効果的ではない。英語と日本語の比率を考える必要性」

謝辞
 今回の研究では、多くの方にお世話になりました。研究データ収集に協力してくださった、鈴木洋子先生、高橋正広先生、高田美喜先生、武田富仁先生、宮本恵理子先生、矢部弘人先生、データ入力に協力してくれた神奈川総合高校の卒業生、永田陽香さん、そして、最後に、本研究に参加いただいた生徒の皆さんに心からお礼を申しあげます。また、ASTEでは先生方から参考になるフィードバックをいただきました。発表の機会をくださった上智大学の吉田研作先生に改めてお礼を申しあげます。


お知らせ

ASTE 2006年度前期予定

第140回例会
タイトル:「中学校及び高等学校外国語科の目標と課題―学習指導要領に照らして」
講師:太田 光春(国立教育政策研究所教育課程調査官・文部科学省教科調査官)
日時:2006年4月22日(土)3時〜5時
場所:上智大学3号館123室

第141回例会
タイトル:「更に進む日本の英語教育」
講師:吉田 研作(上智大学)
日時:2006年5月27日(土)3時〜5時
場所:上智大学2号館508室

第142回例会
講演:「英検各級合格者における英語学習・英語使用状況調査」
講師:柳瀬 和明 (〈財〉日本英語検定協会 制作部顧問)
日時:2006年6月24日(土)3時〜5時
場所:上智大学2号館508室

上智大学の言語学、応用言語学、言語教育関係のホームページ集

1)上智大学のホームページ
http://www.sophia.ac.jp/

2)上智大学大学院応用言語学研究会 CALPS HOME PAGE
上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGE です。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。
http://www.ne.jp/asahi/calps/home/index.htm

3)上智大学外国語学部英語学科 HOME PAGE
英語学科が独自に運営しているホームページ。英語学科同窓会(SELDAA)ホームページへのリンクもあります。
http://www.info.sophia.ac.jp/engffs/index.html

4)上智大学外国語学部言語学副専攻監修 「言語研究のすすめ」
語学の色々な分野を紹介したエッセイ集です。
http://www.info.sophia.ac.jp/fs/fukusen/gengo/gensusu.htm

5)上智大学一般外国語教育センター
http://www.info.sophia.ac.jp/flcenter/

6)上智大学大学院応用言語学研究会
大学院応用言語学研究会のホームページです。院生が調べた論文の要約、そして、研究会で実施した研究報告等が読めます。
http://www.ling.sophia.ac.jp/applied/

7)英語学科のBritto先生が集められた英語学習サイトの宝庫!!
http://pweb.sophia.ac.jp/~britto/weblab-e.html

8)上智大学国際言語情報研究所(SOLIFIC)
http://solific.ling.sophia.ac.jp/

9)吉田研作のHome Page
http://pweb.sophia.ac.jp/~yosida-k

10)応用言語学交流会
首都圏の大学院で外国語教育や言語習得を専攻している大学院生同士の交流会です。
http://members.tripod.co.jp/kouryuukai/

11)NPO小学校英語指導者認定協議会
民間のNPOとして現在全国の小学校で始まっている英語教育の指導者を認定する組織です。
http://www.j-shine.org/

12)Asia TEFL
アジア諸国を中心とした初の国際英語教育学会です。
http://www.asiatefl.org/

13)TESOL International Research Foundation (TIRF)
TEFL関係の優秀な研究(博士論文を含む)に研究資金を提供しています。
http://www.tirfonline.org/

14)TOEFLは2005年から変わります(4技能全てがテストされます)
http://www.ets.org/toefl/index.html


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