Association of Sophian Teachers of English
上智大学英語教員研究会
Newsletter
第50号    2004年3月31日


 目 次

紙面による最後のご挨拶
ASTE はいつも Open Sea に

会長 石川和弘(清泉女学院中学高等学校)

生徒のcan-do能力と教師の実践活動に関する調査報告
ASTE第125回例会 2003年10月18日 長沼 君主 (清泉女子大学)

教文部科学省第一研究グループからの中間報告ー
中・高教員へのアンケート結果から見える英語教育の現状と課題

ASTE第126回例会 2003年11月29日
長田美佐(埼玉県立川越初雁高等学校)
鈴木 栄(神奈川県立神奈川総合高等学校)

ASTE例会に参加して
「英語教育にたいする理念と教育活動が関連づいていない」という調査結果をうけて

峰松和子(埼玉県立高校)

お知らせ
(ASTE 2004年度前期予定)



紙面による最後のご挨拶

ASTE はいつも Open Sea に
会長 石川和弘(清泉女学院中学高等学校)


 学年末から新学期にかけて,皆さまご多忙の時を過ごされていると拝察します。英語教育の状況も仕事になじんでいればいる程,早く感じるこの頃のような気がします。 われわれの研究会も1981年に発足し,23年目に入りました。その間,上智大学の吉田研作先生をリーダーに,ある意味で時代の先端を走り,その時々の英語教育の状況における最も基本的でクリティカルな問題を取り上げてきたと感じています。そして,根幹に触れる問題を考えるゆえに問題意識も常に先鋭なものであったような気がしています。この ASTE のトレンドにおいては,最近の英語教育のウェイトのシフトは,特別 "a bolt out of the blue" ではありません。そこで,今年度は,「英語教育の新局面」というテーマで研究活動・情報交換を進めていきたいと考えています。
 なお,この Newsletter も今回で50号ということになります。インターネットも普及してきましたので,これを区切りに Newsletter の紙による発行は終了し,HPで ASTE の活動をお知らせすることに致しました。これらの50号の Newsletter 発行にあたり,「発送作業」に今までご協力をいただいた先生方,特に発送作業の計画だけでなく,本当に封筒詰めから切手貼りまで,自らなさった吉田先生に,敬意を表し感謝をしたいと思います。
 例会以外の打ち合わせや発送作業で会員が集まる機会は,あらたまらない「本音の」話のできる場であり,このような機会の数が減ることはとても残念です。また 今後は,HP のみで活動を紹介するようになりますので,皆さまからの積極的なアクセスがなければ, ASTE の動きを知っていただくことができなくなります。今後もたびたび HP ( URL: http://www.bun-eido.co.jp/ASTE.html )にアクセスしていただけますよう,HP の内容も充実させる所存です。
 例会は従来通りですので,是非ご参加ください。また,HP へのアクセスも是非お願いします。新しい形態での皆さまのご参加を心よりお待ちいたします。


生徒のcan-do能力と教師の実践活動に関する調査報告

ASTE第125回例会 2003年10月18日 長沼 君主 (清泉女子大学)

調査目的
 本調査は、文部科学省より提案された「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を受け、第1研究グループ(代表:上智大学・吉田研作教授)の英語教員を対象とした意識調査への協力のため、ベネッセ・コーポレーションにより実施された。上記調査は、現在、英語教育に携わっている教員が、学習指導要領をどのようにとらえ、授業に活かしているかに関する意識調査であるが、その学習過程・成果の現れとして実際の生徒が、教室内あるいは教室外の様々な場面・状況下の言語活動において、どれほど『英語が使える(can-do)』のかに関する調査が行われた。

調査方法
 ベネッセ・コーポレーションの英語コミュニケーション能力テストを、2002年12月前後に受験した高校の1、2年生を中心に、全54学年、32校の9309名を対象として英語can-do調査を行った。また、同時に168名の英語教員にも上記の第1研究グループで実施されたのと同じ意識調査を行った。
 can-do調査に用いられた項目は、学校・教室内で英語を使う場面や活動に関する項目(22項目)、学校外の日常生活で英語を使う場面や活動に関する項目(17項目+2項目:英検・滞在経験)、日本国外(英語圏)で英語を使う場面や活動に関する項目(11項目+1項目:渡航時期)であった。回答は4件法で、それぞれの項目をできる度合いを具体的に記述した選択肢を選択させる形式で行われた。また、学校外・国外の活動に関しては、選択肢の1つは経験の有無を聞くものであった。
 教員の意識調査に関しては、英語教育の理念・目的(24項目)、聞くこと・話すこと(24項目)、書くこと (14項目)、読むこと(15項目)の指導での重点、教え方、内容の扱い方での考慮(13項目)に関する項目を4件法もしくは5件法で、それぞれ賛成や実施の度合い尋ねる形式で行われた。

結果と考察
 英語can-doアンケートの調査項目は、大きく国内での活動と国外での活動とに分かれていたため、それぞれの項目群において、最尤(ML)法、斜交回転(Promax)による因子分析を実施した。
国内活動は、英語でのディスカッションやディベートなど「オーラル授業活動」の因子、電子メールや電話など「授業外活動」の因子、教科書の読解や音読など「教科書的活動」の因子の3因子から、国外活動は、英語圏での学校の授業や日本文化の紹介など「学校内活動」の因子、買い物やホテルでのやりとりなど「学校外活動」の因子の2因子から構成された。因子得点間の相関を表1に示すが、教科書的活動やオーラル授業活動といった因子よりも、授業外活動の因子と国外活動の2つの因子との間の相関が高いことからも因子構成の妥当性が伺える。
それでは次に、英語コミュニケーション能力テストスコア、英語検定試験の合格級、進研模試偏差値(1月実施)といった能力テストによる指標とcan-doスコアとの相関を見てみる(表2)。英語コミュニケーション能力テストでは、国内活動の因子との相関が高く、中でも、教科書的活動との相関が高かった。また、オーラル授業活動や授業外活動ともゆるやかな相関を示しており、やや弱い相関ではあるが、国外活動の2つの因子との相関も見られた。can-doスコアは主観的な能力指標であるが、テストで測定されるような客観的なスコアとも相関があることが確認された。
 英検や進研模試との相関でもおおよそ同様の結果が見られたが、英語コミュニケーション能力テストとの相関と比べると、英検でオーラル授業活動の因子と、進研模試で授業外活動の因子、また、国外活動の2つの因子との相関が低くでていることがわかる。特に実践的な能力に関係のある因子で、コミュニケーション能力テストと相関が強くでていることは、can-doスコアが単なる自信や全般的な学力の指標ではない、実際の能力指標として有効であることを示していると思われる。

表1 can-do項目因子得点間相関


国内1 国内2 国内3 国外1 国外2
国内1 オーラル授業活動 -



国内2 授業外活動 0.65 -


国内3 教科書的活動 0.75 0.59 -

国外1 学校内活動 0.40 0.59 0.35 -
国外2 学校外活動 0.45 0.63 0.41 0.62 -

表2 能力テストとcan-do項目因子得点間相関


英コミ 英検 模試
国内1 オーラル授業活動 0.43 0.24 0.42
国内2 授業外活動 0.36 0.30 0.24
国内3 教科書的活動 0.58 0.43 0.52
国外1 学校内活動 0.25 0.17 -0.06
国外2 学校外活動 0.26 0.20 -0.06

 そこでさらに、国外活動や授業外活動とcan-doスコアとの関係を検証するために海外経験との関連をみてみることにする。便宜上、海外経験1ヶ月未満とそれ以上とに分けた学習者において、国内活動因子と国外活動因子との2元配置分散分析を行った結果を以下に示す。(図1)。
 国内活動における分散分析の結果は交互作用が0.1%で有為であり、海外経験が1ヶ月未満の学習者においては、どの活動でも平均値に差が見られないのに対して、海外経験が1ヶ月以上の学習者においては、因子得点の間に差が見られることがわかる。
 海外経験が1ヶ月以上の学習者においては、全体的に因子得点が高く、can-do項目で高く自己の能力評定をしていたことがわかるが、とりわけ、国内2の授業外活動において顕著であることがわかる。また、次に国内1のオーラル授業活動の因子が高く、最後に国内3の教科書的活動が続いており、日常的なBICS的な活動から、アカデミックなCALP的な活動に移るにしたがって、得点が下がっていることがわかる。
国外活動においても同様に分散分析の結果は、交互作用が0.1%で有為であり、海外経験が1ヶ月未満の学習者でほとんど差が見られなかったのに対し、海外経験が1ヶ月以上の学習者では、国外1の学校内活動の因子の方で得点が高いという結果となった。このことは、旅行的で必要とされるようなcan-do項目を含んで学校外活動の国外2より、学校内活動の国外1の因子で、海外経験の差が大きいことを意味している。いずれにせよ、全体的に海外経験者の方が、国内、国外の活動に関わらず、能力に自信を持っていることがわかる。


図1 海外経験による国内活動(左)および国外活動(右)因子得点の平均の差のグラフ

 それでは、次にこのような学習者の能力と実際に教えている教師の実践活動や信念との関係を見ていきたい。教員に行われた意識調査は、教育理念・目的、コミュニケーション活動、ライティング活動、リーディング活動、教授方法・内容といった5つのカテゴリーに分かれていたため、それぞれで、最尤(ML)法、斜交回転(Promax)による因子分析を実施した。結果、それぞれで適当と判断される因子数が決定され、項目内容をもとに、因子の命名が行われた。
 教育理念や目的に関しては、中学や高校卒業時に求められる英語力の育成を目的とする「学校教育」因子、国際意識を高め、そこで求められる実践的能力の育成を目的とする「国際社会」因子、英語を好きだという気持ちやコミュニケーションへの積極的な態度を高めることを目的とする「意欲・態度」因子、海外旅行や留学などで求められる実践的なコミュニケーション能力の育成を目的とする「実践的能力」因子の4因子に分かれた。
 聞いたり、話したり、といったコミュニケーション活動に関しては、伝えたい内容や自分の考えをまとめさせたり、議論や討論をさせるといったことを重視する「思考力」因子、オーラルにおける基本的な伝達能力に焦点をあてた「伝達能力」因子の2因子に分かれた。
 ライティング活動に関しては、読んだ内容や書きたい内容を整理して、構成や展開を考えさせることを重視する「構成・展開」因子、聞いたことをまとめたり、話す準備として書かせたりするようなことを重視する「オーラル関連」因子と、書き直しなどを含めたライティングのプロセスを重視する「プロセス」因子の3因子に分かれた。
 リーディング活動に関しては、読んだ内容をまとめさせることを重視する「サマリー」因子、未知語の類推や背景知識の活用、パラグラフ構成の理解などを重視した「スキーマ」因子、文法や語句解説や和訳などを通した詳細理解を重視した「文法訳読」因子の3因子に分かれた。
 教授方法や教授内容に関しては、視野を広げ、国際理解を深めることを目指した「国際理解」因子、ネイティブスピーカーとの対話や視聴覚教材などを通して生の英語に触れさせることを目指した「生の英語」因子、中学校時に習得した基礎的な知識や技能の応用を目指した「ベーシック英語」因子の3因子に分かれた。表3にそれぞれの因子得点間の相関を示す。

表3 教師意識・態度因子得点間相関


GOAL1 GOAL2 GOAL3 GOAL4 COM1 COM2
GOAL1 学校教育 -




GOAL2 国際社会 .454 -



GOAL3 意欲・態度 .240 .447 -


GOAL4 実践的能力 .370 .602 .492 -

COM1 思考力 .116 .221 .131 .154 -
COM2 伝達能力 .103 .288 .253 .224 .723 -
WRITE1 構成・展開 .198 .363 .191 .162 .658 .593
WIRTE2 オーラル関連 .119 .255 .186 .170 .719 .647
WRITE3 プロセス .026 .184 .071 .021 .409 .354
READ1 サマリー .093 .251 .139 .118 .591 .564
READ2 スキーマ .176 .276 .276 .157 .405 .514
READ3 文法訳読 -.007 .038 .072 .118 -.038 -.004
TEACH1 国際理解 -.022 .287 .183 .169 .258 .309
TEACH2 生の英語 .045 .218 .183 .017 .591 .599
TEACH3 ベーシック英語 -.032 .102 -.008 .133 .224 .338

表3 教師意識・態度因子得点間相関 (続き)

WRITE1 WIRTE2 WRITE3 READ1 READ2 READ3 TEACH1 TEACH2 TEACH3
WRITE1 -







WIRTE2 .672 -






WRITE3 .616 .478 -





READ1 .622 .596 .439 -




READ2 .495 .378 .322 .640 -



READ3 .115 .025 .132 .232 .247 -


TEACH1 .436 .289 .296 .384 .349 .193 -

TEACH2 .448 .426 .236 .452 .458 -.019 .375 -
TEACH3 .239 .209 .328 .285 .272 .056 .328 .203 -

 表3から気がつくのは、目標や理念の因子と各技能における実際の活動に関する因子との間に高い相関が見られないことである。このことは、目標や理念と実践活動が乖離していることを示唆しているものと思われる。それとは逆に教えている内容や方法に関する因子と各技能における実際の活動に関する因子との間には高い相関が見られた。
具体的には、生の英語との間に比較的に高い相関が見られたわけだが、国際理解やベーシック英語との間にはほとんど見られなかった。つまり、国際理解を高めるといった抽象的な態度でなく、生の英語に触れさせることを重視する態度が実践活動に結びついていると言えるだろう。中でも高い相関を示したのは、コミュニケーション活動に関する2つの因子であり、思考力と伝達能力の双方を同様に重視していることがわかる。ライティングやリーディングの活動に関しては、プロセスライティングと文法訳読の2つの因子と相関が低いことが興味深い。前者はそのような活動と結びつきが低いことを意味しているかもしれないが、活動自体の認知が低いことも影響しているかも知れない。後者はほぼ無相関であったが、生の英語を重視する態度と文法訳読式の授業とは関連がないことを示していると言えるだろう。
では、このような教師の授業に対する意識や態度と学習者の能力との関係はどうであろうか。教師と学習者の双方のデータが存在する学校での、教師と学習者のそれぞれの因子得点の平均をデータとして相関分析を行った。データのスクリーニングにあたっては、学習者の側の回答者数が50人以下の学校は分析の対象から外し、結果として、20校のデータが分析に用いられた。因子得点間相関とその検定結果を表4に示す。

表4 教師意識・態度因子得点と学習者can-do因子得点との相関


国内1 国内2 国内3 国外1 国外2


オーラル 授業外 教科書 学校内 学校外
GOAL1 学校教育 .138 .353 .220 .494* .330
GOAL2 国際社会 .239 .426+ .448* .274 .152
GOAL3 意欲・態度 -.163 .278 -.076 .244 .001
GOAL4 実践的能力 -.174 .318 -.073 .449* .038
COM1 思考力 .484* .515* .267 .283 .294
COM2 伝達能力 .424+ .418+ .161 .379+ .211
WRITE1 構成・展開 .510* .697* .337 .416+ .376
WRITE2 オーラル関連 .311 .374 .191 .352 .364
WRITE3 プロセス .389+ .485* .291 .347 .347
READ1 サマリー .358 .495* .301 .399+ .359
READ2 スキーマ .240 .443+ .054 .292 .242
READ3 文法訳読 -.406+ -.254 -.227 .044 -.120
TEACH1 国際理解 .258 .398+ .219 .263 .118
TEACH2 生の英語 .636* .324 .354 -.081 .288
TEACH3 ベーシック英語 .045 .314 -.099 .438+ .027
* p < .05  + p < .10

 目標や理念との関係においては、国際社会における英語力を目的としている教師の多い学校において、教科書的活動における英語運用能力が高いことがわかる。ただ、有意な傾向ではあったものの、授業外活動とも比較的高い相関を示しており、それと同時に日常的な場面での英語運用能力も育成されている可能性が高いことも伺える。国外の活動では、学校内活動における英語運用能力と、学校教育を通して卒業時に求められる英語力や旅行や留学などで求められる実践的英語力の育成との相関が比較的高かった。ただし、授業外活動や学校外での活動とは結びついていないところを見ると、基本的なコミュニケーション能力を目的とはしながらも、学校という枠組みに収まった能力の育成のみにとどまっている可能性が示唆される。また、意欲や態度の高揚を目的とした場合、それだけでは実際の英語運用能力には結びつかず、表3の因子間相関から分かるように、国際社会や実践的能力を通した、間接的な影響にとどまっていることも考察される。
 その一方で、コミュニケーション活動の実践では、思考力を重視した授業態度が、オーラル授業活動や授業外活動における英語力と結びついていることがわかる。有意な傾向ではあるものの、伝達能力に関する授業とも結びついており、双方のバランスが重要であることが伺える。ライティングやリーディング活動ではどうかというと、展開や構成に焦点をあてたパラグラフライティングや、書き直しなどをさせるプロセスライティング、概要を把握するサマリーリーディングなどと、授業外活動における英語力との関連が深いことが分かった。また、読解におけるスキーマの利用も、有意な傾向ではあるものの関連しているようである。パラグラフライティングやプロセスライティングはオーラルの授業のおける英語力とも相関が高かったが、上記のような活動を重視する教師の多い学校においては、授業外活動やオーラルの活動などを重視した授業も行っているということを示しているのだろう。文法訳読が、オーラル活動における英語力と有意傾向ではあるが、負の相関を示している点も注目に値する。文法訳読は他のリーディング活動とも低い相関を示しており、異なった内容レベルの活動であることが確認された。
 教授方法や教授内容の点からは、国際理解を重視する態度が授業外の活動での英語力に、生の英語がオーラル活動に、ベーシック英語が国外の学校内の活動に影響していることがわかる。これらは目標や理念における国際社会や学校教育の影響と同様の傾向を示しており、一貫した結果となっている。生の英語は表3で見たように、各技能における実践活動とも比較的高い相関を示しており、それがそのまま反映した結果となっている。

まとめ
can-doスコアは、学習者の英語活動に対する「自信」を反映していると考えられるが、今回の分析から、教師の意識や態度とcan-doスコアとの学校単位でのクロス集計において、多くの有意な相関が見られ、学習者が教室におけるオーラル活動や教室外における英語活動で「できる」と感じていることが、教師や学校全体の英語教育に対する姿勢とある程度の相関関係があることが分かった。また、can-doスコアは単なる自信を表しているだけでなく、コミュニケーション能力テストのような客観的な能力指標の結果や、海外経験とも関連があり、能力指標としての妥当性のあることも確認された。
今回の分析では、教師の意識や態度の調査項目とcan-do項目は完全に対応した形ではなかったが、実際にそれぞれのcan-do項目がどのように教室で扱われているかは、興味深いところである。今後、can-doスコアと授業中もしくは授業外での実際のパフォーマンス能力との関係を調べる中で、教室での指導やその際に用いられるタスクの有効性を検証していくことが必要であろう。その際には、can-do項目を有効に活用しながら、ポートフォリオ的評価を取り入れ、生徒の自己の能力に対する意識づけを行い、メタ的な分析能力を養うことも重要となってくると思われる。そのような意識や自信の高さといった認知、情動的側面と、実際のパフォーマンスの関係も探っていく必要があるだろう。


文部科学省第一研究グループからの中間報告ー
中・高教員へのアンケート結果から見える英語教育の現状と課題

ASTE第126回例会 2003年11月29日  長田美佐(埼玉県立川越初雁高等学校)
鈴木 栄(神奈川県立神奈川総合高等学校)

1. はじめに
2002年に文部科学省から発表された 『「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想』をうけて、吉田先生を代表とする文部科学省第一研究グループに与えられた課題は「中学校・高等学校段階で求められる英語力の指標に関する研究」だった。グループでは、様々な外部テストも含めて検討したが、現段階での中学、高校での指標としては、学習指導要領がこれに当たるという前提をたてた。日本の英語教育が学習指導要領によって規定され、これをもとに教科書が編纂され、入試にも反映されることを考えれば、まさに指標である。また、教師の理念や教え方は生徒の英語力に直接の影響を与えるはずであるので、この実際を調査することにより、学習指導要領が英語教育の指標としてどのように機能しているかがわかると考える。
そこで、指導要領をかみ砕いてアンケートの形に作り替え、全国の中学校、高等学校の英語教師にアンケートを実施した(2003年冬実施、全国47都道府県の中学教員395人、高校教員386人)。公式の報告は文部科学省のWeb上で見ていただけるが、今回の発表では、メンバーのうち高校に所属する2名の目から、この結果を報告して、現場で学習要領がどこまで実現可能なのか、そのためにはどのような工夫や改革が必要なのかを考えたい。

2. 研究内容( Research Question )と研究方法
 具体的なリサーチクェスションは以下の通りである。
I  教師は、学習指導要領に記述されている英語教育の目的、理念を理解賛同しているか。
II  教師は、学習指導要領に記述されている教育活動をどの程度授業で実践しているか。
III 教師は、学習指導要領における中学校・高等学校段階で求められる英語力をどのように捉えているか。
IV 教師の理念と実際の教育活動は関連しているか。
V 教師の理念と教育活動は教師によってどのように異なるか。
 アンケートは以下の構成になっている。
(1)基本情報:各教員の年齢、教員歴、研修歴、勤務校の大学受験に対する意識。
(2)英語教育観:学習指導要領の理念の部分。何のための英語教育か。(中高共通・5段階)
(3)教育活動:実際の授業での学習指導要領の内容の実施状況。(中高別・4段階)
(4)自由記述:
アンケートの結果については、因子分析等の統計処理を行い、自由記述の回答も参考に解釈を加えた。

3. アンケート結果と分析
I  教員の理念・英語教育の目的

<高スコア>
・生徒が英語を好きになるように指導することは重要である。
・生徒が英語を使って積極的にコミュニケーションをしたいと思う気持ちを育てるような指導をすることは重要である。
・英語を学ぶことにより、生徒が自らの視野を広げることができるような指導をすることは重要である。
<低スコア>
・英語を実践的に使う能力が必要になるのは、海外に出かけた時だけである。

この結果より、中学校・高校の教員とも、生徒の英語学習への動機づけを高め、人間性を高めることの重要性を認識していることがわかる。また、英語使用の場面を海外のみに限定することなく、国内での使用の必要性も認めている。外国語としての英語(EFL)という環境において、国内での使用場面をどのように設定し、生徒に英語使用の実感を持たせられるか、ひいては動機付けとできるかが、今後課題として取り組みべき所であると考える。

II  教え方・教育活動
(1)中学校

<高スコア>
・文字や符号を識別し、正しく読ませる。
・強制、イントネーション、区切りなど基本的な英語の音声の特徴に慣れ、正しく発音させる。
・文字や符号を識別し、語と語の区切りなどに注意して正しく書かせる。
・物語や説明文などのあらすじや大切な部分を読みとらせる。
・あいさつ、自己紹介、道案内など、特有の表現がよく使われる場面を取り上げた言語活動をさせる。
・自然な口調で話されたり読まれたりする英語を聞いて、具体的な内容や大切な部分を聞き取らせる。
・質問や依頼などを聞いて適切に応じさせる。
・文法事項の扱いについては用語や用法の区別などを理解するだけではなく、実際に使わせている。
(ペアワーク、グループワーク・ネイティブ・スピーカーなどの協力)*
<低スコア>
・聞いたり読んだりしたことについて、問答したり意見を述べ合ったりさせる。
・つなぎ言葉を用いるなどいろいろな工夫をして話が続くように話させる。
・伝言や手紙などで読み手に自分の意向が正しく伝わるように書かせる。
(発音記号、筆記体、コンピューターなどの教育機器の使用)*
*(  )は授業全般で考慮していることに関する項目から、スペースの都合上まとめたもの。

 中学校においては、英語学習の基本的事項に対する正しさを重視し、コミュニケーション活動としては、定型表現や、内容の大まかな理解、文法事項の定着のための活動が中心となり、より発展したコミュニケーション活動には至っていないことがわかる。
(2)高等学校

<ハイスコア>
・語句の解説をする。
・英文和訳をさせる。
・文型・文法の解説をする。
・生徒の実態に応じて、中学校における基礎的な学習事項を整理して教える。
・オーラル・コミュニケーション活動に必要となる基本的な文型や文法事項などについて説明し、理解させる。
・読んだ内容について、日本語で質問に答えさせる。
・リズムやイントネーションなど、英語の音声的な特徴に注意しながら発音を練習させる。
・読んだ内容について、必要な特定情報を読みとらせる。
<低スコア>
・幅広い話題について 話し合ったり、討論したりさせる。
・発表や話し合い、討論などの活動に必要な表現やルールを学習し、活用させる。
・読んだ内容について、書き手の意向を理解し、自分を考え、感想などを英語でまとめさせる。
・聞いた内容について、自分の考えなどを整理して書かせる。
・実際の言語使用場面を反映させた、複数の領域にまたがる総合的な活動を設定して練習を行わせる。

 高校においては、言語形式の解説にかなり重点を置き、いわゆる日本の伝統的な指導法が中心となっていて、話し合う、考えをまとめるといった活動や複数の領域を統合した活動には至っていないことがわかる。また、中学校における基礎的な学習事項を整理して教えるというように、高校だからといって、必ずしも指導する内容が高度にできるわけではなく、基本に戻り、これを重視しなくてはならない現実も見られる。
中学、高校とも理念としては、英語を使う必要性がある、生徒がコミュニケーションをしたいと思うような動機づけが重要、と言いながらも、実際は、コミュニケーション活動よりも、言語形式をより教えているという現実がみられる。

III 学習指導要領を基にした英語教育の捉え方
 アンケート項目を因子分析した結果、英語教育に関する目的・理念、教え方に関して、以下のような潜在的な因子が抽出された。
《目的・理念》
(1)中学校
・学習者全員の英語到達レベル(中学・高校卒業時において全員が到達すべき英語力)
・国際的に通用する伝達能力(最終的に国際的に通用するレベルに到達することを目指す)
・個人レベルでの交流(個人の視野を広げ、個人レベルの活動ができることを目指す)
・コミュニケーションを前提としない英語指導(知識中心の英語力)
(2)高校
・学習者全員の英語到達レベル(中学・高校卒業時において全員が到達すべき英語力)
・国際的に通用する伝達能力(最終的に国際的に通用するレベルに到達することを目指す)
・積極的態度(積極的にコミュニケーションしたいと思わせることを目指す)
・社会的場面で必要な英語力(海外旅行、ホームステイなどでの会話を中心とした英語力)
・読み書く能力(会話のみでなく、読む書く能力、入試を視野に入れた英語力)
《教え方》
(1)中学校
・実践的コミュニケーション活動(実際に使える英語の習得を促進する指導)
・相互の意向を考慮した文字媒体による活動(手紙、伝言などを使った伝達活動)
・教材選定に関する配慮(世界や日本に関して理解や視野を広める教材選定)
・(音声以外の)言語形式の指導(言語活動を行う中での語、文法等の言語形式の指導)
・正しい言語形式の指導(音声面、文字面での正しさ)
・実際の言語使用を行う上で必要な活動(実際言語を使う場面を設定して行う活動)
・内容に留意した聞き取り(内容の聞き取りを重視した活動)
・付加的指導事項(発音記号、筆記体など)
(2)高校
・内容把握を踏まえた上での表現活動(聞いたり読んだりした内容をまとめたり、考えを発表する発展的活動)
・実践的なオーラル活動(音声を重視した、実践的な活動)
・読解重視の活動(内容把握を中心とした精読、速読などの活動)
・英語学習態度の育成(日常から世界へと視野を広げ、英語を使用する意欲を育てる活動)
・英語の言語形式的側面の学習(文型・文法・語句・和訳などの解説)
・基本的学習項目の指導(中学校における基礎的な学習事項)
・高い完成度を目指したライティグ指導(正確で的確な場面に応じた英文を書く活動)

IV 理念と教育活動の関わり
因子間の分析をしたところ、教員の理念と教え方の顕著な相関は見られなかった。つまり、教員の理念が教え方に反映されていないことがわかる。理念としての到達目標を理解しながらも、実際の教育活動では、様々な理由でそれが実施できない背景には、実現するための障害が存在することを示唆している。この問題については、自由記述の分析において後述する。
しかしながら、因子分析の結果、わずかであるが、以下のような関わりが見られた。
(1)中学校
・英語教育の最終的な目的を国際的に通用するレベルに到達させること及び、個人の視野を広げ個人レベルの交流が可能になることと考える教師は、実際に言語を使う場面を設定しての言語活動の指導を行うと同時に、正しい言語形式の指導も重視している。
(2)高校:
・英語教育の最終的な目的を国際的に通用するレベルに到達させることと考える教師は、日常的な話題からグローバルな視点へと広がる考え方を育てる指導(英語学習態度の育成因子)を重視している。
・積極的にコミュニケーションをしたいと思うように指導することを重視する教師は、授業でも実際に英語を使う活動を行い、また上の英語学習態度の育成因子も高い。
・読む書く能力の育成を重視する教師は、読解、文法・文型の解説、高い完成度を目指したライティング活動を重視している。

V 教員間での違い
《理念》
(1)中学校教員
・教員研修を過去5年間で受けた教員の方が受けていない教員よりも、『国際的な場面でのコミュニケーション能力の育成』、『個人の視野を広げ、個人レベルの交流を可能にする』ことや『日常的な場面で使える最低限の英語力を身につけさせる』ことを重視している。
(2)高校教員
・教員歴の長い教員の方が、『国際的に通用するコミュニケーション能力を身につけさせる必要』があると感じている。
・教員研修を過去5年間で受けた教員の方が受けていない教員よりも、『国際的に通用するコミュニケーション能力の必要性』を感じており、『積極的にコミュニケーションをしたいと思うように指導することを重視』している。
・受験を意識している学校に勤務している教員の方が、『英語で読む、書く』ことを意識していると同時に、『国際的に通用するコミュニケーション能力を身につけさせることの必要性』を感じ、『学習者全員の英語到達度』を意識している。
《教え方》
(1)中学校教員
・教員研修を過去5年間で受けた教員は、以下の因子の値が高く、受けていない教員よりも指導要領に沿った教え方をしている。
・相互の意向を考慮した文字媒体による活動  ・実践的コミュニケーションの活動
・内容に留意した聞き取り  ・言語使用場面を設定した活動
・受験に対する意識の高い学校に勤務する教員の方が、教え方において全体的に指導稜々に則した教え方をしている。逆に受験意識の低い学校に勤務している教員の方が、コミュニケーションを前提とした英語指導を行っていない。
(2)高校教員
・受験を意識した高校に勤務している教員の方がそうでない教員よりも、以下の因子が高く、指導要領に沿った教え方をしている。
・基本的学習項目の学習  ・内容把握を踏まえた上での表現活動
・読解重視の活動  ・高い完成度を目指したライティグ活動
・英語の言語形式的側面の学習 ・英語学習態度の育成   ・実践的なオーラル活動

4. 自由記述より(顕著なもの)
(1)中学
《理念・目的》
・実践的コミュニケーション能力の育成に賛成する。(9)
・文化理解や国際的な視野を広げることが大切。(7)
・明確で具体的な目標設定が必要(9)
・日本についての理解や日本語でのコミュニケーション能力が必要。(6)
・小中高大の連携が必要(6)
・中学では興味を持たせることを中心に。(5)
・全員が英語を使える日本人になる必要性はない。(5)
・現在の日本では英語を日常的に使う必要性がない。(5)
《教育活動》
・「聞く」「話す」の活動が不足している。(29)
・「話す」活動よりも「書く」活動が多くなりがち。(11)
・「書く」活動があまりできない。(5)
《指導要領の実現を妨げるもの》
・週3時間(60)
・入試の内容、範囲を終わらせなくてはならない。(45)
・教科書が対応していない・終わらせなくてはならない。(32)
・教員の力不足、多忙(27)
・クラスサイズ(17)
・ALTの数・質・活用法(15)
・生徒の多様性(9)
《アンケートに答えて》
・自分の教授法について振り返ることができた。(48)
・指導要領についての理解が深まった。(11)
・調査結果が行政に有効に生かされることを望む。(15)
(2)高校
《理念・目的》
・学校単位、もしくは個々の生徒のニーズや学力に合わせた目標設定が必要。(27)
・大学入試の影響を受けざるを得ない。(15)
・英語以前に、日本語力・コミュニケーション能力が必要。(13)
・異文化理解・国際的視野・物事の見方や考え方を身につけることに重きを置く。(12)
・指導要領はかなり高度な力を要求している。中学と高校の差が大きい。(8)  
・日本社会の中では英語を使えるようになることの必要性がない。(9)
・英語への興味を持たせることが中心。(6)
・小中高大で一貫したシステム、多様で具体的な指標を望む。(4)
《教育活動》
・まとめる・発表する活動が少ない。(12)
・読む・書くが中心になっている。 (8)
・オーラルコミュニケーションやティームティーチングでは4技能を統合しやすい。(6)
《指導要領の実現を妨げるもの》
・大学入試と指導要領の不一致(26)
・クラスサイズ(21)
・授業時間数・単位数の不足(14)
・教員の指導力・多忙さ(12)
・英語以前の学力低下・学習意欲の低下(10)
・ALT・教育機器の不足(7)
・実践例の不足(5)
《アンケートに答えて》
・自分の教授法について振り返ることができた。(74)
・調査結果が行政に有効に生かされることを望む。(11)
(3)自由記述まとめ
中学、高校とも全体に共通した記述が多い。一方で、中学の均質性に対し、高校の多様性が、それぞれに抱える問題の違いを生んでいる。つまり、中学は義務教育であり、地域ごとに統一された高校入試があり、終了させるべき範囲が明確である。ゆえに、これに追われながら実践的コミュニケーション活動を取り入れるための工夫を重ねている教師の姿が顕著である。3年間の綿密な計画が重要、教室外での指導が必要といった前向きな提案もなされている。一方、高校においては学習者のニーズが学校により異なり、単位数や科目の設定など英語教育の環境も違う。ゆえに学習指導要領よりも、学校や生徒の実情に合わせた目標設定がなされる。だからこそ教師の責任は重く、アンケートに答える過程で、生徒の力を低く見過ぎていたかもしれない、入試という口実に甘えているかもしれないといった気づきも見られた。
自由記述の内容をもとに、学習指導要領にある実践的コミュニケーション能力の向上を目指すための課題として次の5つを挙げる。
・動機づけとして、実践的コミュニケーション能力が正当に評価されるシステム。
・教育環境の整備(授業時間数、教師のゆとりと研修、クラスサイズ、ALT、教育機器)。
・指導法の研究と普及。
・目指すべき具体的な指標(学習指導要領の具体化、小中高大の枠を越えた指標)。
・英語に限らす教育全般で、知識偏重から脱し、思考や発表を重視する。

5. 提言
1)学習指導要領を指標として活用するために、より現場に則した具体的な枠組みを示し、この理解を深めるための研修を設定する。
2)効果的な教員研修システムの構築と、教師の参加機会の保障。  
3)教員の意識改革。 
・実践的コミュニケーション能力とは、聞く話す能力のみでな、読む書く能力も含まれる。
 4技能が結びついてこそ言語習得が促進される。実践的コミュニケーション能力の育成と受験指導はかけ離れたものではなく、平行して行うことで効果が上がる。 
・授業のみでなく、授業外の学習も視野に入れる。
 授業時間数の少ない状況を克服するために、授業の外も学習の場であると考え、計画的にこれを活用する。たとえば授業外の課題としジャーナルやグループでのプロジェクトを与えたり、地域の活動に参加して内容を授業で発表したり、電子メールで海外の生徒とメール交換をしたり、などで、生徒が負担と感じずに積極的に取り組めるような方法が必要である。学習意欲が低いからと家庭学習の課題を与えないのでなく、意欲が生まれる家庭学習を工夫する。
4)今後期待される研究。
・4技能を統合した指導法の開発とその効果の検証。
 例) スピーキング指導でリスニング力が延びるか。
コミュニケーション重視の授業で入試に対応した英語力がつくか。
いかにコミュニケーションの機会を与えるか。
・どのような授業内活動が授業外での言語使用につながるのかの検証。
・高校及び大学入試問題と学習指導要領の内容との関係の検証。
・「指導している」という教師の意識と実際の指導内容の妥当性の検証。
・外部テストの到達目標とその妥当性、学習指導要領との関係の検証。
・日本の英語学習環境に特化し、学校枠を越えた英語力の指標の作成。

6. ASTE例会にて

 以上の発表の後、意見交換を行ったが、その中で印象的だったことを以下にまとめてこの稿を終えたい。
1)EFL環境下で、英語使用場面を増やすにはまずは教師が英語を使う。All English の授業については賛否があるが、少なくとも教師は英語を使う場面を作る必要がある。また、Non-Native同士だからといってコミュニケーション活動の意味がなくなるわけではない。
見える相手との意味のあるコミュニケーション活動を設定する授業づくりをしたい。
2)和文英訳を全面否定することはない。「わかった」という実感を与えるためには有効である。大切なのはこれを目的としないであくまでも手段とすること。高知の訳先渡し方式の例にあるように、ここで終わらずに、他に何をどれだけできるかである。
3)話すのは好き、自己表現は好き。概要はとれる。でも文法や構文などの正確さに欠ける最近の生徒の傾向はどうしたものか。大学に入学してくる生徒の基本的な文法力も低下している。生徒のニーズに合わせて、文法を押さえ正確さも要求する場面をつくる必要があるだろう。やはり要はバランスの問題。また、ディベートではインターアクションが成立するために文法的正しさが必要となる。
4)小学校に英語が導入されようとする今、小・中・高・大での情報交換がますます必要となっている。それぞれ発達段階に合わせて何を目標とするべきだろうか。国際的に通用する力は大学でつければいい?そもそも国際的に通用する力とはどのような力?やっぱり具体的な指標が欲しい。


ASTE例会に参加して

峰松和子(埼玉県立高校)

「英語教育にたいする理念と教育活動が関連づいていない」という調査結果をうけて

はじめに
 アンケート結果の報告が行われた後、吉田先生の提示された疑問。つまり「多くの英語教師はよりコミュニカティブに授業を行いたいという教育理念を持っている。しかも、英語教師自身も英語力がある。それなのに、何故、実際の教育活動ではそれが実践されづらい状況にあるのだろうか?」 これに対しては様々な要因が挙げられると思います。
外的要因と教師自身の内的要因に分けられると思います。外的要因としては、受験・教科書・生徒の英語学習への動機や必要性・教員の多忙さ(教科以外にかかえる仕事量の多さ)・教員の研修時間の確保等)あげれば、外的要因はたくさんあると思います。今回は教師自身の内的要因に焦点をあてて自分なりに考えたことを書いてみたいと思います。
(1) 「思い込み」を捨てよう! --自分自身に対する呪縛からの解放―
 多くの英語教師自身が、主にGrammar-Translation Methodで育ったといっても過言ではないでしょうか?そのような中で、いざ教室でコミュニカティブに授業をやろうと思ってもどうやったらよいのか今ひとつ自信がないのではないでしょうか?オーラルコミュニケーションの授業では英語を使ってやることに自信はあっても、いざ英語I・IIをどうコミュニカティブに料理しようかとなると、今までの自分のやり方では無理だと感じてしまう。ここで、教師自身がはまり込む罠があります。つまり、「どうせ、英語でやったって無理。生徒はわかりっこない。」「日本語なしでどうやってやるの?」「生徒だって英文和訳を求めている」「受験だってあるし、生徒から不満や文句が出る」「生徒だけでなく、親からも苦情がくる」等。教師は常に色々な外的ストレスにさらされています。余計な摩擦を起こすくらいなら、とりあえず無難なやり方で行こうということになる。それだけでなく、やはり、訳読式のほうが力がつくといった考えが根付いているということも原因といえるのではないでしょうか。でも、ちょっとその呪縛から自らを解放してここであえて「英語を使って授業をしてみよう」と提唱させて下さい。
(2) 試しに英語を使って授業をしてみよう!
 私が現在の勤務校に転勤してきたのは4年前です。それ以前は世間でいう学力困難校に勤務していました。そこでは、受験とはいっさい関係なく、又、学年統一テストというものもなく、全て自分の責任に任されて授業をしていました。オーラルA・B・Cと全てがそろい、まさにコミュニカティブ三昧でした。生徒をいかにひきつけてやろうか?とALTと色々な活動を考え出しました。そこでの経験は、例え英語に自信がない生徒でもやり方次第でコミュニカティブな活動を引き出すことができると思えるものでした。(これは又何かの機会に書きたいです。)
 さて、現任校に赴任した時、「ここでは、英語の授業はすべて英語で行っていますので、よろしく」と外国語科の学科長から言われました。「英文は日本語に訳す必要はない、テストで和文英訳は出さない。」これは教師間での合意の上であるということでした。オーラルの授業では英語でほぼやった経験はあったものの、英語IやIIで、しかもあの教科書でどうやってやるのだ?と最初は疑問に思いました。生徒は本当に理解してくれるのだろうか?日本語に訳さない英語の授業っ           て自分で受けたこともないな・・・などと思いました。4月から授業が始まり、自分なりに        試行錯誤をして、自分なりのやり方を少しづつ会得していきました。その経験に基づいてポイントをまとめると以下のことが言えます。

1. 生徒がわかりっこないという思い込みは間違いでした。
2年の普通科の英語IIの授業をしたとき、しばらく英語で授業を続けたのですが、「生徒は本当に内容を理解しているのかな?」とふと不安になり、ヒントとして日本語を少し使いました。するとそのほうが楽なので、どんどん日本語が出てきてしまいました。すると授業が終わった後、ある生徒が近づいてきて「先生、あまり日本語を使わないで下さい」というではありませんか。「みんな理解しているのか不安になり、つい使ってしまったんだけど。」と弁解。すると「1年の時に先生は、ほぼ英語でやりました。私たち慣れているから平気です。なるべく英語を聞きたいし、それを理解したいから、英語で授業してください。」 その時のショックは今でも覚えています。生徒は2年目で、英語で授業をするということに慣れていたし、それを自分達の英語学習にとってプラスであると思える段階に来ていたのです。ところが私は1年目ということもあって、自分の思い込みにとらわれていたのです。そこから、私自身の本格的な試行錯誤が始まりました。彼女はたしかに英語が好きで得意な生徒でした。
授業をする上では、常に40人の生徒がどこまで理解してくれるのかを考えないといけません。ですから、一部がわかる授業ではなく、クラスの大部分の生徒がわかるような授業をどうつくっていくのかが、課題となったのです。

2. 授業での工夫
 ここでまず、感じたのは、「授業を英語で行おう」という理念を実行する中で、教師も変わっていくということです。というか変わらざるをえないということでしょうか。授業を作っていく中で、生徒ばかりではなく教師の英語に対するattitudeも変わるのではないでしょうか?
1) 理解の手助けとなるものを沢山使おう。
複雑な内容なものほど、黒板にたくさん絵を書きながら、それを英語でゆっくり順を追って説明していきます。(へたくそな絵を生徒が笑うのも授業の活性化の一部と思っています。)絵では物足りない時は、ジェスチャーなど自分の顔、手、足を動員。生徒を前に出してアクションさせたりもしました。)「クローン」についてやった時は生物の先生からDNAの模型を借りて説明。教科書の絵なども大きくコピーして、そこに単語を書き込んだりしていきます。英語だけでは説明しきれない時は、このようなVISUAL AIDは授業の活性化という意味でも役に立ちました。
2) Teacher Talkの大切さ--難しい単語や文章をどう理解させるのか?
--生徒の知っている単語や表現をたくさん使って言い換える。

身近な例から提示し、具体的からより抽象的な表現にしていく。例えばある単語があった時、生徒にいうのは「自分の弟や妹に理解できるような言葉を使って表現して説明してみて」と言います。なるべく簡単な英語の単語を使って相手に理解してもらう練習は、教師にとっても非常に大切だと思います。むずかしい表現を簡単な単語を使ったrephraseの練習をするうちに、自然と授業の中でもそれが英語で説明できるようになると思います。このようなteacher talkは英語で授業をする上で大切だし、これは練習次第でできることだと思います。(私の場合は通訳ガイド試験を受けた時、日本文化のあらゆる言葉を英語で説明する練習をしたことで、随分できるようになったと思います。例えば、みたらし団子を外国人に説明するとしたら、どう英語で表現する?など)こののりで、英語の単語も結構、英語で説明できるものだと思います。特に英英辞典をつかってそれをクラス用にアレンジするなど。
3) peer mediation-教師が期待する以上に、生徒は生徒どうしで学びあえる存在である。
特に難解な文章に遭遇した時。まず黒板にそれを書きだし、単語等わかっている部分は
全体で確認しあう。「結局作者はここで何をいわんとしているなか?」ということで、となり同士のペアで考えさせる。私の場合、授業は常にペアで何かをさせている。ペアリーディング、ペアでQ&Aの確認等。授業で一回はペアで手をあげることなど。ということでペアで何かを取組もうという雰囲気を作っておく。すると、辞書を使ったりしながら、一人が「もしかして、ここってこういう意味?」と聞くと、も一人が「私はこう思ったんだけど」などと言いながら、少しづつ解明への道を辿っていく。この会話を聞いていると本当に生徒同士で学びあうことは可能だと感じる。時間を決めて相談させる。そしてペアで答えるのだが、ここは日本語でやっている。(これを英語にできたらいいけれど、時間がすごくかかるのが難です。)一つのペアがたとえ正解をいえなくても、それがヒントとなって、ひらめいた生徒が答えたりと、まるでクラスで一つのパズルを解くように、少しづつ答えが見えてくるから不思議だ。ここで教師はクイズの司会者になったつもりで、ヒントを与えたり、「あ、おしい。後一歩で正解!」などと合いの手を入れる。最後に教師が答えをいうのではなく、同じクラスメートの中から答えが出るということは、生徒のモティベーションを高める上で、刺激があると思う。生徒は、自分一人で答えを出したわけではないが、周りのpeer mediationの中で「言えた!やれた!」という達成感をもてると思う。そうやって少しづつ、自分のやれることが広がっていく。ここでも、生徒はペアでの会話の媒体として日本語を使うが、教師はあくまで日本語を使わなくてすむしかけになっている。
生徒が日本語で意味を確認したがっているなと感じた箇所は、このようにペア活動をさせ、生徒に答えを言わせるようにしている。(ちょっとずるいかな?)

最後に
 私自身、まだ色々試行錯誤の最中です。ただ、このように授業の中で模索する中で、自分も変わっていったと思います。まだまだ、疑問や足りない部分があり、それをどうクリアしていくのかが今後の課題です。特に文法をコミュニカティブな活動とどう結びつけるか等。  
ただ、一ついえるのは、このような授業をつくっていく楽しさを一度体験したら、もう、文法訳読式の授業にはつまらなくて戻れないだろうなということです。
 教育実習生を受け入れた時、彼女は、私の提唱する無理な注文にも見事答えてくれて、素晴らしい授業を実践してくれました。素晴らしいというのは、生徒の未知の力を見事に引き出せたという意味においてです。私でもここまで、生徒の力を引き出せたかな?と疑問に思うくらいで彼女のことがちょっとまぶしく感じたられたくらいでした。ですから、やってやれないことはないということと、我々、中堅の教師もうかうかしていられないなということです。自分自身を縛っている既成概念を一度、うち破ってみることは本当に大切だと思いました。


上智大学の言語学、応用言語学、言語教育関係のホームページ集

1)上智大学のホームページ
http://www.sophia.ac.jp/

2)上智大学大学院応用言語学研究会 HOME PAGE
上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGEです。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。
CALPS HOME PAGE: http://www.ne.jp/asahi/calps/home/index.htm

3)上智大学外国語学部英語学科 HOME PAGE
英語学科のホームページには英語学科で学べる専門分野についての紹介が各分野担当教員のエッセイの形で紹介されています。(上智大学の購買部でも買えます)
http://133.12.37.57/fs/eigo/eigo.htm

4)上智大学外国語学部言語学副専攻監修 「言語研究のすすめ」
語学の色々な分野を紹介したエッセイ集です。(上智大学購買部でも買えます)
http://133.12.37.57/fs/fukusen/gengo/gensusu.htm

5)上智大学CALL言語学習ホームページ
http://www.call.sophia.ac.jp/learn/

6)上智大学大学院応用言語学研究会
大学院応用言語学研究会のホームページです。院生が調べた論文の要約、そして、研究会で実施した研究報告等が読めます。
http://www.ling.sophia.ac.jp/applied/

7)英語学科のBritto先生が集められた英語学習サイトの宝庫!!
http://pweb.sophia.ac.jp/~britto/weblab-e.html

8)上智大学国際言語情報研究所(SOLIFIC)
http://solific.ling.sophia.ac.jp/

9)吉田研作のHome Page
http://pweb.sophia.ac.jp/~yosida-k

10)応用言語学交流会
首都圏の大学院で外国語教育や言語習得を専攻している大学院生同士の交流会です。
http://members.tripod.co.jp/kouryuukai/


お知らせ

ASTEの Newsletterは本50号をもってペーパーベースのものは終了させていただきます。

ASTE 2004年度前期予定

第128回例会
タイトル: Communicabilty as International English
講師:吉田研作(上智大学)
日時:2004年4月24日(土)3pm〜5pm
場所:上智大学 9号館 252教室

第129回ASTE例会
タイトル: 教育実習に向けて
講師: (中学)辰巳友昭(桐朋中・高等学校)
(高校)未定
日時:2004年5月22日(土)3pm〜5pm
場所:上智大学 8 号館 409教室

第130回ASTE例会
タイトル:The Contextual Factors of L2 Learning: How far do they affect beliefs about language learning?
講師: 深見理奈 (Essex 大学大学院)
安間一雄 (玉川大学)
日時:2004年7月3日(土)3pm〜5pm
場所:上智大学 9号館 252教室


ASTE 事務局
102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学外国語学部英語学科
吉田研作研究室
TEL: 03-3238-3719
FAX: 03-3238-3910
E-mail: yosida-k@sophia.ac.jp

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