Association of Sophian Teachers of English
上智大学英語教員研究会
Newsletter
第49号    2003年8月31日


 目 次

日本のCAをもう一度考える
第122回ASTE例会 2003年4月36日 吉田研作(上智大学)

教育実習を終えて
峰松愛子(上智大学外国語学部英語学科)

教育実習体験記
府川泰子(上智大学外国語学部英語学科)

 小学校英語教育の試み
−オーシャンに向けたフィッシュボウル作り−

第124回ASTE例会 2003年6月28日 鈴木利彦(東京女学館小中高等学校)

お知らせ
(ASTE 2003年度後期予定)



日本のCAをもう一度考える

ASTE第122回例会 2003年4月36日 吉田研作(上智大学)

はじめに
 英語が使える日本人を育成するための行動計画が、2003年3月末に文部科学省から発表された。それは、日本という国がこれからの国際社会の中で生きていき、更に、貢献していくために、日本人に何が必要か、という根本的な課題に対する政府の方針に従って、文具科学省が立案したものである。
 そこで、まず、国家などの組織が、その存続等を考えた際に立てる言語政策の「動機」について考えてみよう。Agerは次のようなものを挙げている。

Motivation in Language Planning (Ager, 2001)
1. Identity: empowerment of minorities, L1 identity
2. Ideology: imposition by majority/ power
3. Image:  recognition - self-esteem
4. Insecurity: self-preservationist/ prescriptivism
5. Inequality: humanistic/ idealistic/ conservationist

 まず、identity だが、これは、例えば、カナダのような国(イギリス系カナダ人、フランス系カナダ人)に見られるように、ある国家を形成している人種等のアイデンティティを同等に認めることにより、国家の平和と統一を確保することを目的として立てられる言語政策である。
 Ideologyは、例えば、第2次世界大戦時に日本が朝鮮半島に対して、日本の教育や日本語を強要したした時のように、選民思想のようなイデオロギーをかざして立てられた言語政策をいう。なお、現在のアメリカにおける English Only 運動などもその一つと言えるかもしれない。
 Image というのは、他国から自らを認めてもらうため、また、自国民の自尊心を高めるための言語政策を立てる際に見られるものである。
 Insecurity というのは、例えば、外来語の脅威から、自国語の純粋さを保つために外来語を排除する、というような場合に見られる。
 そして、Inequality は、例えば、アメリカで、人口の30パーセントを占める少数派言語話者が、十分にアメリカという国で社会的に、また経済的に成功するために必要な英語力を身につけることができるように、バイリンガル教育よりも、より徹底したESL教育を行うことが大切だ、という議論の裏にある動機と考えられるだろう。
さて、このようなさまざまな動機の中で、日本には、どの動機が最も強いと言えるだろう。多分、Imageだろう。つまり、現在の日本は、「21世紀日本の構想懇談会」の報告書にもあるように、十分に世界に対して貢献していないし、また、それだけ世界に認められていない、という認識が強い。従って、なんとしてでも、国民全体が「英語が使える」ようにならなければならない、というのである。

日本の英語教育の現状とコミュニカティブ・アプローチ
 そこで、日本の英語教育の現状について少し考えてみよう。次に挙げる表は、Millerの研究に基づいたものである。Millerは、日本人英語教員、そして外国人英語教員に対してアンケート調査を行い、日本の伝統的は英語の教え方と外国人教師が主に主張する、いわゆるコミュニカティブ・アプローチとの違いについて調べた。その結果は次の通りである。

Differences between Japanese and Imported Approaches (Miller,2001)

Traditional Approach Communicative Approach
Goals
入試に必要な知識 コミュニケーション能力
Language Activities
ドリル、訳読、暗記 会話、ペア・グループワーク
Content
過去問題、問題集 日常的話題、個人的話題
Teacher roles
情報提供者 カウンセラー
Student roles
受身 能動的
Correctness
言語の形態 意味内容
Atmosphere
静か、統一的 賑やか、非統一的

つまり、あらゆる項目において日本の伝統的な英語の教え方と、CA(コミュニカティブ・アプローチ)とは丸で正反対の性質を持っていることが分かる。
 しかし、ここで気をつけなければならないのは、CAの基本的な特質は、元々、アメリカのように、英語が日常的に使われている環境(ESL環境)で生み出された考え方であり、その方法論は、日本のようなEFL(外国語教育)環境で、そのまま通用する保障はない、ということである。Millerも、その点について、特に外国人英語教員に対して注意を促している。つまり、アメリカやイギリス、オーストラリアでうまくいったからと言って、日本でもうまく行く、という保障はないのである。日本には、日本独自の環境が存在し、それを考慮したCAを考えなければならないのである。

日本のCAを考える
 ここで、日本独自のCAについて考える際の基本的概念として Richards & Rodgers が提唱する教授法を考える際の3つの概念について見てみよう。

(Richards & Rodgers, 2001)
Approach
Design
Procedure

教授法を考える上で大切なのは、まず、Approachである。これ自体は、「方法論」ではなく、全体的は方法論の土台となる、言語習得・教育に対する基本的考え方、つまり、「理念」を指す。また、Designは、決められた「理念」を実現するためのカリキュラムやシラバスを指す。最後に、Procedureとは、「理念」実現のための具体案であるカリキュラムやシラバスを実現するための、具体的教え方、アクティビティを指すのである。
仮に、(Approach)英語を教える目的(理念)が、生徒が目指す大学や高校に無事入学できることだ、としよう。そうと決まれば、(Design)カリキュラムは、大学や高校の入学試験を突破するために必要な時間数や時間割等によって構成され、シラバスは、入学試験必須単語集、文法の参考書、問題集、過去問等が中心となり、更に、具体的名教え方(Procedure)としては、文法訳読、ドリル、重要構文・語彙テスト、などから構成されるだろう。
しかし、仮に、(Approach)英語教育の理念が、生徒が国際的な場面でコミュニケーションできる能力をつけることだとしたら、(Design)カリキュラムは、英語によるコミュニケーションを場面を用いた活動や言語タスク、言語表現の練習などをどのように組み合わせるか、を考慮したものとなり、(Procedure)は、会話、スピーチ、プレゼンテーション、ディスカッション、そして、ペアワークやグループワークなどによって構成されるだろう。
ところで、日本のようなEFL環境でCAをどう実現するかを考える際に考えなければならないことがある。それは、「量的条件」(Quantitative Condition)が満たされていなければ、「質的条件」(Qualitative Condition)に基づいた、質的に高い(濃い)インプット、アウトプットそしてインタラクションの環境を整えなければならない、ということになる。

Quantitative Condition
   Amount of Exposure to Meaningful English

      
ESL = rich & sufficient
EFL = poor & insufficient

Qualitative Condition
   Changing quantitatively poor environment to richer environment

      
Quality of Environment
Quality of Teaching

 つまり、中学校で週3時間、高校でも週5時間。しかも、学校外では実質的に、自ら率先して接しようとしなければ英語に接する機会は殆ど皆無、という「量的に」限られた環境を、どのようにして「量的に」rich な環境に変えるか、ということを考えなければならない。つまり、環境を質的に変化させたり、また、教え方自体を質的に変えることにより、限られた範囲内でも「量的に」richな学習環境をいかにして作っていくかが課題となるのである。

日本の英語学習環境を質的に変える
 では、日本の英語学習環境をどのように変えれば良いのか。下記の図の中の各項目に合わせて考えてみよう。
 まず、同じ環境でも物理的な環境と人的環境がある。まず、物理的環境から見てみよう。

Concrete Qualitative Changes

Environmental Changes
 Physical Environment:  IT  School  English Camps  Study abroad
 Human Environment:  ALTs  Japanese teachers  cultural exchanges

Pedagogical Innovations
 Teacher Training:  Beliefs  English Proficiency  Pedagogical Skills
 Curriculum, Syllabus, Techniques:  Conducting Classes AS Communication

 物理的環境で現在最も話題になっているのは、IT(情報・コンピュータ)環境だろう。単に昔のLLと同じように使っただけでは、学習者に学びたい、という動機付けを与えることが出来ないので、あまり意味がないかもしれないが、下記のような方法を用いることで、動機付けにもなり、それだけ有意味な英語に接する機会を増やすことができる。

  1. 携帯電話の活用
    1. 教師が自らのホームページに毎日英語のクイズを載せ、生徒はどこにいても解くことができる。
    2. 携帯でチャット機能を使い、教室内で英語で意見等を述べさせる(実際の会話の3倍以上の発話数が出てくるという研究もある)
  2. コンピュータの活用
    1. BBSを使って、ライティングやリーディングの感想などを書き込ませる(他校や外国の生徒とのやり取りも可能となる)(水野、1999 参照)
    2. E-mail を使って学習者が英語を使える機会を増やす
  3. テレビ会議の活用
    1. テレビ会議を使って決められたテーマについてプレゼンテーション、ディスカッション等を行う(谷内、2003参照)
      次に、学校自体の利用を考える。
  1. 空き教室の利用
    1. 少子化の影響で、教室が空いている学校が増えてきているが、その一つをEnglish Roomとして決め、放課後、生徒が自主的に英語の歌を歌ってり、英語のゲームをしたり、ビデオを見たり、また、ALTや英語の教員と英語で自由に話をする機会を作る。
  2. 放送設備の利用
    1. 朝の朝礼を英語で行ったり、お昼休みに、英語のニュース(身近な内容でやさしい英語)を流す。
    2. ESSと放送部が一緒に、週に何回か、英語のディスクジョッキでお昼休みに音楽を流す。
  3. 最近増えてきているEnglish Camp の実施。
    1. 短期集中型: 主に、2泊3日か3泊4日程度で、朝から晩まで全て英語で過ごす。一つの学校や英語教員研究会が主催して、ALTなどを動員して行うケースが多い。
    2. 中長期型: 主に、民間団体などが主催して、1週間から3週間、外国人留学生等の協力を得て英語のキャンプを実施しているものがある(公文教育研究会主催、English Immersion Camp、http://www.immersioncamp.com/ 参照)
    3. 海外のサマーキャンプに参加する生徒の数も増えている
  4. 海外留学 現在でも年間4千人以上の高校生が交換留学などで海外に留学している。文科省では、その数を将来1万人にまで増やしたいとしている。

次に、同じ環境でも、人的環境について考えてみよう。

  1. ALTの利用
    ALTは、それこそ学習者が英語に接する機会が作れる最高の人的リソース。しかし、彼らの活躍の場がどのように確保されているのか、甚だ怪しい。単なるテープレコーダ代わり、というケースから、実質的に授業を任され、かなり自由に色々なコミュニケーション活動を実行している人まで、千差万別である。ALTと学習者が、授業外でも自由に英語でコミュニケーションできる場面を作ることをもっと考える必要がある。
  2. 日本人英語教師がもっと英語を使う
    学習者にとって、日本人英語教師が、彼らの目の前でALTなどと英語でコミュニケーションしているのを見ることは、大きな刺激になる。また、ALTとの人間関係をよくする上でも英語で彼らともっと積極的にコミュニケーションするべきである。ALTとのコミュニケーションが良くなれば、授業自体にもその影響は必ず現れるだろうし、ひいては、生徒の英語学習に影響する。
  3. 文化交流、というのは、日本の中には、地域的に外国人が大勢住んでいる、という地域がある(基地の近くのみならず、中国、韓国、また南米からの労働者等)。そのような環境をうまく利用し、外国の文化に接する機会を増やし、たとえ英語でなくても、外国語に接する機会を増やすことができる。学校で、International Day を実施する、総合的学習の時間に、そのような人たちに来てもらい、さまざまな文化に触れる機会を設ける、など。

 さて、次は、教育面での質的改革であるが、これは、2003年度から文科省の指導の下で始まった、60000人の英語教員全員の資質向上研修などに見られる。教員の研修が、果たして生徒の英語力に影響するのかどうか、という点に関しては、文科省の行動計画の第1研究グループで実施した調査の結果から、正の相関があることが分かってきた。つまり、教員研修で、英語力、またよりコミュニカティブな教授法を学んだ教師に習った生徒の英語力は、研修を受けていない教師に習った生徒の英語力よりも高いことが分かってきているのである。(これについては、文科省から出される第1研究グループの報告書を参照)。
 ここで、一つ考えなければならないことがある。それは、学習者の英語力を伸ばすためには、彼らに、有意味で面白い英語に接する機会を増やさなければならないことは疑う余地はない。しかし、現実には、それでなくても少ない英語の授業を殆ど日本語で教えている教師が大勢いる。これでは、元々少ない英語と接触する時間を、自ら更に少なくしている。これでは生徒の英語力が上がるはずがない。つまり、それだけ、英語の教員自身が出来る限り授業で英語を使う努力をしなければならない。
 そのためには、少なくとも、Classroom English を毎日使うこと、そして、それ以外でも、できる限り英語を使って学習者にさまざまな言語活動をさせることが必要である。Stand up をわざわざ「立って」と言ったり、Repeat after me を「先生の後について繰り返しなさん」と言ったり、Open you books to page 10 と言えば済むところを、「では、10ページを開けて」などと、日本語で言う必然性はどこにもないのである。ただし、時として、やりすぎて、例えば、抽象的な文法の説明までも英語でやろう、という先生がいるが、生徒がそれによってより混乱するようであれば、また、説明している教師の方が説明に四苦八苦するぐらいなら、むしろ、日本語で行った方が良い。大切なのは、学習者にできるだけ多くの「適切インプット」を与え「適切アウトプット」をする機会を与えることにあるのである。

終わりに
 以上のように、CAと言っても、日本独自の環境は条件を良く考慮したものを我々の手で作っていかなければならないのである。理論は理論、理念は理念。しかし、現実は、それぞれに違う。それぞれが自らがおかれた環境の中で、いかにして、質的に richな英語との接触の機会をより多く学習者に与えられるかを考えなければならないのである。

参考文献
Ager, D. (2001) Motivation in Language Planning and Language Policy, Clevedon: Multilingual Matters
Miller, T. (2001). Considering the メfitモ between native and imported approaches to teaching English in Japan. Studies in English Language and Literature 48 vol. 25, no.2 :21-35.
自治体国際化協会(2003) The JET Programme. Retrieved March 21, 2003 from http://www.jetprogramme.org/
McConnell, D. 2000. Importing Diversity: Inside Japan's JET Program. Berkeley: University of California.
水野邦太郎(1999)「BBSを利用したインタラクティブなライティングの授業」ASTE Newletter 41号
 (http://www.bun-eido.co.jp/aste/ASTE41.html#Anchor222)
文部省. 2001. 「英語指導法等の改善推進に関する懇談会報書」
文部科学省.2002. 『「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想』(Retrieved on July 14, 2003 from
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/020/sesaku/020702.htm)
文部科学省.2003. 『「英語が使える日本人」の育成のための行動計画』(Retrieved on July 14, 2003 from http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/03/03033101.htm)
Shohamy, E. (2003) Implications of language education policies for language study in schools and universities. In Modern Language Journal vol. 87, no. 2. pp. 278-286
総理府「21世紀日本の構想」懇談会報告書(2000)
鈴木、吉田、田中、霜崎、(1997)「コミュニケーションとしての英語教育論」アルク
谷内正裕(2003)「公立中学校の選択英語における文化発信型授業実装」ASTE Newsletter 48号
 (http://www.bun-eido.co.jp/aste/aste48.html#a)
Yoshida, K. 2003. Language education policy in Japan--the problem of espoused objectives versus practice. The Modern Language Journal, vol. 87, no. 2, pp. 291-293
吉田研作、藤田保、渡辺良典、森英博、鈴木栄、長田美佐. 2003. 「中学校・高等学校段階で求められる英語力の指標に関する研究」.文部科学省
吉田研作、長沼君主.2003. 「英語CAN-DO のアンケート調査報告書」ベネッセ(http://www.view21.jp/)


月日 授業内容 準備

1
7月
12日
Project U-Smile の説明(毎回のレッスン内容、グループ、相手校について)
グループメンバー発表と担当スタッフ(先生/大学生)発表
グループに分かれて代表を決める
グループで発表内容を話し合って決める
発表に必要なことの確認(撮影日時など)
まとめと連絡
保護者の承諾書(インターネット上に載せる顔写真、名前など)
授業開始直前の打ち合わせ
グループ分け&担当スタッフをまとめた表
グループ内での話し合いがうまくいかなかったときのための代替案(発表内容)
希望グループに入れなかった生徒への対応・解決策
夏休み中についての確認
発表のために必要な機材などの確認
グループ発表内容記入シート
生徒の記入する感想表

2
9月
6日
今日の流れ説明
グループに分かれて活動(前回の授業の感想表配布、ビデオ撮影、ビデオの説明文英訳など)
感想表記入
次回の授業の連絡
ビデオカメラ&テープ
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの

3
9月
9日
今日の流れ説明
webについて
引き続きグループ活動(前回の授業の感想表配布、ビデオ撮影、ビデオの説明文英訳など)
感想表記入
次回の授業の連絡
ビデオカメラ&テープ
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの&コピー

4
9月
20日
今日の流れ説明
生徒へ感想表配布
グループごとに相手校から送られてきたビデオを見る
相手校のビデオに対して感想・質問を作成、(できたらBBSに書き込み)
感想表記入
次回の授業の連絡
作成したビデオはwebにアップされていること
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの&コピー

5
9月
25日
今日の流れ説明
生徒へ感想表配布
韓国へのコメント完成
台湾からのビデオを見る
台湾へ感想・質問を作成
できたら各コメントをBBSへ書き込む
感想表記入
次回の授業の連絡
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの&コピー

6
10月
16日
今日の流れ説明
グループ作業:相手校からBBSに書き込まれたコメントを読んで理解する
相手校からのコメントをもとに、ビデオ会議で何を発表するかを決める
感想表記入
次回の授業の連絡
宿題で相手校からのコメントを読んでくるように指示(BBSのコメントをまとめてプリントアウトし、配布済みであること)
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの&コピー

7
10月
25日
今日の流れ説明
グループ作業:ビデオ会議での発表の準備
感想表記入
次回の連絡
発表に必要なもの
ビデオカメラ&テープ
仕上がらないときのための代替案用意(放課後の作業)
生徒の記入する感想表
前回の生徒の感想表に担当スタッフがコメントを記入したもの&コピー




10月
30日
発表に向けての残りの作業
ビデオ会議について連絡
発表に必要なもの
ビデオカメラ&テープ
ビデオ会議に参加できない生徒の確認
ビデオ会議に関する保護者の承諾書


教育実習を終えて

峰松愛子(上智大学外国語学部英語学科)

 今年度から、中学の教職過程で教育実習の期間が3週間に延び、私は母校である私立頌栄女子学院にて、4月末の1週間と6月始めの2週間、実習生としてお世話になりました。新学期を迎えて間もない4月の時期に実習を行うのは学校も、生徒も、実習生である私自身も初めての事であり、心の準備もままならないうちに、私の教育実習は幕を開けてしまいました。
 4月の1週間は、主に健康診断やHRの見学、普通授業は最後の一日のみ、という日程でした。その1週間が終われば、1ヶ月空けて6月の頭から、高校1年生3クラスのグラマーとリーディング計10時間ずつの授業を受け持つ事になっていたため、その1週間の間に生徒全員の名前や特徴をつかめるよう、必死になっていました。また、この最初の1週間で「教師」という視点から学校行事やクラス運営を見学し、改めて教師の仕事の多様さと多忙さに驚嘆しました。しかし、事務的な仕事をてきぱきとこなしたり、授業の教材研究や授業準備をしたり、またその合間に生徒の中に交じって他愛のないおしゃべりをしたり、という指導教諭の姿を見て、このような授業外での生徒との交流や、影の努力が授業にも活きてくるのだと感じ、教師という仕事の奥深さも垣間見れました。
 私の場合は、始めの1週間と後半の2週間で約1ヶ月の間があったため、授業準備の期間はたっぷりとありました。そのため、5月中も実習期間外であるにも関わらず授業見学や、指導の先生との相談をする事ができ、今思えば非常に幸運であったと思います。この間に、教材研究をしたり、何冊もの英文法書で文法の知識を身につけたり、インターネットや本から教材の背景を調べたり、と授業の面で準備が出来ただけでなく、すでに実習を終えていた先輩に話を聞いたり、学校の事前指導にも出席したりと、心の準備もできたと思います。特に事前指導となっていたASTEの例会では、現場の先生方からのアドバイスや、実習生を受け入れる側の本音を伺う事ができ、実習に対して抱いていた漫然とした不安や疑問点を考える上での突破口となったと思います。
 しかし、いくら準備していてもしきれない、というのが6月の第2期が始まってからの率直な感想でした。私は、授業をするにあたって、実習生が授業を受け持った事によって生徒が困惑したり、私の担当する箇所が疑問だらけにならないよう、少しでも分かりやすく、面白い授業をする、という目標をもって臨みました。そして授業を受け持った第一日目にして、「分かりやすく、面白い授業をする」という事がいかに難しいかを思い知りました。
まず苦労したのが、板書の方法です。文字の大きさや書く位置は初めから心配はしていましたが、書く順番や消す順番、色の使い方等、思いもしなかった点で考えさせられました。しかし、「板書は自分の伝えたいことのエキス」という指導教諭の言葉通り、授業を重ねるにつれて、そのような小さな点をも工夫し、改善するだけで、生徒の理解や反応が全く違うものとなり、プリントなどの教材だけでなく、板書計画をも、教師の工夫次第でその役割が大きく変わる事を実感しました。
 しかし、一番苦心したのが生徒の視点に立って授業をする、という点でした。授業中、生徒から質問が出ても、その質問の意味がうまく掴めず丁寧に答える事ができなかったり、教材研究をしていても、生徒がつまづきそうな箇所が分からなかったり、と授業をする上で中心核となるはずの「生徒を理解する」事が私には不足している、と授業をする度に痛感しました。もちろん、これは経験不足や、たったの数週間の授業期間だった事もあると思いますが、机間巡視や生徒の発言を通して生徒の疑問点や思い違いを読み取るためには、日頃の生徒との交流や何気ない会話が非常に大きな役割を果しているのではないかと思います。
 こうして、2週間の授業を通して私が感じたのが、授業は結局、教師と生徒のコミュニケーションで成り立っている、という事でした。一人の人と会話をする時と同様に、ポイントをつき、順序立てて説明すれば、会話はスムーズに進み、また相手の事を考えて話せば、相手の反応も良く、うまく伝達ができる。これはもちろん、英語以外の教科でも同じ事が言えるのだと思いますが、英語という、一つのコミュニケーション手段となる「言葉」を教える教科だからこそ、なおさら必要な事なのではないかと思います。そしてまた、このように、人間を相手にする、という事こそが教師という仕事の大きなやりがいなのだと感じました。
また授業以外にも、実習校の他の先生方の授業を見学したり、色々なお話を聞けたのも大変有意義な体験となりました。それぞれの先生方が、各々信念を持って授業をされている事に非常に感銘を受け、私自身も、本当の教師として教鞭を取る事になる前に自分なりの理念、つまり授業のバックボーンとなるような確固とした信念を持ちたいと、強く思いました。
 このように、3週間(実質的にはそれ以上でしたが)の教育実習は、教師という仕事の大変さとやり甲斐だけでなく、社会に出る前の自分に何が不足しているのか、そして大学の残り半年余りの間に何ができるのかを考えさせる、残りの大学生活を送る上で非常に貴重な動機づけの期間となりました。これも、私の実習を可能にして下さった方々のお陰と思っております。この場をお借りして、心よりお礼を申し上げます。


教育実習体験記

府川泰子(上智大学外国語学部英語学科)

 5月26日から6月13日までの3週間、私は母校の横浜市立田奈中学校へ教育実習に行きました。教育実習生は私のほかに3人いたのですが、他の方は皆第一学年を担当し、私だけ第三学年を受け持つことになりました。「今時の中学生は手に負えない」「中3を扱うのは難しい」などという言葉を教育実習に行く前に嫌というほど聞かされていたため、期待と同時に覚悟をして臨んだ教育実習でした。しかし実際学校に足を踏み入れると、驚いてしまうほど学校は平和で素直な子どもたちが多く、大変恵まれた環境での教育実習となりました。
 なぜこれほど学校が平和なのだろうという疑問は実習中に解消しました。地域との密着が強いことも一要因ですが、教師と生徒との信頼関係が成り立っているということが学校全体をうまく循環させているのだと肌で感じました。ボランティアと同じような部活動に朝早くから一生懸命打ち込む先生方、朝の職員会議の前までは教室で自分の仕事をする先生、休み時間や放課後も時間が許す限り職員室には戻らず生徒と話をしている先生。誰に言うわけでもないけれど、先生方はそれぞれ自分のやり方で生徒と接する時間をつくっていらっしゃいました。先生が周りにいることは監視ではなく普通のことであり、先生がいれば生徒がよってくるという人間関係がつくられていました。私もそれを見習い、先生方には負けることのないくらい多くの時間を生徒と共に過ごすようにしました。朝、昼、放課後と3年生のフロアのどこかにいる形で自分のクラスの生徒はもちろん教えたことのない生徒たちとも接する事が出来ました。生徒の名前、部活動と趣味などを覚えてあげるだけで生徒たちも喜び、良い関係がつくれたと思います。
 生徒と教師の人間関係、信頼関係の重要さは授業中にもはっきり表れました。まだそれ程生徒と接する時間のないまま行った一回目の授業に比べ、後半は授業に対する生徒の態度が意欲的になっていきました。普段寝ている生徒やおしゃべりをする生徒もしっかり目を見て話を聞き、手を挙げて発言をしてくれるようにもなりました。私は毎回ゲームやアクティビティーを授業に盛り込んでいたのですが、それらも積極的に楽しんで行ってくれるようになりました。しかし3週間という短い時間だったので、私が教えていた5クラス200人の生徒全員平等に同じくらい話しができたわけではありませんでした。やはり話す機会の多い生徒たちのほうが目を輝かせ、積極的に授業に参加するようになるなどの変化が顕著であった気がします。教師と生徒との人間関係が学校での活動全てそして生徒の人生にまで影響を与えているのだということを実感できたのがこの実習期間の一番の収穫でした。
 授業に関しては第3学年5クラスを5回ずつ教えることができました。授業は自由にやらせていただけたため、私は授業をできるだけ英語で進めバリエーションに富んだ授業をするよう心がけました。授業はとにかくやっていて楽しかったです。何時間もかけて用意した授業に対する生徒の反応が大変興味深くおもしろかったのです。また副教材作りには手間をかければかけるほど反応がよくなることも実感できました。5回同じ授業を行っていたわけですが、二つとして同じ授業はありませんでした。毎回より良い授業を目指して私も授業に改良を加えていましたが、クラスの雰囲気により授業が変わることに気付きました。曜日や時間帯でもクラスの雰囲気は異なりますし、クラスごとにも雰囲気が全く違いました。初めは反応の違いに戸惑う事もありましたが慣れてくるとその違いを見ることが楽しみになり、クラスごとの特徴をつかんでそれに合わせた授業をすることができるようになりました。また生徒一人一人を理解し、彼らの個性をうまく引き出していくことも授業を楽しく進めるコツだということに気付きました。同じ授業を何度やっても飽きる事はなく、常に改善すべきところ、気付くことがあり、新たな発見が次々とあることが教えるということの魅力だと感じました。
 一方レベルやモチベーションの異なる40人の生徒を一度に教える事の難しさを実感しました。だからといって教師は「40人全員に教えている」、「全員に参加してもらいたい」という気持ちを忘れてはならず全員に気を配りながら進める必要性があります。しかし興味や意欲の異なる生徒みんなに英語を楽しんでもらえるような授業をすることはチャレンジングであるからこそ、手ごたえを感じたときの喜びは大きかったです。普段授業を聞かないような生徒であっても、みんなできれば嬉しい。誉められれば嬉しい。先生に気にかけてもらうことは嬉しい。先生から見放されていた生徒が最後に私に言ってくれました。「態度が悪いせいで先生全員から見放され、今では授業に参加しなくても何も言われない。授業は分からないからできないだけなのに、誰も教えてくれない。だけど先生は違った。私に丁寧に教えてくれた。ありがとうございました。少しだけど英語が好きになりました。」私は特別彼女に何かをしてあげたわけではありません。学年で唯一奇抜な格好をしていて先生が避けてしまうような生徒でしたが、授業は授業と思い、「できない。やりたくない」と言っていた英語のアクティビティーをやらせただけでした。教師は生徒を見捨ててはいけない。教師は常に生徒を信じて生徒全員を公平に扱い、生徒全員をみる責任があるということを改めて学びました。
 今までよりも1週間長くなった教育実習でしたが、とても短い3週間でした。「このまま学校に居座りたい。」「このままこのクラスの担任になりたい。」このようなわがままなものが3週間を終えての私の正直な気持ちでした。短期間でこれほどまでに生徒たちへの想いが強くなったことに驚きました。教師になれば少なくても一年間生徒と共に過ごすわけで、どんなに悪い生徒であろうとかわいくてしょうがないのだろうなと思いました。実習中に教師という仕事の新たな魅力をたくさん見つけました。事前指導でおっしゃっていた「教える事は絶え間ない意思決定の連続だ」という言葉の意味も身にしみて感じました。自分の経験、知識、創造力を全て生かしそれを使いながら考えて意思決定をしていく。そしてそのフィードバックをすぐに見聞きして感じ取ることができるため、教えることはまた常に学ぶことであり、自分を成長させることができる。だから教師という仕事は楽しいのだと思います。事前指導での現場の先生方からのアドバイスとこの貴重な教育実習での体験を忘れずに生徒と共に成長していけるような教師になれるように頑張りたいです。


小学校英語教育の試み

ASTE 124回例会 2003年6月28日 鈴木利彦 toshisuz@ka2.so-net.ne.jp(東京女学館小中高等学校)

はじめに
 今回の発表では2003(平成14年)1月29日に勤務校(東京女学館小学校)で行った6年生の研究授業のビデオを見ていただくと同時に、昨今の小学校英語教育の現状について論ずると共に、今までの実践から得られた経験を基に今後への提言をさせていただいた。
 現在日本の小学校英語教育は、実施頻度、担当教師、指導・活動内容、到達目標と到達レベル、指導方法等が非常に多種多様であり、混沌としていると言っても差し支えない状況である。それ故この機会は発表者と出席いただいた方々の双方にとって「現状を知る」場であり、「今後を考える」場であった。質疑応答では活発な意見の交換がなされ、このテーマに対する出席者の関心の高さを示していた。
現時点での大きな流れとしては、後述のように主に私立小学校で伝統的に行われている『英語学習』と公立小学校で「総合学習」(国際/異文化理解)の一貫として導入された『英語活動』の2つに分けて捉えることができる(冨田, 2001:55)。この2つの流れの発展と融合を考えることが、今後の小学校英語教育の方向性を模索する上で重要であると思われる。
 『英語学習』と『英語活動』、私の普段の実践に於いてはまさにこの2つを追求して授業を行っており、今回の発表はその検証のために絶好の機会であった。標題の「オーシャンに向けたフィッシュボウル作り」は、吉田研作先生のメFish Bowl ModelモとメOpen Seas Modelモを参考にしていることは言うまでもない。メOpen Seasモに泳ぎだすための準備ができるようなメFish Bowlモを教室内に作れないものか、メFish Bowlモの中で完結してしまうような旧来の英語教育は是正されるべきであるが、「コミュニカティヴな能力の育成」のために、メOpen Seasモに出るために必要なことを教授できるようなメFish Bowlモをつくれないかと私は常に考えて授業実践を行っている。そのような私の目論見がどの程度実現されているかをこのような機会を通じて見ていきたいと思っている。
出席いただいた方々、そしてこのレポートを読まれる方々に、私の実践報告と提唱を「小学校英語教育」を考える上で何かの参考にしていただければ幸いである。(授業の指導案はAppendixを参照)

1. 日本における「小学校英語教育」(小学校における外国語教育)の現状
 現行の学習指導要領は1998年12月に改訂され、2002年4月より全面実施されている。「小学校における外国語教育については教科としての導入を見送る」、「国際理解教育の一環として『総合的な学習の時間』に外国語会話等を行う」という2点が小学校英語教育の方向性を示す骨子となっている。
 松川(2003)がまとめた「文部科学省『小学校英語活動実践の手引き』の要点」によれば、(1)英語活動は国際理解教育の一環として行われること、(2)英語活動のねらいは言語習得より興味・関心・意欲の育成、(3)使われる英語は音声中心であること、(4)授業は学級担任中心で行われることが望ましい、(4)体験的な活動を中心に行う、(5)学習の過程や参加どの記述による評価、が中心となっており、『英語活動』の色合いの濃いものになっている。
 文科省が近年打ち出している『「英語が使える日本人」の育成のための行動計画』では、「総合的な学習の時間などにおいて英会話活動を行っている小学校について、その実施回数の3分の1程度は、外国人教員、英語に堪能な者又は中学校などの英語教員による指導を行う」とされており、小学校英会話活動推進のための手引きの作成、経験豊かなALTや地域人材の活用促進、今後の小学校英語教育のあり方に関する研究等を推進していくことになっており、『英語学習』の方も意識した内容を打ち出してきているのが特徴である。

 『英語活動』と『英語学習』の区別については、冨田(2001:55)が「2つの方向性」として以下のような分類分けを行っている。

『英語活動』: 総合知(国際理解)主義→「総合的な学習の時間」を尊重
→英語の教科化を主張しない(教育の総合化論)
『英語学習』: 技能知(英語運用能力)主義→「総合的な学習の時間」は通過点
→英語の教科化を主張する(早期英語教育論)

 多様な指導方針が混在する今日の小学校英語教育では、この2つをはっきり区別して意識していくことが求められているといっても過言ではない。私自身の経験ではこの2つのどちらかを追求していくよりは、それらを上手く融合させてバランスをとっていった方がより大きな効果をあげることができると思われる。何よりも「児童の発達段階」に応じた指導が大切であり、「国際理解」(体験活動中心)と「外国語教育」(言語活動中心)のバランスをうまく取ってカリキュラムを作っていく必要がある。つまり、「国際理解」のみではその後の中高における英語教育につなげるには不十分であり、「外国語教育」のみでは言語と社会の関わりの意義を伝えきれず、「言語としての英語」のみに焦点を当てる活動が中心になって「英語嫌い」を小学校の段階から作る危険性が考えられる。
 金谷(2002)は、そのような2つの方向性を方向性を踏まえて「小学校英語活動のあり方」を以下のように提言している。

−「慣れ親しむ」に徹する

英語活動の目的は「英語に慣れ親しむこと」なので、これさえできれば十分だ。

−児童英語教育と公立小学校英語

この2つは分けて考えたほうがよい。…公立小学校での英語活動は始まったばかりだが、児童英語教育はもっと長い歴史を持っている。私立小学校ではもう何十年も教育が行われているし、街ではすでに児童英語教育が本格的に始まっている。

−教科にするにはインフラ設備が必要

教員(ALTを含む)の研修、小中高の英語教育の全体システム構築が必要
「しかし、それまでは『慣れ親しむ』でよいのである」

 前述の「早期英語教育論」についても少し言及しておきたい。「早期英語教育論」は「臨界期仮説」(およそ10歳前後をいわゆる「境界にある年齢(=臨界期)」とし、それよりも遅く外国語を習い始めると「母語話者」のような話し手にはなれない)を論拠とし、少しでも早く英語教育を始める重要性を説いている。このような立場をとる英語教育学者の一人である久埜百合氏は、「9歳の壁」という表現を用いて「早期英語教育」の重要性主張している。

「2年生頃まで、あれほど無邪気に身振りをつけてオウム返しにまねをして覚えようとしていたのに、4年生になるとひと息入れてからでないと真似をしなくなり、些細なことにも説明を求めるようになるのです。」
(1999:14)

 できるだけ早く英語教育を始めることの利点、特に音声、イントネーションの習得におけるアドバンテージは異論のないところだと思われる。この点は前述の2つの流れに関わらず考慮されるべき事項である。
 「早期英語教育論」の立場の「小学校英語の教科化」に関する主張は「雨宿り論」と呼ばれている。すなわち、『雨が止んだら(=教科化が認められたら)国際理解教育の軒下から「英語科」に出て行きましょう』という主張である。これについては、どのような形で「英語科」を作っていくかが問題である。あまりに「言語としての英語」の指導に偏ると、文法・語彙指導中心の指導になってしまい、そうすると前述したように「英語嫌い」を小学校で造ってしまう可能性が出てくる。あくまでも「コミュニケーションのための英語」の指導を中心に据え、国際理解教育の利点である英語と社会の関わりの意義が児童に伝えられるような指導を心掛けていくことが重要だと考える。
 2つの方向性のバランスをとって指導をしていくために、松川(2003)は以下の「指導方法と活動の工夫」を主唱しており、英語指導者の今後の指針になるであろう。

(1) コミュニケーションの手段として英語を使う
(2) 言語材料をふやすより、多用な場面と活動の中で使う
(3) 音声でのインプットを十分与える
(4) 国際交流活動と組み合わせる
(5) 発達段階への配慮
(6) ALTの活用
(7) 教材の工夫
(8) カリキュラムの工夫

"Fish Bowl Model"と"Open Seas Model"(吉田,2002)
Fish Bowl Model
  1. Reliance on Others
    Teacher-centered, passive learning
  2. Preservation of Ideal Environment
    Intolerance of errors
    Use of 'other' models (native speakers)
  3. Isolation - Artificially Limited Environment
    Communication with outside not required
    Applicable only to given environment
Open Seas Model
  1. 1. Reliance on Self
    Learner-centered, active learning
  2. Adaptation to existing environment
    Tolerance of mistakes & non-native forms
    Acceptability & Diversity of values as norm
  3. Co-existence - naturally selected habitat
    Importance of cross-cultural understanding
    Communicability in international setting

 上のモデルでどちらが「コミュニカティヴな能力」の育成のためのものかは言うまでもないところである。実際に言語をコミュニケーションの手段として使用する時にはネイティヴを規範とする正確さや受身の態度よりも自分なりの言い方や積極性がより重視される。常に指導者に依存し、ネイティヴの規範に従うことのみを求められ、また教室の中にしか存在しないシチュエーションでしか活動ができないような指導('Fish Bowl Model')をずっと受け続けるとどういう結果になるか、今までの日本の英語教育に関する議論を見れば明らかである。
 私が標題で使った「フィッシュボウル」は、このモデルで使用されている“Fish Bowl”が意味するものとは異なり、「教室」という意味である。別に「プール」という言葉を使っても同じであるが、私は今まで英語教育が行われていた「教室」が「フィッシュボウル」と同義になってしまっている状況を憂い、その「フィッシュボウル」を何とか「オーシャン」("Open Seas")につなげる場に作り変えることはできないかと考え、敢えてこのような表現を使った。英語学習者にとって「オーシャン」(実際にコミュニケーションのために英語を使う場)のために準備をすることができる「フィッシュボウル」(コミュニケーションのための英語を学ぶ場)は非常に重要であり、"Open Seas Model"が実践される「フィッシュボウル」を増やしていくことが日本の英語教育の急務である。

2. 本校における「小学校英語教育」
私の勤務校の東京女学館小学校で現在なされている、また目標とする英語教育については以下の「小学校英語教育現状レポート」を参照されたい。


東京女学館小学校では1998年(平成10年)度より2年間総合学習・国際理解教育の一貫として「ワールドタイム」の時間を設け、2000年(平成12年)度からは更にその言語面を重視して「英語」として教育を実践している。
 「国際化」や「コミュニケーションのための(早期)英語教育」の必要性が強調される昨今、本校では将来国際社会で活躍できる人材の養成を目指し、英語教育においては以下を目標としている。

 初期英語教育においては狭いジャンルの言語材料を徹底的に覚え込ませるよりは、幅広い題材・言語材料に触れることによって自然な言い回しや生活に密着した表現を体得する方が後のコミュニケーションのための英語学習に有益であると考える。
 また、本校は小中高大が一体になった学校であり、一貫性のあるカリキュラムの構築が重要である。中高の英語科とも協議の場を持ち、教科書や教育内容について共通理解を持ちながら小学校英語のカリキュラムを作成している。上記の教育目標にある「中高の英語教育に対する音声による良きイントロダクション(導入)となることを目指す」という点に関しては、『小学校では受動的技能、とりわけ単語や文章の意味を認知する力とListeningを中心とした4技能の基礎育成、中高ではその前提を踏まえて文章の仕組みや展開の仕方を理解し活用できる能力を発展させていく』という役割を担うべく教育内容を整備している。
 更に、小学校段階において完成された英語コミュニケーション能力を培うため、そして本校の英語教育によって得られた実力が普遍性を持つかを検証するために外部団体の英語検定試験を積極的に導入してきた。2002年(平成14年)度からは「児童英検」受験が始まり、2003年(平成15年)度からは国際スタンダードの英語検定試験である「ケンブリッジ英検」が導入(予定)される。
これらの目的に添って、どの部分が良く機能しているか、また改善すべき点はどこか、検証を重ねながらより良きプログラムを構築していく予定である。

3. 「オーシャン」に向けた「フィッシュボウル」作り 〜小学校英語教育への提言〜
 私の目指す「オーシャン」に向けた「フィッシュボウル」とはどのようなものであるか、最後に私からの「小学校英語教育への提言」をまとめてみた。

(1) 児童一人一人が「主役」になれる活動を
(2) "autonomous learning"を目指した"group activity"を
(3) 発達段階に応じた活動:「体験型の英語学習」を
(4) 他教科との連携、"content-based" ELTの追求を
(5) 発達段階に応じた"receptive skill"と"productive skill"のバランスを
(6) 常に音声が先行する指導を心掛ける
(7) "not a subtractive, but an accumulative evaluation"→ motivation for the "communicative attitude"
(8) "local" assessment - "global" assessment"
(9) 「英語が好きになる、楽しい授業」を →将来の英語学習への糧

前述の松川(2003)と重なる部分も多いが、コミュニケーションに対する積極的な姿勢の育成("Open Seas Model"の導入)と評価に関する言及の2点が、私なりのオリジナルな部分ではないかと思う。特に評価に関しては、地域や国レベルで小学校英語教育の成果を計り、カリキュラムに生かしていくためにも大切な点だと思われる。全てのテストに一長一短があるが、"local" assessment(学校や地域における評価)と "globalモ assessment"(世界規模での評価)の連携がうまく取れるような形をとれれば、と考えている。
また、私は持論として「"fluency"が"accuracy"を引っ張っていくのが理想であり、メaccuracyモがメfluencyモを引っ張るのは無理があり、遠回り」だと考えている。これは小学校というよりは中高の英語教育で改善が必要な点であり、小中高一貫した英語教育カリキュラム構築の必要性が言われており、今後を考える意味でもこの持論を検証していきたいと考えている。


・References
金谷憲 (2002). 「小学校英語活動のあり方」 STEP小学校の英語 第3号 日本英語検定協会
後藤典彦、冨田祐一(編著)(2001). 「はじめてみよう!小学校・英語活動」 アプリコット
久埜百合 (1999). 「こんなふうに始めてみては?小学校英語」 三省堂
冨田祐一 (2001a). 「小学校・英語活動の進め方」 後藤典彦、冨田祐一(編著): pp.45-64
冨田祐一 (2001b). 「小学校・英語活動における評価」 後藤典彦、冨田祐一(編著): pp.65-82
松川禮子 (2003). 「小学校における英語活動の現状と展望」 於「英語が使える日本人」育成のためのフォーラム 2003年3月17日:pp.3-4
吉田研作 (2002). 「英語が使える日本人」の育成と展望 於シンポジウム「『英語が使える日本人』を考える」 2002年12月8日


Appendix
Teaching Plan


TOSHIHIKO SUZUKI
Tokyo Jogakkan Primary School

Date: Wednesday, 29th January 2003
Place: Multi-purpose room, Tokyo Jogakkan Primary School
Class: 6B (19 students)
Material: Let's Go 3 (Oxford University Press), English song (メGrandfather's Clockモ)
Aims of the lesson:
To strengthen the students' ability to respond to verbal instructions in English.
To enhance the students' ability to recite new vocabulary and expressions and make them function in a context.
To retrieve vocabulary and expressions taught in the previous lesson for the students' memorization.
To enhance the students' ability to apply vocabulary and structures to a real life interactive situation.
To give the students an opportunity to learn a skill of Origami through EFL

Procedure:
Length of time Activity Activity type Teaching item(s) & Detailed procedure
5mins. Warm-up TPR (Total Physical Response) 'Stand up.' 'Raise your hand.'
'Touch your head/ears/nose/mouth/shoulders.'
'Point to the window/blackboard/door.'
'Jump rope.' 'Climb a tree.' 'Ride a bicycle.'
'Fly a kite.' 'Brush your teeth.'
'Wash your teeth.' 'Comb your hair.'
'Use chopsticks.' 'Eat dinner.' 'Sit down.'
Ss act out what T says. ('Simon says...')
10mins. Singing along in English Recitation using English song "Grandfather's Clock"
Ss sing along with T's guitar accompaniment.
Explanation of some lexical items.
5mins. Review 1 Review of items learned in previous lesson Let's Go 3 - p.10 "Let's Talk" (Conversation)
Listen to CD.
Read after T.
Pair-work.
Presentation (3 pairs/groups)
5mins. Review 2 Review of items learned in previous lesson Let's Go 3 - p.11 Ask and answer.
Presentation by T.
Repeat after T.
T-S conversation.
7mins. Game Interactive activity based on the textbook 'What do you have?'
'I have some...'
Paper supplied by T.
Procedure explained by T.
Collecting picture cards.
Ss find 4 partners and fill in their names and items.
10mins. Origami Skill learning through EFL Let's Go 3 - p.14 "Let's Read"
  1. Introduction of vocabulary (for shape and for folding paper).
  2. Ss make shapes with paper following T's instruction.
  3. Ss make a dog following the instruction of the textbook.
  4. Ss make something following fellow Ss' instruction.
  5. Present what Ss made.
3mins. Consolidation Review of the lesson Review the content of this lesson.

上智大学の言語学、応用言語学、言語教育関係のホームページ集

1)上智大学のホームページ
http://www.sophia.ac.jp/

2)上智大学大学院応用言語学研究会 HOME PAGE
上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGEです。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。
CALPS HOME PAGE: http://www.ne.jp/asahi/calps/home/index.htm

3)上智大学外国語学部英語学科 HOME PAGE
英語学科のホームページには英語学科で学べる専門分野についての紹介が各分野担当教員のエッセイの形で紹介されています。(上智大学の購買部でも買えます)
http://133.12.37.57/fs/eigo/eigo.htm

4)上智大学外国語学部言語学副専攻監修 「言語研究のすすめ」
語学の色々な分野を紹介したエッセイ集です。(上智大学購買部でも買えます)
http://133.12.37.57/fs/fukusen/gengo/gensusu.htm

5)上智大学CALL言語学習ホームページ
http://www.call.sophia.ac.jp/learn/

6)上智大学大学院応用言語学研究会
大学院応用言語学研究会のホームページです。院生が調べた論文の要約、そして、研究会で実施した研究報告等が読めます。
http://www.ling.sophia.ac.jp/applied/

7)英語学科のBritto先生が集められた英語学習サイトの宝庫!!
http://pweb.sophia.ac.jp/~britto/weblab-e.html

8)上智大学国際言語情報研究所(SOLIFIC)
http://solific.ling.sophia.ac.jp/

9)吉田研作のHome Page
http://pweb.sophia.ac.jp/~yosida-k

10)応用言語学交流会
首都圏の大学院で外国語教育や言語習得を専攻している大学院生同士の交流会です。
http://members.tripod.co.jp/kouryuukai/


お知らせ

ASTE 2003年度後期予定

第125回例会
タイトル:生徒のcan-do能力と教師の実践活動に関する調査報告
講師:長沼君主(清泉女子大学)
日時:2003年10月18日(土) 3pm〜5pm
場所:上智大学 9号館 252教室

第126回例会
タイトル:文科省第一研究グループからの中間報告
--中・高教員へのアンケート結果から見える英語教育の現状と課題(問題点)--
講師:鈴木栄(神奈川県立総合高等学校)
講師:長田美佐(埼玉県立川越初雁高等学校)
日時:2003年11月29日(土)3pm〜5pm
場所:上智大学 9号館 252教室

第127回例会
ディスカッション:英語が話せる日本人を育成するには
日時:2003年1月24日(土) 3pm〜5pm
場所:上智大学 9号館 252教室

ASTE 事務局
102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学外国語学部英語学科
吉田研作研究室
TEL: 03-3238-3719
FAX: 03-3238-3910
E-mail: yosida-k@sophia.ac.jp

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