Association of Sophian Teachers of English
上智大学英語教員研究会
Newsletter
第52号    2005年3月31日


 目 次

英語,一人勝ちの時代を迎えて今
会長 石川 和弘 清泉女学院中学高等学校

高校生の聞き取り能力に及ぼす外的要因
ASTE第131回例会 2004年10月23日 亀田 利恵子 (東京都立小山台高等学校)

級友からポジティヴなフィードバックで自己受容を高める英語の授業
ASTE第132回例会 2004年11月13日 阿久津 仁史 (文京区立第八)

お知らせ
(ASTE 2005年度前期予定)



英語,一人勝ちの時代を迎えて今

会長 石川 和弘
清泉女学院中学高等学校

 英語教育について様々な問題を抱えながら2005年度が始まりました.社会からの英語教育における期待と要請を強く感じます.英語を教えている以上,生徒あるいは生徒の保護者が英語ができるようになるということを望んでいること,そして教師の方にはそれに応える義務があるというのは自明の事実ですが,社会からもそれが期待されるようになったということなのでしょう.
 この社会からの期待は,生徒のご家庭と学校との関係で契約が実現される筈のことに,直接の契約者ではない第三者が口を挟んできているのだという意見もあるでしょう.しかし,ソ連邦の崩壊とインターネットその他メディアの普及に伴って,地球規模でのコミュニケーションの手段として,英語の重要性が他の言語に比べて著しく高まり,2位をグンと離して英語が「政治的・経済的に最も重要な」言語になっているという事実は素直に認めた方がよいように思えます.事実を記述するという目的のみで Cultural Imperialism という言葉を使えば,まさに英語が世界を席捲していると言えます.
 ローマ時代にラテン語が,少なくともローマ帝国とその周辺地域において共通の言語として広範囲の人々のコミュニケーションを可能にしたように,全世界的に1つの言語が通用することはどこの誰とでも話ができる状況をもたらすという意味で歓迎されるべきことであると感じます.しかし,そのことと同時に,現在存在する英語以外の言語を使う人々の固有の文化はそれぞれに掛け替えのないものであり地球規模での文化の中で決して軽んじてはならないものであるということも明確に認識しておくべきことと思います.
 この文脈で考えると,今まさに英語教育に期待されるものは,自分の母国語とそれと表裏一体となっている文化を守るために,自分が育った文化を適切に発信することができる「英語」の力を養成することだと考えます.新学期を迎え,皆さま多様な校務の合間を縫って,授業の準備をされていると拝察しますが,生徒も社会も急速に変化していく今,こんな視点から指導の目標を立て,内容を構成していかれたらどうでしょうか.
昨年度から Newsletter をなくし HP と例会で皆さまと情報を交換することにいたしましたが,例会では「生のコミュニケーション」を通して本音のやり取りを,HP では価値のある情報を迅速にお伝えするように図っていきたいと考えております.どうぞ例会に足をお運びください.また時々 HP の方もチェックしてください.本当にASTE の責任が大きくなってきたと感じます.


高校生の聞き取り能力に及ぼす外的要因

ASTE第131回例会 2004年10月23日 亀田 利恵子 (東京都立小山台高等学校)

1.調査目的
 英語の文法と語彙はある程度身につき、英文もそれなりに読むことが出来るが、聞き取りを苦手とする高校生は意外に多いようである。これはそれまでに受けてきた様々な刺激の中に要因が見出せるのではないかと思い、本調査を思い立った。中学校での授業だけではなく、生徒を取り巻く状況に注目し、どのような要因が高校生の英語の聞き取りに影響をあたえているかを調べることにした。

2.調査方法
 被験者は都立小山台高校の生徒約270名(帰国子女は除く。また質問項目の中で生徒の解答が明瞭でないものは除いたため、項目により回答者数が違っている。)で、調査実施時は
1年次と2年次(英語の運用能力を計るテストを2回実施したため)だった。全員が公立の中学校を卒業しており、中学時は検定教科書を使い、週に3時間英語の授業を受けていた。高校のカリキュラムでは1年次と2年次はそれぞれ全員が同じ科目を履修している(1年:英語?とOCB、2年:英語?とWriting)。生徒は大部分が大学進学を希望しており、授業への取り組みは概してよい。
 生徒は1年次と2年次の終りに「英語運用能力テスト(A.C.E.)」(英語運用能力評価協会)を受験した。このテストでは、語彙、文法、聞き取り、読解、の4つの分野分かれ、それぞれの結果と総合力がスコアで示される(150, 150, 300, 300で900点満点)。本調査では聞き取り分野(時間は35分。3つのセクションに分かれ、セクション1では絵を見て話を理解する問題、セクション2では図、表、グラフなどをもとに情報を収集する問題、セクション3ではある程度の量の話を理解する問題が出される。)のスコアのみを参考にした。
 2年次にアンケートを実施し、生徒を取り巻く状況について調査した。アンケートの内容については、社会的要因と個人的要因に注目して作成し、中学時の授業、学校外で使用した教材、楽器を弾く経験、英会話を習った経験、海外経験、英語の歌、について尋ねた。結果は上記の運用能力テストのスコアと合わせてANOVAにより統計処理を行った。

3.結果と考察
1)中学時の英語の授業について
 聞き取りについて、量的な時間と質的な内容が影響をあたえているかどうかを尋ねた。量的な時間に関しては、中学での1回の英語の授業の中でテープやCDなどにより英語を聞く時間が大体平均して何分くらいあったかを回答させた。学年ごとに回答させ、時間に差がある場合は平均をとった。結果は大きく分けて5分未満(なしを含む):42名、5-10分:174名、10分以上(最長は20分):29名(計245名)であった。この3つのグループで、聞き取りのスコアに差があるかどうかを分散分析したところ差は見られなかった(F=1.47<3.03, P=0.23(P<0.05) )。
 次に質的な内容について、「教科書のテープやCD」と「教科書以外の内容(内容について聞いたところ、英検や入試問題の聞き取りと英語の歌が多かった)」の聞き取りが授業の中でどのくらいの頻度であったかを尋ねた。前述の聞き取りのスコアとの分散分析の結果、「教科書のテープやCD」(毎回:203名、1,2週間に1,2回程度:49名、めったにない(なしを含む):18名、計270名。F=2.13<3.03, P=0.12(P<0.05) )と、「教科書以外の内容」(毎回:38名、1,2週間に1,2回程度:83名、めったにない(なしを含む):148名、計269名。F=0.39<3.03, P=0.68(P<0.05) )ともに頻度による差は見られなかった。以上の結果から、中学の授業における聞き取りの時間的な量と内容的な質は能力に影響をあたえていなかった。
 次に英語の発話について、量的な時間と質的な内容が聞き取りに影響をあたえているかどうかを調べた。聞き取りと同様に、量的な時間に関して中学での1回の英語の授業で、発話時間が大体平均して何分くらいあったかを学年ごとに回答させ、時間に差がある場合は平均をとった。結果は大きく分けて5分未満(なしを含む):37名、5-10分:170名、10分以上(最長は20分):33名(計240名)であった。この3つのグループで、聞き取りのスコアとの間に差があるかどうかを分散分析したところ差は見られなかった(F=2.03<3.03, P=0.13(P<0.05) )。
 次に質的な内容について、「教科書の内容をリピートする」、「ゲームをする」、「会話をする」、「英語で挨拶をする」、「英語でスピーチを行う」ということが授業の中でどのくらいの頻度で行われたかを尋ねた。この頻度の違いにより聞き取りに影響があるかどうかを分散分析で見てみたところ、「教科書の内容をリピートする」(毎回:217名、1,2週間に1,2回程度:29名、めったにない(なしを含む):16名、計262名。F=2.57<3.03, P=0.21(P<0.05) )、「ゲームをする」(毎回:22名、1,2週間に1,2回程度:142名、めったにない(なしを含む):98名、計262名。F=0.026<3.03, P=0.97(P<0.05) )、「会話をする」(毎回:15名、1,2週間に1,2回程度:80名、めったにない(なしを含む):164名、計259名。F=1.02<3.03, P=0.36(P<0.05) )と、この3つの質的内容は影響を及ぼしていなかった。ただし「英語で挨拶をする」(毎回:191名、1,2週間に1,2回程度:23名、めったにない(なしを含む):51名、計262名。F=2.84<3.03, P=0.059997(P<0.05) )と「英語でスピーチを行う」(毎回:22名、1,2週間に1,2回程度:172名、めったにない(なしを含む):61名、計255名。F=2.70<3.03, P=0.069(P<0.05) )では傾向があることがわかった。
 この質的内容に関して、さらに詳しく尋ねたところ、「ゲームをする」の内容については、ビンゴや伝言ゲームなどを通じて、単語やきまったフレーズを繰り返すものが多かった。「会話をする」について、会話の内容はペアワークやグループワークでのパターンプラクテイスがほとんどで、自分の考えを自由に述べるという活動を経験している者はごく少数であった。中学校のレベルで自分の考えを英語で自由に話すということは、かなり難しいように思われる。一方「英語で挨拶をする」については、挨拶は授業の始めと最後に行われており、単に同じ挨拶の言葉を交わすだけではなく、同時に簡単な質問(例えばモWhat time is it now?モ, モWhat kind of TV program did you watch last night?モなど)を先生から数名の生徒を指名しながら毎回していることが多かった。「英語でスピーチを行う」では、毎回順番に1人もしくは数名の生徒が、何かのトピックについて他の生徒たちの前で1,2分スピーチを行う形式や、また夏休みや行事の後の数時間に、集中して全員に順番にスピーチを行わせる形式があった。「教科書のリピート」「ゲーム」及び「会話」では、ある程度決まった内容を発話しているのに対し、「挨拶」と「スピーチ」では新たな内容を聞いて理解したり、また考えて発話をする活動が含まれる点で違いがあるように思われる。
2)学校外で使用した教材と楽器を弾く経験について
 「学校外で使用した教材」については、大体週に1回以上、半年以上の期間にわたって使用した場合に限定した。具体的に使用したものの内容は、教材用の幼児用ビデオ、ヒアリング用(受験用など)のテープ、ラジオ講座「基礎英語」などであった。使用した者54名としていない者218名(計272名)に分けてt検定を行い、この2つのグループの間で差があるかどうかを見てみたところ、t=0.22, p=0.41(p<0.05)で差は見られなかった。これは使用した教材の種類と使い方によるところも大きいと思われる。内容の良い教材や放送は多く存在するだろうが、生徒の回答によると継続してある教材を使い続けたという者は案外と少なかった。例えば、NHKの「基礎英語」をずっと聞き続けた生徒は本校ではごく少数であった。聞かなかった理由としては「朝は部活の朝練、夕方は部活と塾のために時間が合わなかった」という答えが多く見られた。生徒の多忙さや日常生活時間との関係もあり、教材自体の質とはまた別な問題があるように思われた。
 「楽器を弾く経験」が英語の聞き取りに影響しているかどうかを調べてみるために、弾いている経験年数により4グループ(5年以上:52名、3〜5年:38名、1〜3年:52名、それ未満もしくは習ったことがない:130名、計255名)に分け、聞き取りのスコアとの間で分散分析をしてみた。結果はF=1.62<2.64, p=0.18(p<0.05)で差は見られなかった。音楽を聞くことと、言語を聞くことでは、聞き取りでも違いがあるようである。
3)英会話を習った経験について
中学までに英会話を習った経験は聞きとりに影響があるかどうかを見るために、習った年数により3グループ(3年以上:23名、半年〜3年未満:12名、それ以下及びなし:237名、計272名)に分け、聞き取りのスコアとの間で分散分析を行なった。結果はF=8.41>3.03, p=0.00029(p>0.05)で違いがみられた。小さい頃一時的に習っていたり、高校受験のために止めている生徒が多かったが、それでも英会話を習っていたことは聞き取りには何かの影響を残すようである。
4)海外経験について
中学時までの海外経験は聞き取りに影響を及ぼすかどうかを見るために、経験により3つのグループに分けて(親と海外旅行をした:65名、ホームステイプログラムに参加した:22名、海外経験なし:185名、計269名)聞き取りのスコアとの間で分散分析をした。結果はF=3.83>3.03, p=0.02(p>0.05)で差が見られた。さらにSheffe'sによる多重比較をしたところ、海外経験なしとホームステイ経験があるものの間では差が見られた(p=0.02)。ホームステイを経験した生徒に、精神面でどのような影響があったかを尋ねたところ、全員がホームステイを経験して「良かった」と答え、また英語を使うことに対して3分の2以上が「強く必要」であり、半分以上が帰国後の英語学習には「意欲がでた」と答えていた。中学時に1人で海外の家庭に滞在するという経験は、その後の英語学習に対する態度にも大きく影響したようである。
5)英語の歌をうたうことについて
英語の歌を歌詞カードを見ながらうたうことは聞き取りに影響があるかどうかを見るために、頻度により3つのグループに分けて(ほぼ毎日:19名、週に1,2度程度:69名、ほとんどなし及びなし:171名、計259名)聞き取りのスコアと分散分析を行なった。(ここで「ほぼ毎日」と答えた生徒は、バンドを組んでいて、高校入学後に日々グループで洋楽の歌をうたっている者がほとんどであった)結果はF=4.93>3.03, p=0.008(p>0.05)で差が見られ、好んで洋楽の歌をうたうことは、聞き取り面で影響を与えていた。
6)1年後の変化について
1年後の2年次の終わりに、再度「英語運用能力テスト(A.C.E.)」(英語運用能力評価協会)を実施した。前回聞き取りの能力に影響を及ぼすと考えられた要因ついて、今回のテスト結果の聞き取りのスコアとの間で再度分散分析をかけてみた。すると「英語の歌をうたう」という要因においてのみ、差が見られなくなっていた。つまり1年次の終わりでは「英語の歌をうたう」頻度が高いほど聞き取り能力が高かったが、2年次の終わりではこの影響は見られなくなっていた。
この理由として考えられることは、この1年間での生徒の変化である。他のスコアの中で特に伸びたものは読解力であった。2年次の1年間で多読指導を心掛け、教科書以外の読み物をかなり読ませたこともあるかもしれないが、生徒の内容把握の力はこの1年間で伸びたようである。一方、ほぼ毎日「英語の歌をうたう」と答えた生徒たち(バンド演奏の練習をしているようである)に対して、歌をうたっているときに意味を考えるかどうかを尋ねたところ「まずはかっこよくうたえることが大事なので、意味よりも発音が大事」との答えであった。歌を通じて英語の音に慣れ親しむことはできるが、内容把握には必ずしも結びついているとは限らないようである。これは仮説であるが、初級レベルで聞いていることがわかるようになるには、音に注目して聞いたりリピートすることは効果があるようである。しかしある程度以上のレベルで、多くの情報を聞いて内容を理解することができるようになるには、これだけでは不十分なのではないかと思われる。
7)まとめ
 以上の結果から、高校生の英語の聞き取りに影響を及ぼした要因は「中学の授業での挨拶とスピーチ」、「英会話を習った経験」、「ホームステイの経験」、および「英語の歌をうたう」であった。これらに共通していることは、おそらく興味をひく活動と、意味の理解を伴う聞き取りと発話があるということである。この「理解して話す」ということの重要性を認識させ、練習させるためには、英会話やホームステイ経験は効果があり、よい動機付けにもなりうると思われる。


級友からポジティヴなフィードバックで自己受容を高める英語の授業

ASTE第132回例会 2004年11月13日 阿久津 仁史 (文京区立第八)

問題と目的
 近年、中学校の現場では、自己受容感が低く、自らの将来に希望や目的を持てないと思われるような生徒が増加している実感がある。
 自己受容感が高い人は、親や友達からの被受容感・学校適応感・学業成績・学習時間・情緒的安定度・社会適応感・動機付け・社会的活動性・社会的スキル・主観的幸福感等が高く(笠井ら(1989)・酒井ら(2002)・小林(2003)・井上ら(1982)・Kernisら(1995)・Batsonら(1986)・宮本(1992)・Harter(1993)など)、自己受容感が低い人はその逆になり易いという。そのため、学校で生徒達の自己受容感を少しでも高めるアプローチを考える必要がある。
 Rosenberg(1986)らによれば、被受容から自己受容という順序で自己イメージが確立していく。落合(1995)らの言う心理的離乳の時期である中学生は、保護者や教師よりも親しい友人を重視するようになる(佐藤ら(2000))。そのため、友人から認められることによって被受容感が高まり、自己受容感も高まると考えられる。
 しかし、仮に友人に認められたとしても、第2反抗期真っ盛りの中学生がそれを素直に受け止められるとは限らない。そこで、英語を使うことによって、表現する方も受け取る方も素直に行うことができるのではないかと考えた。
 本研究では次の3点を明らかにしたい。
(1)中学生にとっては、日本語と英語のどちらが表現したり受け取ったりし易いか
(2)中学生の自己受容には家族からの被受容感と級友からの被受容感のどちらが影響するか
(3)級友からの英語によるポジティヴなフィードバックは、級友からの被受容感と自己受容感にどのように影響するか

研究1
英語と日本語の表現し易さ・受け取り易さの比較

(1)目的:母語の日本語では自分の感情や考えを表現するのを躊躇するが、直接的な表現を好む英語ではその抵抗感が低くなる(外山, 1973)。そこで、級友とポジティヴなフィードバックをし合う際に、英語と日本語ではどちらが表現し易いかと受け取り易いかを比較検討する。

(2)方法:

  1. 被験者:都内公立A中学校3年生
    52名(男子30名 女子22名)
  2. 時期:2004年5月
  3. 手続き:級友からのポジティヴなフィードバックを英語と日本語で行い、表現のし易さや受け取り易さを調査した。所要時間は50分ずつ。

(3)結果:英語の方が日本語よりも表現し易く、受け取り易いことが分かった。

Table 1英語と日本語の表現し易さと受け取り易さの比較(数)

ほとんどそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う
英語の方が素直に表現できる 4 6 26 16
英語の方が素直に受け取れる 3 2 32 15

研究2
級友からの英語によるポジティヴなフィードバックの自己受容に及ぼす影響

(1)目的:樽木(1990)によれば、級友からのポジティヴなフィードバックが担任を介して中学生に伝えられると、スクール・モラールが有意に向上した。高橋(2001)が明らかにしたように、生徒の自己肯定感が高まったためであろう。本研究では、親友ほどは心理的距離が近くはない級友からの英語によるポジティヴなフィードバックが自己受容に与える影響を検討する。

(2)方法

  1. 被験者:実験群 都内公立A中学校2年生
    38名(男子17名 女子21名) 統制群 都内公立B中学校62名(男子28名 女子34名)
  2. 時期:2004年6月〜11月
  3. 手続き:実験群は、級友と英語によるポジティヴな書き合う授業を週1回受けた。1・2学期各6セッションで、所要時間は1回50分。また、林(1999)のシェアリングの2つの効果(1.)気付きの拡大と(2.)意味づけの強化を狙い、SCTの要素を含んだ振り返りもさせた。そして、事前(5月)と事後(11月)に自己受容尺度と被受容尺度を用いた調査を実施した。統制群は、介入を行わずに、両尺度を用いた調査を実験群と同様に行った。
  4. 測定尺度:大出ら(1988)による自己受容尺度(4件法・18項目・18〜72点に分布)と被受容尺度(4件法・15項目・15〜60点に分布)
Table 2 実験授業の内容

文法事項 フィードバックの内容
現在形 自分の良い所
過去形 級友の良い所
未来形 級友が将来なりそうもの
Will you 〜? 級友への頼み事
You must 〜 級友の悩みを読んでの助言
接続詞when 級友に感心したこと
動名詞 級友と一緒に楽しんだこと
不定詞副詞的用法 級友が学校に来る理由
不定詞形容詞的用法 級友にしてあげられること
10 比較級 級友が自分より優れていること
11 最上級 級友が学級で一番優れていること
12 接続詞that 級友の夢に対して思うこと

(3)結果
 自己受容得点を目的変数、級友からの受容得点と家族からの受容得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ、級友からの受容は自己受容に対して有意な影響力を持つことが明らかになったが、家族からの受容の影響は有意ではなかった(Table 3)。
 5月の時点の実験群と統制群の自己受容得点に有意差はなかった(F(1,98)=0.60, p=.44)。介入効果を調べるために、2(実験群・統制群)×2(5月・11月)の2元配置の分散分析を行ったところ、自己受容に交互作用が認められ、実験群の得点が有意に上昇した(F(1,98)=4.05, p<.05)が、統制群では有意差がなかった。級友からの受容と家族からの受容は交互作用がなく、群別でも有意ではなかった。以上の結果から、実験授業を受けた生徒は受けなかった生徒より、級友からの被受容感が上昇し、それに伴い、自己受容感も上昇したと言えるだろう。

Table 3 自己受容を目的変数とした重回帰分析の結果
説明変数 標準偏回帰係数(β)
級友からの受容 0.44**
家族からの受容 0.18
重相関係数(R) 0.57**
決定係数(R2) 0.32
(n=100)   ** p<.01

Table 4 自己受容得点の推移( )内はSD

統制群n=62 実験群n=38
5月 46.44( 9.56) 44.87(10.27)
11月 45.97( 7.15) 47.18( 6.69)*
p<.05

Table 5 級友からの受容得点の推移

統制群 実験群
5月 42.98(9.17) 44.34(10.92)
11月 44.02(9.85) 46.24( 9.67)

Table 6 家族からの受容得点の推移

統制群 実験群
5月 47.05(10.21) 48.16(10.78)
11月 45.24(12.47) 47.03(11.85)

(4)考察と今後の課題
 実験授業の自己受容への効果の要因は、?普段さほど親しいとは限らない級友全員からポジティヴなフィードバックをもらえたこと、?日本語ではなく英語用いたこと、?口頭ではなく書いて伝え合ったこと、の3点が考えられる。
 一方、ポジティヴなフィードバックを書き合うだけでは、実生活の中で級友から実際に受け入れられたという実感に欠けるため、自己受容感が上がり続けるのは難しいと思われる。そこで、お互いに、短所をリフレーミングするフィードバックをし合ったりして、生徒の現実自己を理想自己に少しでも近づける指導の工夫が今後の課題である。


上智大学の言語学、応用言語学、言語教育関係のホームページ集

1)上智大学のホームページ
http://www.sophia.ac.jp/

2)上智大学大学院応用言語学研究会 CALPS HOME PAGE
上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGE です。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。
http://www.ne.jp/asahi/calps/home/index.htm

3)上智大学外国語学部英語学科 HOME PAGE
英語学科のホームページには英語学科で学べる専門分野についての紹介が各分野担当教員のエッセイの形で紹介されています。
http://www.info.sophia.ac.jp/fs/eigo/eigo.htm

4)上智大学外国語学部言語学副専攻監修 「言語研究のすすめ」
語学の色々な分野を紹介したエッセイ集です。
http://www.info.sophia.ac.jp/fs/fukusen/gengo/gensusu.htm

5)上智大学CALL言語学習ホームページ
http://www.call.sophia.ac.jp/learn/

6)上智大学一般外国語教育センター
http://www.info.sophia.ac.jp/flcenter/index.htm

7)上智大学大学院応用言語学研究会
大学院応用言語学研究会のホームページです。院生が調べた論文の要約、そして、研究会で実施した研究報告等が読めます。
http://www.ling.sophia.ac.jp/applied/

8)英語学科のBritto先生が集められた英語学習サイトの宝庫!!
http://pweb.sophia.ac.jp/~britto/weblab-e.html

9)上智大学国際言語情報研究所(SOLIFIC)
http://solific.ling.sophia.ac.jp/

10)吉田研作のHome Page
http://pweb.sophia.ac.jp/~yosida-k

11)応用言語学交流会
首都圏の大学院で外国語教育や言語習得を専攻している大学院生同士の交流会です。
http://members.tripod.co.jp/kouryuukai/

12)NPO小学校英語指導者認定協議会
民間のNPOとして現在全国の小学校で始まっている英語教育の指導者を認定する組織です。
http://www.j-shine.org/

13)Asia TEFL
アジア諸国を中心とした初の国際英語教育学会です。
http://www.asiatefl.org/

14)TESOL International Research Foundation (TIRF)
TEFL関係の優秀な研究(博士論文を含む)に研究資金を提供しています。
http://www.tirfonline.org/

15)TOEFLは2005年から変わります(4技能全てがテストされます)
http://www.ets.org/toefl/index.html


お知らせ

ASTE 2005年度前期予定

第134回例会
タイトル:これからの日本の英語教育への示唆−SELHiの成果および東アジア英語教育調査から−
講師:吉田研作(上智大学)
日時:2005年4月23日(土)3時〜5時
場所:上智大学9号館252教室

第135回例会
タイトル:教育実習に向けて
中学校の部講師:森井哲也(藤村女子中学・高等学校)
高等学校の部講師:丸橋洋之(埼玉県立坂戸高校)
日時:2005年5月21日(土)3時〜5時
場所:上智大学8号館409教室

第136回例会
タイトル:ネゴシエーションの中で受ける、正答を含むフィードバックの効果
シンポジウム:金子義隆(育英短期大学)
日時:2005年6月18日(土)3時〜5時
場所:上智大学9号館252教室


ASTE 事務局
102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学外国語学部英語学科
吉田研作研究室
TEL: 03-3238-3719
FAX: 03-3238-3910
E-mail: yosida-k@sophia.ac.jp

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